【コラム】MERS終息に貢献した陰の功労者たち

【コラム】MERS終息に貢献した陰の功労者たち

 中東呼吸器症候群(MERS)の終息が近づいている。これまで186人の患者がMERSとして診断されたが、今なお陽性反応を示しているのは現時点で1人しかいない。この患者から陽性反応が出なくなれば、国内にMERSウイルスの保菌者は1人もいなくなる。2カ月以上にわたり大韓民国を恐怖と混乱に陥れたMERS騒動もついに先が見えてきた。騒々しく中東からやって来たラクダ(MERSウイルス)たちもついに自分たちのいるべき場所に戻ろうとしているのだ。

 一方でこれまで医療関係者たちが行ってきた献身的な努力も忘れてはならない。MERS患者の実に20%が医療関係者だったことを考えてもそれは分かる。われわれは彼らの犠牲と献身を常に心に刻まねばならない。中でも全国で最も多い30人の患者の治療に当たった国立中央医療院の活躍は光っただろう。

 MERSの克服はこのように隠れた功労者たちの努力があったからこそ可能になった。まず全国各地の救急隊はMERSが猛威を振るっている期間、体温37.5度以上の発熱の症状が出た9659人の緊急移送に当たった。病院間でのMERSに伴う患者の移送のうち840件も救急隊が担当した。非常に気温の高い日が続いた6月と7月、治療のための薬もワクチンもなく、発熱患者の中で誰が実際に感染しているのかも分からない不安な状況の中で、救急隊員たちは2人1組となって防護服を着用し、1万件もの移送に当たったのだ。その中には14番目と76番目の患者も実際に含まれていた。しかし幸いなことにMERSに感染した救急隊員は1人も出なかった。

 これは徹底した準備と対策のおかげだった。救急隊は昨年、アフリカでエボラ出血熱が大流行した際、国内に患者が入国する事態に備え、疾病管理本部の指導を受けながら各消防署ごとに防護服を素早く着用あるいは脱衣する訓練を繰り返していた。さらに全国11の特別市、広域市、道の本部にはMERS関連の移送を担当する専門のチームを立ち上げ、そのメンバーたちは通常患者の移送業務はできる限り行わなかった。全国の消防隊員のために10万着の防護服が準備され、そのうち3万着が実際に着用された。1回移送を行うと2時間かけて救急車の隅々まで消毒した。これらの地味な努力と苦労があったが故に、MERSに感染あるいは感染が疑われる患者の移送を無事に行うことができたのだ。

金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者・医師
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