美の巨人たち 東山魁夷『道』一本道に隠された画家の執念と希望 2015.07.25


フランスパリ。
芸術の都を楽しみたいなら美術館めぐりだけじゃもったいない。
演劇鑑賞なんていかがですか?こちらはかの有名な世界三大オペラ座の1つ。
フランス伝統劇を見るなら老舗のオペラからコミック現代劇まで楽しめるのがパリには大小多くの劇場があり毎日どこかで幕が上がっています。
そのなかに今日の作品と関係の深い劇場が。
1836年オープンのルネサンス劇場。
伝説の女優で有名になりました。
この劇場で大歓声を浴びた人。
さあ始まるわよ。
楽しんでちょうだいね。
19世紀末から20世紀パリの演劇界を代表する舞台女優です。
そしてサラの舞台のために作られたのが…。
2人のアーティストが作り上げフランスでは長く行方が知れず演劇関係者たちがこぞって探していたというちょっと謎めいた作品。
作ったのはアール・ヌーボーの旗手と呼ばれた2人の芸術家。
奇跡のコラボレーション作品です。
専門家たちが探していた作品はなんと日本にあります。
箱根湯本の駅からバスで30分ほど。
仙石原にある箱根ラリック美術館。
木々の間から見えてきたのが展示棟です。
19世紀末から20世紀のフランスでジュエリーガラス工芸の作家として活躍したルネ・ラリック。
所蔵作品の数は1,500点を超え本場フランスも驚くほどのコレクション。
そのなかにフランスの研究者たちが行方を探していた作品が。
6年前アメリカのオークションに出品されその後美術館に。
実は今回が本邦初公開なんです。
今日の作品…。
2人の合作です。
ミュシャが描いたポスターをもとにラリックが作り上げた冠。
材料はブリキとイミテーションの宝石。
しかしその出来栄えは高価な宝石を思わせるほどの仕上がりです。
冠の中央にはエメラルドを思わせる緑の石。
額を飾るのは淡い水色やピンクオレンジの石が左右対称に並び華やかさを際立たせています。
最大のポイントは大きなユリの花。
花びら一枚一枚が美しい曲線を描き本物のユリのように咲き乱れています。
小さな雄しべには花粉も。
花びらの奥に隠れた葉っぱまでリアルに再現し作家のこだわりが見えます。
実はこの作品サラ・ベルナールが舞台『遠国の姫君』のために作らせたものです。
フランスを代表する舞台女優にふさわしい華やかさに満ちた冠。
サラがいなければこの作品は誕生しなかった。
そして2人の天才も世に知られることはなかったかもしれません。
まさに運命の作品なのです。
しかし不思議なことにミュシャとラリック2人が直接交流した記録が一切残っていないのです。
この作品誕生の物語を知るのはサラ・ベルナールただ一人。
今日の案内人はこの人しかいませんよね。
大女優サラ・ベルナールお願いします。
あ〜今日も最高の舞台だったわ。
あら!また来たの?そんなに私の話が聞きたいのかしら。
まあいいわ。
お忙しいところ恐縮ですがどうしてもあの2人との関係が気になっているんです。
あの2人というと?ミュシャとラリックですよ。
最近大活躍の2人のアーティスト。
彼らが認められて私も嬉しいわ。
だって私の大事な人たちですもの。
あの2人はあなたのおかげで大ブレークですね。
あなた何にもわかってないのね。
世の中の人々が何を欲しているのかそんなこともわからないなんて。
いい?時代が私を欲しているようにミュシャとラリックも望まれて世に出てあの冠で3人の芸術が花開いた。
一生懸命生きていると奇跡って起きるものよ。
奇跡がね。
人気女優サラ・ベルナールの1896年の舞台『遠国の姫君』。
この舞台のために制作された冠が「ユリ」です。
ミュシャが描いたポスターをもとにラリックが制作。
たった一度のコラボレーション作品。
2人を結びつけたのはサラ・ベルナール。
ミュシャとラリック。
サラ・ベルナールはなぜ2人を選んだのか。
ジャンルを超えた天才たちの夢と野心とは…。
ラリックとミュシャが活躍した19世紀末から20世紀。
ヨーロッパを中心に花開いた新しい芸術が花や植物の造形美を取り入れ装飾性豊かな芸術を作り出しました。
