はきのうより低くなりますが、30度前後まで上がる所が多いでしょう。
生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
「くらしきらり解説」きょうはこちらのテーマです。
お笑い芸人の又吉直樹さんの受賞で話題となっている芥川賞についてです。
担当は名越章浩解説委員です。
先週の木曜日、ちょうど1週間前に受賞が決まりましてそこから1週間ずっとニュースで取り上げられていますね。
名越⇒この盛り上がり注目度の高い異例なことだと思いますね。
私も先週の記者会見の会場にいましたけれどもこれほどまでに芥川賞、直木賞多くの報道関係者が集まったのは見たことがないですね。
今回の受賞者、直木賞も含めまして合計3人います。
直木賞が1人、芥川賞が2人です。
左から「流」という作品で直木賞を受賞した東山彰良さん真ん中が「火花」で芥川賞を受賞した又吉直樹さんいちばん右が「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞した羽田圭介さんです。
どんなところが高く評価されたのかを見ていきますと今までにない可能性を感じることができるんです。
きょうは、その辺りを解説していきます。
気になりますね。
芥川賞の中で、私は又吉さんの本を購入したんですがまだ読んでいなくてまずはどういう内容なんでしょうか。
又吉さんの作品「火花」というタイトルですけれども舞台は生き残るための競争がとても過酷な若手お笑い芸人の社会が舞台になっています。
主人公は売れない芸人です。
そして、この主人公4歳年上の天才肌の先輩芸人を尊敬して弟子になるという設定です。
しかし、この先輩芸人は笑いとは何かを徹底的に追求するんですけれども生き方が不器用でなかなか人間関係もうまくいきません。
一方、主人公は自虐的な性格ながら売れるためのチャンスをものにしていきます。
選考会ではどういうところが評価されたんですか?文章の一行一行に込められた熱意や表現力の豊かさだと思うんです。
小説は、又吉さんの場合はまるで漫才を見ているかのような会話調で表現された箇所がとても多くて読みやすい文章になっています。
例えばどういうところですか?前後の文章がないと小説の世界観がなかなか伝わりにくいんですが一部、紹介します。
主人公が先輩芸人から買ってもらったペットボトルのお茶を飲む場面があります。
先輩が、美味いか?と聞きます。
すると主人公ははい。
タイムマシンが発明されたら真っ先にこのお茶を持って千利休に会いに行きますと冗談を交えて返します。
すると先輩はどうせ横から秀吉がしゃしゃり出てきて飲みよるやろと返します。
こうした軽妙なやり取りが小説の中で、ごく普通の会話として随所に出てくるんです。
おもしろいですね、返しが。
芸人さんらしいですよね。
選考委員の1人はお笑い芸人は原始的なことばの重要さを扱っている職業なんだなという発見をしたと言っているんです。
つまりは、作家さんもことばの重要さを扱う意味ではそういう職業なんですけれども又吉さんはそれとは少し違う世界を持っていてそれを小説の中に取り込んできたという意味での発見だったんだろうと思うんです。
ふだんから相手のことばにどういうことばを返せばそれが意表をついて楽しくなるのかを考えているでしょうからその考えがそのままこういう会話に生かされているというのが評価されているんでしょうね。
センスが光っていますよね。
選考委員を代表して記者会見した作家の山田詠美さんは又吉さんのいろいろな人生体験や焦燥感などの人生的なコストが作品の一行一行に込められていると語っています。
人生的なコストってちょっと難しい表現ですが又吉さんのこれまでの人生の積み重ねがことばになっているということですか?そういうことだと思うんですね。
もともと小説というのは人生の凝縮といえると思うんですが又吉さんの場合は特にそれが濃厚だったといえると思うんです。
それは又吉さんと小説の出会いからひもといていくと分かると思います。
又吉さんが太宰治を尊敬しているという話は結構、有名な話ですよね。
大好きだとおっしゃっていますよね。
何か好きになるきっかけみたいなことがあったんでしょうか。
それは又吉さんの性格が太宰治作品との巡り合いに深く関わっているんです。
実は、又吉さん子どものころから自分は周りとちょっとずれていると感じていたそうです。
本人いわく、子どものころから自意識みたいなのが空回りしていて例えば、ドッジボールの輪には入らず自分はグラウンドの端っこでとにかく全力で走るそれが自分ではいちばんかっこよくていちばん楽しいと思っていたそうなんです。
独特の価値観ですね。
又吉さんらしいですね。
そういうずれが根底にあって自分が長く感じてきた周囲との違和感にどう向き合っていくのかを模索していくうちに出会ったのが太宰治作品だったということです。
太宰治のどの作品だったんですか。
代表作の「人間失格」です。
自己表現が苦手で人のことが理解できない男性が「人間失格」の主人公ですが又吉さんはこの男性と自分を重ねて自分もみんなと同じなんだという気持ちになって心が軽くなったそうです。
それから読書が大好きになって又吉さんはこれまでに2000冊以上を読んだということです。
共感できる作品に出会うとうれしくなりますが「人間失格」の要素は又吉さんの「火花」にも入っているんでしょうか。
この「火花」はお笑い芸人の過酷な競争社会を描いているんですけれども実はお笑いのステージそのものはほとんど描かれていないんですね。
描かれているのは競争社会を生きる若者の率直な思いだったり苦悩の姿なんです。
そして、少しのチャンスを手にする人もいればなかなか、理想を追求するあまりチャンスに巡り合えない人もいる。
まるでそれは私たちが生きている世界と同じで「火花」は、まさに現代の若者の青春小説であると同時に今の社会を鋭く描写した作品でもあると言えると思います。
ますます読むのが楽しみになってきました。
そして、芥川賞はもう一作品ありますがそちらはどうでしょうか。
もう一作品は羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」という作品です。
祖父の介護をする無職の28歳の青年が主人公なんです。
一方、介護を受ける祖父は仲の悪い娘の家で暮らしています。
主人公の青年はなかなか仕事が見つかりません。
無職の青年です。
祖父のほうは仲の悪い娘の家で暮らして孫に介護をしてもらう居心地の悪さから死にたい、ということばを口癖のように言うんです。
ただ介護という重いテーマを扱っているんですが実はこの小説には笑いとユーモアがあるんです。
どんなところがユーモアなんですか?主人公があまりにも素直すぎて天然ぼけの思い込みで物語がどんどん展開していくところなんです。
例えば、祖父の死にたいということばを真に受けましてこれを魂の叫びなんだと表現してどうやったら安らかに死んでもらえるのかということを考え出すんですね。
それは、ばかばかしいんですけれども主人公はいたって真剣でそれが何とも滑稽です。
それでいて最後は感動すら覚えるという不思議な魅力が詰まった作品です。
選考委員の山田詠美さんは介護が介護でなくなる瞬間があって、とても愉快新しい形のホームドラマを作り上げたんだという委員もいましたよと話しています。
又吉さんと羽田さんこの表現力を次の作品にも生かしてほしいですね。
芥川賞は純文学のこれからを担う作家さんに贈られる賞ですので低迷する出版業界の救世主としての期待も2人にはかかっていると思うんです。
国内の出版物の売り上げは平成8年をピークに減少傾向が続いています。
2人の斬新な作品は今まで活字から離れていた人を再び書店に足を向かせるきっかけになると思います。
これからも次々に期待に応えられる作品を出していって2015/07/23(木) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「芥川賞 新たな表現力への期待」[字]
NHK解説委員…名越章浩,【司会】岩渕梢
詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…名越章浩,【司会】岩渕梢
ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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