今年の『27時間テレビ』で記憶に残っているシーンを箇条書き。
読んで字のごとし。
ちなみに、本文で言及していない「ホンキーマン本気のダイエット」「FNSちびっ子ホンキーダンス選手権」「めざましテレビ」「とんねるずの女気じゃんけん」「中居&矢部 本気のスポーツチャレンジ」「サザエさん」は、うっかり寝ていて見逃した。
・「ドキッ! めちゃイケvsSMAP 本気だらけの水泳大会」における三中元克と木村拓哉の手押し相撲。木村が上島竜兵と出川哲朗のキスのくだりを三中に仕掛けるも、物怖じしてかまったく動こうとしなかったので、仕方なしに山上から突き落としてしまうくだりがなんとも切なかった。
・「明石家さんまのダイヤモンドエイジ本気の体力測定」における具志堅用高とモト冬樹。明石家さんまと同世代の芸能人たちが体力測定に挑む企画だが、人数の多さと企画の緩さでまったく盛り上がらない。そんな状況で見出されたのが具志堅とモト。具志堅はいきなり(恐らくはスタッフかさんまの指示)走り高跳びを始めるという自由なポジションを獲得するも肘を負傷、悶える姿すらイジられるという醜態を晒し、笑いを取っていた。モトはバランスボールに苦戦。何度も何度もボールに乗ろうとしたのに、まともに安定せず、大胆にひっくり返る様がスリルに満ちていた。余談だが、顔ぶれ的には、明石家さんまよりも小堺一幾の方が適役だったように思う。
・「さんま・中居の今夜も眠れない」で、さんまが新幹線の中で出会ったという一般女性を放送中に募集したところ、当人から連絡が入るが、その女性がなんと15歳だったという事実が発覚するくだり。電話をかけてみたところ、受話器から「キャーッ!」という十代特有のテンションが伝わってきて、一気に恋心が冷めてしまったさんまの表情がなんとも面白かった。
・たけし三連発。最後は火薬田ドンがドン。
・「お台場のカイダン 本当にあったフジ縛霊の怖い話」での大悟。女性問題を巡って対立していた鬼ヶ島とさらば青春の光の二組による言い争いが勃発するも、何故か当の東口よりも無関係な森田が前にしゃしゃり出てしまい、話が前に進もうとしない状況に嫌気がさしたのか、和田と東口が相撲で決着をつけようとする傍らで森田と相撲をすると言い出し、番組CM中に実行する。森田に勝利した大悟は満足げな表情でタバコに火をつけ、スタジオからゆっくりとはけていった(ここまでがボケ)。また、『爆笑レッドシアター』レギュラーのフルーツポンチ、『はねるのトびら』レギュラーの塚地武雅らが、番組スタッフに対する恨み節を展開していたのに対し、『ピカルの定理』レギュラーだった千鳥はスタッフのアホなところをちゃんと“すべらない話”として昇華しており、芸人の意地を見せていたように思えた。
・「早朝のフジ本気ロックフェスティバル」における渡辺直美『罪と罰』。セクシー。
・「TED×27hTV」における劇団ひとり。人気のお笑い芸人たちが面白いテレビを作るための提言・苦言をプレゼンするといっておきながら、誰も彼もネタに走り、本当に面白そうな話をしてくれそうだった光浦靖子パートは緊急ニュースのために一部割愛され(「女芸人ブス分布図」は何処かで公表してもらいたい)、なんとなくスッキリしない状況になっていた最中、劇団は全力で「テレビでおっぱいが見たいです!」と絶叫するコントを展開していた。ネタに走っているという意味では他の芸人たちと同様ではあったが、「テレビでおっぱいが見られなくなった」という話はテレビの本質的な問題を微かに触れており、ただネタとして断絶することの出来ない内容だったのが良かった。とはいえ、この後の出川哲朗のけっこう面白い話を落とし穴で中断するリアクション芸で落としたり、加藤浩次に相方の話をさせるような宣伝をしておきながら喋らせないというスカシをしたり、全ての総括を子役に語らせたり、全体的に不誠実な(「おちゃらけた」ですらない)内容になっていて、非常に残念だった。それでは、いつものバラエティと同じではないか。
