アスリートの魂「己をかけたタックル レスリング 高谷惣亮」 2015.07.23


高校時代から通い続けてきた美容院。
こだわりは前髪。
お〜ちょっと待って待って待ってみたいな。
究極の選択でしたよね。
あ〜いい感じです。
見た目にこだわるアスリート。
その実力は…。
電光石火のタックル。
相手をなぎ倒します。
フリースタイル74キロ級日本のエースです。
スピードあるタックルで去年の世界選手権日本男子この階級初めての銀メダルを獲得。
来年のオリンピックで金メダルを期待されています。
ニックネームはタックル王子。
最も自信のある技取れる技というのがタックルだったので。
むしろ自分の中の必殺技。
しかし今大きな壁に直面しています。
世界トップレベルの選手に自慢のタックルをかわされ返し技で敗れてしまったのです。
僕の中ではちょっと強烈でしたね。
そこで取り組んだのが返し技を受けない新しいタックル。
常識を覆す技に挑みます。
これまでとは違う高度な技術。
更に途方もないパワーが必要とされます。
よいしょ!かつてない苦闘が待ち受けていました。
生きている証しだっていうのがやっぱり僕の中のタックルなのでオリンピックっていう舞台でタックルで金メダルを取りたいです。
新しい技で金メダルへの道を切り開く事ができるのか。
自らの存在をかけた闘いの日々を見つめました。
高谷選手の母校拓殖大学。
(取材者)こんにちは。
こんにちは。
午後5時高谷選手が練習にやって来ました。
(取材者)チシャ猫?知らないんですか?僕「不思議の国のアリス」って結構好きなんですけどそれのキャラ猫なんですけど。
お気に入りの猫のキャラクター。
レスリングには関係ないように見えますが…。
何でかっていうと…レスリングの強豪拓殖大学。
これまで7人のオリンピック代表選手を輩出してきました。
高谷選手は4年前に卒業して企業に所属してからもここで週6日練習をしています。
後輩の指導をしながら一日4時間のトレーニング。
上げろ上げろ上げろ!あ〜足首の方上げてほしかった。
そう足首の方!足首の方だよ足首の方。
高谷選手は1階級上12キロも重い部員を相手に技を磨きます。
最大の武器はタックル。
桁外れのスピード。
(ホイッスル)このタックルで世界のトップ選手に上り詰めました。
高谷選手が戦う…最も選手層の厚い階級といわれています。
パワーのある欧米の選手に押され日本の選手は長年メダルを取る事ができずにいました。
高谷選手の名が世界に知れ渡ったのは去年の世界選手権。
海外勢のパワーにスピードあるタックルで挑みました。
一瞬の隙をつく圧倒的な瞬発力。
相手の足をとらえて自由を奪う腕の強さ。
(ホイッスル)銀メダルの快挙を成し遂げました。
来年のオリンピックでの金メダルへの期待がこれで一気に高まりました。
誰にもやった事がないタックルで会場を思いっきり沸かせるっていうのをやっぱり僕は夢みて…。
僕のタックルで金メダルを取ってみせたいです。
高谷選手のタックルは並外れた身体能力から生み出されます。
爆発的なスピードを生む瞬発力。
垂直跳びの記録は71センチでNBAアメリカプロバスケットボールリーグの選手に匹敵します。
そして腕力。
3.5メートルの縄を腕の力だけで10往復できます。
相手をとらえたら離しません。
腕を引き付ける背筋の力は264キロ。
日本代表では最も重い125キロ級も含め全ての選手を上回ります。
更に特筆すべきはその腕の長さ。
両手を広げたリーチは普通身長とほぼ同じですが高谷選手は11センチも長い188センチ。
離れている相手も逃しません。
自分のここに合わせて服着て買ったら結構ここが足らないみたいな感じになったりもありますね。
相手がやはり気付く前に自分の手が引っ掛かるのでやっぱりそっから引っ掛かってグッと引き付けれる。
全てがずばぬけてますよね。
スピードと力で十分勝ってしまうところがありましたね。
高谷選手は来年のリオデジャネイロ・オリンピックに向けて大きな課題に取り組んでいました。
仕掛けるタイミングを探る高谷選手。
実は最大の武器であるタックルのフォームを改造しようとしていたのです。
そのきっかけは去年の世界選手権。
銀メダルを取ったものの決勝では自慢のタックルが通用しませんでした。
相手はロンドンオリンピックの銅メダリストです。
タックル。
かわされました。
そのまま胴を抱え込まれ返し技でポイントを奪われました。
相手に素早く反応され足を引いてかわされたのです。
今のスピードでは世界のトップには通用しないと思い知らされました。
僕の中ではちょっと強烈でしたね。
もっとスピードを上げなければ金メダルは取れない。
そこで高谷選手は新しいタックルを考え出しました。
極端に低い姿勢からのタックル。
陸上競技のスタートに似ている事から高谷選手はクラウチング・タックルと名付けました。
右がクラウチング・タックル。
タックルを始めてから相手をとらえるまでの時間は…0.46秒。
一方左側これまでのタックルは…。
0.64秒。
新タックルが0.18秒早く相手をとらえていました。
