優しい父親を持つ友人がいつもうらやましかった。金顕承(キム・ヒョンスン)の詩のように「幼子たちのために暖炉に火を起こし、ぶらんこに小さな釘を打つ」父親がほしかった。実際の父は体面を命と同じくらい重んじる、家長の典型だった。家よりも家の外を、「家族と一緒」よりも「他人と一緒」に旅行することを好んだ。明日の食事を心配する妻の前で国や民族の安危を論じる「大人気ない」愛国者だった。
その当時は、父親とは皆そういうものだと思っていた。映画『ライフ・イズ・ビューティフル』(1999年韓国公開)を見るまでは。妻、幼い息子と共にユダヤ人強制収容所に送られたグイドは、家族に襲い掛かった不幸に屈しない。「今からパパと楽しいゲームをしよう。先に1000点取った人が一等賞になって本物の戦車をもらえるんだ」というグイドの言葉に、息子は目を輝かせる。死の危険にさらされながらも、息子の前では決して笑顔を忘れなかった父親の姿に、多くの観客が涙した。
不思議なことに、父親たちは涙を流さない。「男の涙」をタブー視してきた文化のせいだろうか。父親を題材にした詩に「涙」「悲しみ」といった言葉がよく登場するのは、だから皮肉なことだ。「父の目には涙が見えないが/父が飲む酒にはいつも/見えない涙が半分だ」(金顕承)。「焼酎1本しかなくても/この世で一番悲しい詩を書く詩人/たばこ1箱しかなくても/この世で一番悲しい絵を描く画家」(キム・ビョンフン)…。
そのためだろうか。「ゴルフ・ダディ」の目から滝のようにあふれ出た涙が人々の心を揺さぶった。7年、157回の挑戦の末に米女子ゴルフのマラソン・クラシックで優勝を果たしたチェ・ウンジョンの父親のことだ。彼は、毎回目標の前でひざを折る娘のため、警察官を辞めて渡米した。20キロを超えるキャディバッグを担ぎ、娘をひたすら支えた。挫折しそうになる娘を奮い立たせたのは父の一言だった。「人生には上り坂と下り坂がある。真っ直ぐに自分の道を進めばいい日が来る」
鄭浩承(チョン・ホスン)の詩のように、父親というのは「3カ月、家賃を滞納した地下の借間」であり「出勤途中に誰かが歩道に捨てた古い靴」であり「故障して床に落ちた掛け時計」のような存在かもしれない。だが、優れた父親であろうと愚かな父親であろうと、自分の子どもにだけは「日当たりの良い伝貰(チョンセ=高額の保証金を預ければ、その運用益で家賃負担が不要となる賃貸方式)の家」で「新しい靴」を履き「人生の時計が故障しない」素晴らしい日々を送ってほしいと願うものだ。そんな父親たちが心から大声で泣ける世の中になればいい。