・「2015 FNS「ドリームカバー」歌謡祭」における森山直太朗。有名な歌手たちが少し変わった楽曲を全力でカバーするという企画で、May J.が月亭可朝の『嘆きのボイン』を歌ったり、槇原敬之がドン・キホーテのテーマを歌ったり、非常に貴重な時間を楽しませてくれた。その中で、森山直太朗はこの歌謡祭で「優勝を目指す」という、往年の三村マサカズ(from「笑わず嫌い王決定戦」)を思わせる持論を展開し、フラメンコ風のアレンジで『銭形平次』のテーマソングを熱唱。バラエティに対する強い思いを感じさせたが、続く秋川雅史が『THE TAKECHAN・マン』を全力でカバーし、見事に完敗(?)するまでの流れが非常に美しかった。あと、華原朋美による水戸黄門のテーマ『ああ人生に涙あり』も、彼女の波乱万丈な芸能人生そのものを反映しているようで、ちょっとグッときた。
・「テレビのピンチをチャンスに変えるライブ」。司会進行役でもある岡村隆史が、EXILE、モーニング娘。、氣志團、劇団四季、AKB48、SMAPといった豪華メンバーとともにダンスを披露する。どのアーティストとの共演も良かったが、やはりお笑い好きとしては、移動中のテツandトモ・江頭2:50とのダンスにはたまらないものを感じた。あの軽めの扱いだからこそ、この二組が活かされる。
・「めちゃイケサイドストーリー」という、加藤浩次が歌い始めた『15の夜』にめちゃイケメンバーがだんだんと感染していく謎の時間。
・「グランドフィナーレ」でのたんぽぽ。88キロマラソンをゴールした大久保佳代子を迎えての大団円中、番組放送中にバンジージャンプの世界記録に挑戦するもドクターストップによって中断せざるを得なかったたんぽぽの白鳥久美子が「最後にもう一回だけ飛ぶ!」と言い出し、エンディングのジャマをするという一幕があった。ドクターストップが入っている芸人にオチを任せるのは、普通に酷だったように思えた。
【総評】
今年の27時間テレビでは、事前にテレビがピンチであることをしきりにアピールしていた。確かに、インターネットを通じて、誰もが映像や音楽を発信できるようになった現代において、以前よりも自主規制の網に激しく縛られているテレビという娯楽は魅力的ではなくなってしまったのかもしれない。そんな時代に立ち上がったのが、岡村隆史扮する“ホンキーマン”だった。ホンキーマンは宣言した。27時間テレビに本気で挑み、テレビは楽しいということを証明すると。それを聞いた私は、素直に思った。「本気で挑み」、「テレビは楽しい」を証明するということは、通常よりも挑戦的な企画で27時間を盛り上げていくのだろう、と。
結果として、今年の27時間テレビはそれなりに面白かった。めちゃイケメンバーとSMAPの対決は純粋に楽しかったし、ダイヤモンドエイジの体力測定はグダグダだったけど見せ場はちゃんと作っていたし、さらばと鬼ヶ島の攻防は「この画が見たかった!」と思ったし、早朝ロックフェスもドリームカバーもテレビのピンチをチャンスに変えるライブも、サイコーに面白かったし格好良かった。素直に笑えるところがいっぱいあった。でも、全てが終わった後に、何かしこりのようなものが自分の中に残っていることに気が付いた。黒々とした感情の奥底に渦巻いていたもの、それは恐らく不信感であった。
果たして、この27時間テレビで、フジテレビが本気で挑んだことはあったのだろうか。
出演者たちが本気で挑んでいたことは百も承知だ。岡村隆史は体力ギリギリ限界のラインまでダンスパフォーマンスを繰り広げ、矢部浩之はサッカー企画に挑戦し、中居正広はホームラン企画に挑戦した。大久保佳代子は88キロマラソンを走り抜いた。明石家さんまは新幹線で15歳の少女に惚れたなどというみっともない話を披露し、ビートたけしは命懸けで下らないパフォーマンスに身を捧げ、笑福亭鶴瓶は入浴中に後輩たちから足を引っ張り上げられ股間を丸出しにした。平成ノブシコブシの吉村崇は意地で購入した愛車に意地でぶつかった(相方の徳井“サイコ野郎”健太にフロントガラスを割られてしまったのは想定外の出来事だろうが)。全てに意味はないが、全て本気の賜物だ。
だが、フジテレビはどうだ。これまでに芸人たちが経験したスタッフからの悪質な言動への苦言を呈する「フジ縛霊」では小籔“思想強い”千豊にまとめさせていた、フジテレビはどうだ。芸人たちが本気のプレゼンをすると宣言していた「TED×27hTV」で、結局はベタなギャグや冗談で場を盛り上げて、それを見ていた子役に「テレビが終わったとは思えない」というようなことを言わせた、フジテレビはどうだ。そういったひねくれたジョークこそがフジテレビの良さだといえるのかもしれないが、しかし、それでは「本気で挑み」という宣言は、一体なんだったのだ。彼らは何に挑むこともなく、いつものフジテレビの仕事をこなしただけではないか。
