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京都「田の字地区」の高級マンションを誰が買うのか

建築&住宅ジャーナリスト 細野透
2014年 12月2日

東京と京都のマンションは「高嶺の花」

 東京と京都のマンションは、全国の大都市の中でも特に「高嶺の花」の感がある。「マンションの価格が、平均年収の何倍になるか」を示す年収倍率を見ると、2013年時点で、1位が東京都の9.79倍、2位が京都府の9.78倍とまさにタッチの差。新旧2つの首都は激しく競り合っている。

 マンション価格は当然のことながら、おおむね地価に比例する。2013年時点のマンション平均価格(専有面積70平米)、および2014年時点の平均地価を比較する。

 【東京都】
  マンションの平均価格──6174万円
  平均地価──79万7904円/平米

 【京都府】
  マンションの平均価格──4209万円
  平均地価──17万1850円/平米

 京都の地価は東京のわずか21%強に過ぎないのに、マンション価格は一気に東京の68%強へと肉迫する。経済の原則からいって、これでは釣り合いが取れない。なぜこんなことになるのか。

 それは、古都の景観を守るため、京都には建築物の高さ制限があるからだ。特に、2007年には京都市が新しい景観政策を導入。都心の幹線沿道地区で建物高さを45メートルから31メートルへ、職住共存地区で31メートルから15メートルへと引き下げた。

 東京の都心には高さ100メートル(約30階)、150メートル(約45階)クラスの超高層マンションが林立している。これに対して、京都の都心では31メートル(約10階)あるいは15メートル(約5階)以内のマンションしか建てられない。その結果、地価に比べて、マンションの価格が大きく跳ね上がってしまうのである。

 話は少しそれるが、筆者は来年1月10日頃、京都の淡交社から『謎深き庭 龍安寺石庭──十五の石をめぐる五十五の推理』というタイトルの本を出版する。数百年もの間、日本の謎といわれてきた「虎の子渡し」の謎をついに解き明かした本なので、興味のある方はどうぞ(同書の特設ウェブサイトはこちら)。

 龍安寺を取材するため京都には何度も出かけ、マンション事情にも割と詳しくなったので、今回は「古都・京都」に焦点を合わせる。

「田の字地区」に関西圏最高水準のマンション

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