ギリシャ支援:EU9500億円融資 欧州中銀、資金増額
毎日新聞 2015年07月17日 01時04分(最終更新 07月17日 08時51分)
【ロンドン坂井隆之、ベルリン中西啓介】欧州連合(EU)は16日、ユーロ圏19カ国の財務相による電話協議を行い、財政危機に陥っているギリシャの当面の資金を確保するため、70億ユーロ(約9500億円)のつなぎ融資を実施することで大筋合意した。ギリシャ議会が同日、EUとの金融支援交渉の前提となる財政改革法案を可決したことを受けた措置。欧州中央銀行(ECB)も同日、ギリシャの銀行の資金繰りを支える資金供給枠の増額を決定し、ギリシャ支援に向けた作業が本格的に動き出した。
ユーロ圏の財務相は16日、3年間で最大860億ユーロの金融支援に向けた交渉をギリシャ政府との間で開始することも決めた。ただ、正式な支援決定には少なくとも3〜4週間かかり、今月20日にはECBが保有するギリシャ国債35億ユーロの償還(借金返済)期限が控える。このため、EU側はつなぎ融資で必要な資金を手当てする。ギリシャはECBへの国債償還など当面の資金確保にめどがつき、財政破綻やユーロ圏離脱といった最悪の事態はひとまず遠のいた。
つなぎ融資は、EUの緊急融資制度である「欧州金融安定化メカニズム」の資金を活用する方向で、週内の正式決定を目指す。
また、ECBは16日の理事会で、ギリシャの銀行に対する緊急の資金供給枠を9億ユーロ増額すると決めた。供給枠は6月23日に890億ユーロに拡大したのを最後に据え置いてきた。預金流出が続くギリシャの銀行の資金が枯渇するのを防ぐ狙い。
ギリシャの銀行は6月末から営業休止や預金引き出し制限などの資本規制が実施されてきたが、営業再開の可能性が出てきた。ただ、預金引き出し制限などが完全に解除されるめどは立っていない。
また、最大の支援拠出国であるドイツの連邦議会は16日、金融支援交渉開始の是非について審議を始めた。与野党からの交渉開始への大きな異論は出ておらず、17日の本会議で承認される見通しだ。
ギリシャ議会が財政改革法案を可決したのは、13日のユーロ圏首脳会議での合意に基づき、年金削減や増税などを確実に実行する姿勢を示すのが狙い。採決では、「反緊縮」を掲げてきた与党・急進左派連合(149議席)のうち32人が反対、6人が棄権したものの、親EU派の野党が賛成に回った。採決結果は、賛成229、反対64、棄権6、欠席1だった。