なによりも私に不信感を抱かせたのは、事前の番組で加藤浩次が相方である山本圭壱のことを話すように匂わせたことである。正直、『めちゃイケ』関連で山本の存在を匂わせたのは、これが初めてではない。その話が出るたびに、私は「おっ」と画面を食い入るように見つめ、しかし何も起きないことに気が付き、「ああ……」と静かに引き下がったものだ。なので、最終的に山本が出演しなかった(どころか話もされなかった)こと、そのものには驚きを感じない。「まあ、そうだろうな」と。しかし、考えてみると、27時間テレビの放送前に「加藤が山本の話をする」と匂わせる予告を打ったということは、作り手側はそういう需要があると分かっているとも受け取れる。そうでなければ、予告をする意味がない。つまり、「加藤が山本の話をする」ことに期待している人たちを引き寄せておきながら、それを話させないというスカシで処理したのである。これは正直、その層のことをバカにしているとしか思えない。インターネット上でならば「釣られたクマー!」とアスキーアートでも貼っておけばいいだろうが、それをバラエティが売りのテレビ局が大々的に盛り上げている特別番組でやるというのは……どうか、山本の件をイジるたびに、一部の人間の逆鱗を撫でているということだけは、忘れないでもらいたい。せめて、せめて面白く。
全体的に見れば、「本気になれなきゃテレビじゃない」というテーマで下手に視聴者のハードルを上げなければ、それなりに楽しめた内容だったことは間違いない。とはいえ、部分的に見ると、フジテレビの軽率さが浮き彫りになっているところもあって、そこに嫌悪感を覚えたりもした。なんていうか、「オレ面白いことやりまーす!」って宣言しておいて、中途半端にスベるイキった若者みたいな、あのダサい感じに似ている。とはいえ、そういう軽率な態度こそ、フジテレビの本質なのだろう。そして、こんなことを言っておきながらも、私はこれからもフジテレビを見るだろうから、そういったところがまんまと見透かされているような気がしないでもない。『オモクリ監督』とか、好きだしな。
でも、まあ、うん、頼むよ。ほんと。
ちなみに、本文で言及していない「ホンキーマン本気のダイエット」「FNSちびっ子ホンキーダンス選手権」「めざましテレビ」「とんねるずの女気じゃんけん」「中居&矢部 本気のスポーツチャレンジ」「サザエさん」は、うっかり寝ていて見逃した。
・「ドキッ! めちゃイケvsSMAP 本気だらけの水泳大会」における三中元克と木村拓哉の手押し相撲。木村が上島竜兵と出川哲朗のキスのくだりを三中に仕掛けるも、物怖じしてかまったく動こうとしなかったので、仕方なしに山上から突き落としてしまうくだりがなんとも切なかった。
・「明石家さんまのダイヤモンドエイジ本気の体力測定」における具志堅用高とモト冬樹。明石家さんまと同世代の芸能人たちが体力測定に挑む企画だが、人数の多さと企画の緩さでまったく盛り上がらない。そんな状況で見出されたのが具志堅とモト。具志堅はいきなり(恐らくはスタッフかさんまの指示)走り高跳びを始めるという自由なポジションを獲得するも肘を負傷、悶える姿すらイジられるという醜態を晒し、笑いを取っていた。モトはバランスボールに苦戦。何度も何度もボールに乗ろうとしたのに、まともに安定せず、大胆にひっくり返る様がスリルに満ちていた。余談だが、顔ぶれ的には、明石家さんまよりも小堺一幾の方が適役だったように思う。
・「さんま・中居の今夜も眠れない」で、さんまが新幹線の中で出会ったという一般女性を放送中に募集したところ、当人から連絡が入るが、その女性がなんと15歳だったという事実が発覚するくだり。電話をかけてみたところ、受話器から「キャーッ!」という十代特有のテンションが伝わってきて、一気に恋心が冷めてしまったさんまの表情がなんとも面白かった。
・たけし三連発。最後は火薬田ドンがドン。
・「お台場のカイダン 本当にあったフジ縛霊の怖い話」での大悟。女性問題を巡って対立していた鬼ヶ島とさらば青春の光の二組による言い争いが勃発するも、何故か当の東口よりも無関係な森田が前にしゃしゃり出てしまい、話が前に進もうとしない状況に嫌気がさしたのか、和田と東口が相撲で決着をつけようとする傍らで森田と相撲をすると言い出し、番組CM中に実行する。森田に勝利した大悟は満足げな表情でタバコに火をつけ、スタジオからゆっくりとはけていった(ここまでがボケ)。また、『爆笑レッドシアター』レギュラーのフルーツポンチ、『はねるのトびら』レギュラーの塚地武雅らが、番組スタッフに対する恨み節を展開していたのに対し、『ピカルの定理』レギュラーだった千鳥はスタッフのアホなところをちゃんと“すべらない話”として昇華しており、芸人の意地を見せていたように思えた。