今も街のあちこちにアール・ヌーボ−を感じることができるんですよ。
こちらメトロの入り口。
鉄が植物のようにしなやかな曲線を描いています。
パリの老舗高級レストラン壁の装飾照明などアール・ヌーボ−で彩られた店内はすべて当時のまま。
パリには今もアール・ヌーボ−が生きているんです。
今日の作品『舞台用冠ユリ』はアール・ヌーボ−の旗手ラリックとミュシャのコラボレーションという奇跡的な作品です。
この作品の誕生は2人とサラ・ベルナールとの運命的な出会いがあったから。
ミュシャとの出会いは?『ジスモンダ』の舞台覚えてる?ええ観ましたよ。
ポスターはミュシャでしたね。
そうミュシャよ。
そして私の望んだとおりの効果をもたらしたわ。
今度はどんな舞台なの?サラはどんな美しい姿を見せてくれるの?みんなワクワクしたの。
『ジスモンダ』に花を添えてくれたのはミュシャ。
運命の出会いだったのよ。
パリ郊外にある瀟洒な建物。
サラと同時代に活躍した俳優のお屋敷です。
屋敷の主や当時の演劇関係者が寄贈した貴重な資料が保管され現在は博物館の開館準備のために所蔵品の調査中。
特別に保管庫を見せていただくことに。
サラ・ベルナールの資料もありました。
ゴージャスな衣装に身を包んだサラの写真。
サラの舞台へかける情熱は衣装や小道具の徹底的なこだわりに表れています。
こちらは描いたのはミュシャです。
サラは絵のなかで身につけている剣をそのまま再現し舞台で使用していました。
ミュシャの名が知られるようになったのは30代半ばを過ぎてから。
サラに会うまでは不遇の時代を過ごしていたのです。
アルフォンス・ミュシャは22歳でパリへ出て美術学校へ通いますが画家では食べていけず印刷工場で働く日々。
1894年のクリスマス休暇も働いていました。
そこに急な仕事の依頼が入るのです。
翌年の舞台のポスターを描く画家を探していたサラ・ベルナールからの依頼。
偶然工場にいたミュシャに白羽の矢が立ったのです。
その作品が『ジスモンダ』。
画家の名をフランス中に広めることになった記念碑的な作品です。
あの日工場にいなければ…。
ミュシャの運命を変えた出来事でした。
サラはその出来ばえに感動したといいます。
ミュシャは専属の画家として次々とポスターを描くことになるのです。
一方ラリックはフランス北東部シャンパーニュ地方の小さな村で1860年ミュシャと同じ年に生まれています。
自然豊かな村で育った幼少時代。
植物や昆虫を観察することが日課でした。
16歳でパリに出てジュエリー作家のもとで修業。
当時ジュエリーは職人の仕事。
デザインのオリジナリティーより宝石の価値が重視されていた時代でした。
22歳で独立するもののカルティエなど有名ブランドの下請けに甘んじる日々。
しかしそんななかでも独自のジュエリーを生み出していきます。
宝石の価値ではなくオリジナルのデザインで勝負したい。
この作品は四方5センチほどの小さなブローチ。
使っている宝石はほんのわずか。
美しい曲線を持つ羽は透明感のある七宝焼で再現。
高価な宝石にこだわらず個性的なデザインで作り出したジュエリーは時代の最先端を行く女優サラ・ベルナールの目をひきました。
サラはラリックの才能にひかれていくのです。
実はラリックも『ジスモンダ』で舞台用の小道具を制作していました。
ジョアニさんがラリックの資料を調べたところこの帽子は舞台までに完成せず『ジスモンダ』で使われることはなかったそうです。
時を同じくしてラリックもミュシャ同様にサラに選ばれその才能を発揮しようとしていました。
そしてあの舞台で2人のアーティストがコラボレーションすることになるのです。
ミュシャが描いたポスターをもとにラリックが作った『舞台用冠ユリ』。
同い年の2人にはライバル心もあったかもしれません。
ミュシャの描いた美しいユリの花をイメージを損なわず立体的な冠へと作りあげる。
ジュエリー作家としての意地とプライドをかけ取り組むのです。
