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【政治】

安保法案「法的安定性関係ない」 補佐官発言を与野党が批判

礒崎陽輔 首相補佐官

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 憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案をめぐり、礒崎陽輔(いそざきようすけ)首相補佐官が法的安定性を軽視するような発言をしたことに対し、与野党幹部が二十七日、発言を相次いで批判した。

 民主党の枝野幸男幹事長は「行政に関与する資格がない」と記者団に指摘。「行政や法の支配のイロハも分かってない首相補佐官をいつまで使い続けるのか」と安倍晋三首相に解任を求めた。

 維新の党の片山虎之助総務会長は「適当な発言ではない」と述べ、共産党の山下芳生書記局長は「安保法案は法的安定性に欠け、立憲主義を踏みにじる違憲立法だと自ら認める発言だ」と廃案を求めた。社民党の吉田忠智党首も解任を訴えた。

 自民党の谷垣禎一幹事長は記者会見で「そのような発言をしたとすると、極めて配慮の欠けたことだ」と苦言を呈した。安保法案に関する参院特別委員会の理事懇談会では、鴻池祥肇(こうのいけよしただ)委員長(自民)が発言の事実関係や真意を報告するよう自民党理事に求めた。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で「安全保障環境の変化を十分に踏まえる必要があるという認識を示したもので、法的安定性を否定するようなことはなかった」と擁護し、野党の解任要求を拒んだ。「誤解されるような発言は慎まなければならない」とも述べた。

 礒崎氏は二十六日の大分市での講演で、憲法解釈の変更について「法的安定性は関係ない。わが国を守るために(集団的自衛権の行使が)必要かどうかが基準だ」と述べた。二十七日には「政府の憲法解釈は一貫して何も変わるところはない」と記者団に釈明した。

◆礒崎首相補佐官 発言要旨

 礒崎陽輔首相補佐官の二十六日の講演での発言要旨は次の通り。

 憲法には自衛権について何も書いていない。一九五九年の(最高裁の)砂川事件判決は、わが国の存立を全うするための自衛の措置は国家固有の権能であるとした。

 中身を言わないから政府は解釈してきた。昔は憲法九条全体の解釈から、わが国の自衛権は必要最小限度でなければならず、集団的自衛権は必要最小限度を超えるから駄目だと解釈してきた。七二年の政府見解だ。

 ただ、その時はまだ自衛隊は外に行く状況ではなかった。その後四十年たって、北朝鮮は核兵器やミサイルを開発し、中国も軍備を拡張している。

 政府はずっと必要最小限度という基準で自衛権を見てきたが、四十年たって時代が変わったのではないか。集団的自衛権もわが国を守るためのものだったらいいのではないか、と提案している。

 何を考えないといけないか。法的安定性は関係ない。(集団的自衛権行使が)わが国を守るために必要な措置かどうかを気にしないといけない。わが国を守るために必要なことを憲法が駄目だと言うことはあり得ない。「憲法解釈を変えるのはおかしい」と言われるが、時代が変わったのだから政府の解釈は必要に応じて変わる。

 (安全保障関連法案の審議は)九月中旬までには何とか終わらせたいが、相手のある話だから簡単にはいかない。

 

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