・「早朝のフジ本気ロックフェスティバル」における渡辺直美『罪と罰』。セクシー。
・「TED×27hTV」における劇団ひとり。人気のお笑い芸人たちが面白いテレビを作るための提言・苦言をプレゼンするといっておきながら、誰も彼もネタに走り、本当に面白そうな話をしてくれそうだった光浦靖子パートは緊急ニュースのために一部割愛され(「女芸人ブス分布図」は何処かで公表してもらいたい)、なんとなくスッキリしない状況になっていた最中、劇団は全力で「テレビでおっぱいが見たいです!」と絶叫するコントを展開していた。ネタに走っているという意味では他の芸人たちと同様ではあったが、「テレビでおっぱいが見られなくなった」という話はテレビの本質的な問題を微かに触れており、ただネタとして断絶することの出来ない内容だったのが良かった。とはいえ、この後の出川哲朗のけっこう面白い話を落とし穴で中断するリアクション芸で落としたり、加藤浩次に相方の話をさせるような宣伝をしておきながら喋らせないというスカシをしたり、全ての総括を子役に語らせたり、全体的に不誠実な(「おちゃらけた」ですらない)内容になっていて、非常に残念だった。それでは、いつものバラエティと同じではないか。
・「2015 FNS「ドリームカバー」歌謡祭」における森山直太朗。有名な歌手たちが少し変わった楽曲を全力でカバーするという企画で、May J.が月亭可朝の『嘆きのボイン』を歌ったり、槇原敬之がドン・キホーテのテーマを歌ったり、非常に貴重な時間を楽しませてくれた。その中で、森山直太朗はこの歌謡祭で「優勝を目指す」という、往年の三村マサカズ(from「笑わず嫌い王決定戦」)を思わせる持論を展開し、フラメンコ風のアレンジで『銭形平次』のテーマソングを熱唱。バラエティに対する強い思いを感じさせたが、続く秋川雅史が『THE TAKECHAN・マン』を全力でカバーし、見事に完敗(?)するまでの流れが非常に美しかった。あと、華原朋美による水戸黄門のテーマ『ああ人生に涙あり』も、彼女の波乱万丈な芸能人生そのものを反映しているようで、ちょっとグッときた。
・「テレビのピンチをチャンスに変えるライブ」。司会進行役でもある岡村隆史が、EXILE、モーニング娘。、氣志團、劇団四季、AKB48、SMAPといった豪華メンバーとともにダンスを披露する。どのアーティストとの共演も良かったが、やはりお笑い好きとしては、移動中のテツandトモ・江頭2:50とのダンスにはたまらないものを感じた。あの軽めの扱いだからこそ、この二組が活かされる。
・「めちゃイケサイドストーリー」という、加藤浩次が歌い始めた『15の夜』にめちゃイケメンバーがだんだんと感染していく謎の時間。
・「グランドフィナーレ」でのたんぽぽ。88キロマラソンをゴールした大久保佳代子を迎えての大団円中、番組放送中にバンジージャンプの世界記録に挑戦するもドクターストップによって中断せざるを得なかったたんぽぽの白鳥久美子が「最後にもう一回だけ飛ぶ!」と言い出し、エンディングのジャマをするという一幕があった。ドクターストップが入っている芸人にオチを任せるのは、普通に酷だったように思えた。
【総評】
今年の27時間テレビでは、事前にテレビがピンチであることをしきりにアピールしていた。確かに、インターネットを通じて、誰もが映像や音楽を発信できるようになった現代において、以前よりも自主規制の網に激しく縛られているテレビという娯楽は魅力的ではなくなってしまったのかもしれない。そんな時代に立ち上がったのが、岡村隆史扮する“ホンキーマン”だった。ホンキーマンは宣言した。27時間テレビに本気で挑み、テレビは楽しいということを証明すると。それを聞いた私は、素直に思った。「本気で挑み」、「テレビは楽しい」を証明するということは、通常よりも挑戦的な企画で27時間を盛り上げていくのだろう、と。