幼い頃に養った自然を見つめる力が平面の絵では再現できないリアルさを生みました。
理想を現実のものに変える。
ラリックは見えないであろうところまでも緻密に再現し徹底的に本物のユリを作り出そうとするのです。
花びらの付け根。
断ち切られた茎。
花粉をつけたおしべ。
ラリックのテクニックがミュシャの絵をも超える美しいユリを作り出しました。
サラ・ベルナールとの運命の出会いがミュシャとラリックに新たな芸術を生み出させたのです。
ねぇなぜユリだったと思う?『遠国の姫君』はトリポリの王女とフランスの騎士の悲しい恋の物語でしょ?そうですが…。
だから純愛…純潔をイメージさせるユリをミュシャは選んだのよ。
ラリックの冠も完璧だった!生きてるのよあのユリ。
わかる?ミュシャのデザインからラリックが作りあげた冠です。
舞台で使われる小道具。
生きているとはどういう意味なのか?ラリックは何をしたのか?パリに昨年オープンしたラリックの意思を受け継いだデザイナーたちのジュエリーを売っています。
デザインをそのまま再現しているのではありません。
デザインからインスピレーションを受け新たなジュエリーを誕生させているんです。
チーフデザイナーのオバディアさんがラリックのジュエリーで大切にしていることを教えてくれました。
実はラリックはユリの冠でも生きているようなジュエリーに挑戦していました。
舞台用に作られた冠は美しさだけではなく軽さが求められます。
そこでラリックが選んだ材料は軽くて加工しやすいブリキ。
そして花びらを一枚一枚薄い網状にしやわらかなカーブを描くように加工しました。
ユリの冠を見たオバディアさんも…。
イミテーションのパールはカーブに合わせて大きさを変えながら配置。
それによって光の反射に変化が生まれ花びらが生き生きとして輝いているのです。
ユリの花を髪にさしているかのようにふわふわと揺れて見えます。
そうまるで生きている花のようにサラの頭部を飾ったのです。
ブリキのユリもラリックの手にかかればやわらかく可憐な花になる。
ラリックがミュシャの描いたユリに挑んだ渾身の冠。
2人の天才が出会い生まれた奇跡の作品なのです。
ミュシャもラリックも私も芸術を身近なものにしたかったの。
偉い人だけの楽しみじゃなく誰もが手にとり眺めて感動するのよ。
ミュシャはポスターでラリックはジュエリーで私は舞台でね。
想いは同じだったと?ねぇ今夜の舞台を見ていきなさい。
特別席を用意してあげるわ。
ステキな思い出をよみがえらせてくれたお礼にね。
サラがミュシャとラリックを引き合わせ奇跡のコラボレーションでこの冠が作られました。
3人の芸術への想いが作り上げた名品です。
永遠に枯れることのないユリ。
アルフォンス・ミュシャデザインルネ・ラリック制作『舞台用冠ユリ』。
芸術の新たな可能性に挑んだ可憐なる花。
閉店間際のデパ地下が大好きとその人は言います。
2015/07/25(土) 22:00〜22:30
テレビ大阪1
美の巨人たち 東山魁夷『道』一本道に隠された画家の執念と希望[字]

毎回一つの作品にスポットを当て、そこに秘められたドラマや謎を探る美術エンターテインメント番組。今日の一枚は、多くの人々の共感を得た、東山魁夷の代表作『道』。

詳細情報
番組内容
今日の一枚は、日本の風景画の第一人者、東山魁夷作『道』。彼の心をとらえた、青森県・種差海岸近くの牧草地を貫く一本道が描かれています。夏の早朝の風景で、色彩は実にシンプル。単純に見える道も、驚くほど繊細かつ丹念に描き込まれ、人を惹きつけて止まない不思議な魅力があります。実は単なる風景画ではなく、周到に準備した仕掛けが施されていたのです。そこには画家の執念が…。東山魁夷が道の先に思い描いたものとは?
ナレーター
 小林薫
 蒼井優
音楽
<オープニング&エンディングテーマ>
辻井伸行
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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