結果として、今年の27時間テレビはそれなりに面白かった。めちゃイケメンバーとSMAPの対決は純粋に楽しかったし、ダイヤモンドエイジの体力測定はグダグダだったけど見せ場はちゃんと作っていたし、さらばと鬼ヶ島の攻防は「この画が見たかった!」と思ったし、早朝ロックフェスもドリームカバーもテレビのピンチをチャンスに変えるライブも、サイコーに面白かったし格好良かった。素直に笑えるところがいっぱいあった。でも、全てが終わった後に、何かしこりのようなものが自分の中に残っていることに気が付いた。黒々とした感情の奥底に渦巻いていたもの、それは恐らく不信感であった。
果たして、この27時間テレビで、フジテレビが本気で挑んだことはあったのだろうか。
出演者たちが本気で挑んでいたことは百も承知だ。岡村隆史は体力ギリギリ限界のラインまでダンスパフォーマンスを繰り広げ、矢部浩之はサッカー企画に挑戦し、中居正広はホームラン企画に挑戦した。大久保佳代子は88キロマラソンを走り抜いた。明石家さんまは新幹線で15歳の少女に惚れたなどというみっともない話を披露し、ビートたけしは命懸けで下らないパフォーマンスに身を捧げ、笑福亭鶴瓶は入浴中に後輩たちから足を引っ張り上げられ股間を丸出しにした。平成ノブシコブシの吉村崇は意地で購入した愛車に意地でぶつかった(相方の徳井“サイコ野郎”健太にフロントガラスを割られてしまったのは想定外の出来事だろうが)。全てに意味はないが、全て本気の賜物だ。
だが、フジテレビはどうだ。これまでに芸人たちが経験したスタッフからの悪質な言動への苦言を呈する「フジ縛霊」では小籔“思想強い”千豊にまとめさせていた、フジテレビはどうだ。芸人たちが本気のプレゼンをすると宣言していた「TED×27hTV」で、結局はベタなギャグや冗談で場を盛り上げて、それを見ていた子役に「テレビが終わったとは思えない」というようなことを言わせた、フジテレビはどうだ。そういったひねくれたジョークこそがフジテレビの良さだといえるのかもしれないが、しかし、それでは「本気で挑み」という宣言は、一体なんだったのだ。彼らは何に挑むこともなく、いつものフジテレビの仕事をこなしただけではないか。
なによりも私に不信感を抱かせたのは、事前の番組で加藤浩次が相方である山本圭壱のことを話すように匂わせたことである。正直、『めちゃイケ』関連で山本の存在を匂わせたのは、これが初めてではない。その話が出るたびに、私は「おっ」と画面を食い入るように見つめ、しかし何も起きないことに気が付き、「ああ……」と静かに引き下がったものだ。なので、最終的に山本が出演しなかった(どころか話もされなかった)こと、そのものには驚きを感じない。「まあ、そうだろうな」と。しかし、考えてみると、27時間テレビの放送前に「加藤が山本の話をする」と匂わせる予告を打ったということは、作り手側はそういう需要があると分かっているとも受け取れる。そうでなければ、予告をする意味がない。つまり、「加藤が山本の話をする」ことに期待している人たちを引き寄せておきながら、それを話させないというスカシで処理したのである。これは正直、その層のことをバカにしているとしか思えない。インターネット上でならば「釣られたクマー!」とアスキーアートでも貼っておけばいいだろうが、それをバラエティが売りのテレビ局が大々的に盛り上げている特別番組でやるというのは……どうか、山本の件をイジるたびに、一部の人間の逆鱗を撫でているということだけは、忘れないでもらいたい。せめて、せめて面白く。
全体的に見れば、「本気になれなきゃテレビじゃない」というテーマで下手に視聴者のハードルを上げなければ、それなりに楽しめた内容だったことは間違いない。とはいえ、部分的に見ると、フジテレビの軽率さが浮き彫りになっているところもあって、そこに嫌悪感を覚えたりもした。なんていうか、「オレ面白いことやりまーす!」って宣言しておいて、中途半端にスベるイキった若者みたいな、あのダサい感じに似ている。とはいえ、そういう軽率な態度こそ、フジテレビの本質なのだろう。そして、こんなことを言っておきながらも、私はこれからもフジテレビを見るだろうから、そういったところがまんまと見透かされているような気がしないでもない。『オモクリ監督』とか、好きだしな。
でも、まあ、うん、頼むよ。ほんと。
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