その理由はこれまでのタックルは一旦しゃがんでから前に出ていました。
これに対して新タックルはしゃがむ動作を省いた分タックルを速くする事ができます。
つまり相手が反応してよける前にとらえる事ができるのです。
相手の反応をできるだけなくすためにこういう動きをした方が相手のカウンターとか返し技も受けずに自分がポイントまでつなげれる。
しかしクラウチング・タックルには大きな課題がありました。
タックルを武器にロンドン大会66キロ級で日本の男子レスリング24年ぶりの金メダルを獲得しました。
米満さんはタックルの勢いに注目しました。
開発中の新タックル。
相手を倒すパワーが不足しているというのです。
ですけどやはりこの最初から低い状態ですとタメがないですので…これまでのタックルと前に出る動作だけを比較してみます。
新タックルの方が0.13秒遅い事が分かりました。
勢いがない分相手を倒すパワーが弱くなるのです。
非常に難しいと思いますね。
その反動もないタックル…なおかつ最初から低い構えでタックル入るっていうのは…やっぱりその…並みの筋肉じゃできないんですよね。
相手を倒せるかまでつなげるためにやっぱり足の筋肉お尻の筋肉を鍛えていっていかなきゃいけないので。
クラウチング・タックルの特訓が始まりました。
高谷選手はパワー不足を補うため足腰を徹底的に強化します。
はいいこう〜。
よいしょ!まずは重さ30キロのバッグを抱え新タックルと同じ低い姿勢からジャンプを繰り返します。
新タックルのパワーを生むのは尻太ももふくらはぎの筋肉。
ここを重点的に鍛えます。
はい。
はいジャンプ!そういこう。
そう。
そう。
はいジャンプ!ジャンプ!よいしょ〜!10秒!はいはいはい。
はいジャンプ!ジャンプ!いよっ!はいもう一回いこう!はいはいはい。
はいジャンプ。
はいオッケー。
メニューは全部で6種類。
すぐに次へ。
レディーゴー!はいリズム!今度も低い姿勢から24キロのおもりがついたケーブルを引っ張ります。
そう!残り20!はい!はい!はい!そうリズムリズムリズムリズムリズム!自分のリズムで!自分のリズムで!そう!そう!そう!合計3分間を3セット。
はい!はい!はい!は〜いオッケー!30秒レスト。
新タックル習得へ過酷なトレーニングが続きます。
(荒い息遣い)高谷選手は新しいタックルのパワーをつけるため食生活も大きく見直しました。
ベストの体重を維持しながら体脂肪を減らして筋肉の比率を高めようというのです。
野菜のうまみオンリーなんですよ。
あの〜いろんな味付けとかはほとんどしてないです。
肉を入れない野菜だけのスープ。
栄養士に作り方を教わりました。
メインはキンメダイの煮つけ。
筋肉をつけるたんぱく質は脂肪分の少ない魚や鳥肉などを選びます。
めっちゃうまそうやんけ!頂きます。
研究熱心な高谷選手。
メニューや味付けを工夫するのが楽しいといいます。
うまっ!一日の終わり。
よいしょ。
高谷選手は毎日練習で気付いた事や今後の課題などをノートに記録しています。
そのほとんどがタックルについてです。
「ふみ込みが浅く手だけで追いかけてしまうので注意しよう」。
「クラウチング・タックルにいく時は右手を前へつく。
前傾姿勢をとる。
頭の位置を落とす」。
毎日同じスパンで朝から始まり夜をまとめて終わる。
一日一日をどう僕のタックルの進化へつなげていくかっていうのでやっぱり一日一日を大事にしてます。
タックル中心の毎日。
高谷選手はタックルと共に成長してきました。
日本海を望む…高谷選手の生まれ故郷です。
午後6時半。
こんばんは。
こんばんは!こんばんは。
この町はレスリングが盛んで伊調千春さんをはじめ多くの日本代表選手を輩出しています。
キックとかこうやって腰入ったらどうなる?町では小中学生を対象としたレスリング教室が開かれています。
そう足だよ足。
な?入った時に足をしっかりこう持たなきゃ。
高谷選手は小学6年生の時兄に誘われてここでレスリングを始めました。
タックルを教わるとすぐにコーチをしていた高校生を倒せるようになりました。
自分より大きな相手を負かす事ができる。
タックルに魅了されたのです。
タックルっていう技がその…一番褒められたんですよねやっぱり。
スピードがあるなとか。
やっぱり褒められたっていうのですごいうれしかったんでやっぱりトキメキに近いものかもしれないんですけど。
ずっとタックルで。
タックルでタックルでっていうふうにいきました。
コーチの正田絢子さん。
世界選手権を4度制した実力者です。
当時の高谷選手のタックルを見て驚いたといいます。
本当に覚悟を持って入ってくるので一切の…手を抜くとかそういう事もしないですし本当に取るんだっていう気持ちが伝わるようなタックルを練習であってもしてくるのでもう強気のオーラがすごいみなぎってました。
その後高谷選手は国内の大会で次々と優勝。
タックルは大好きでしたが人よりもたくさん練習しなくても勝てると考えていました。
ところが大学1年生の時タックルとの向き合い方を大きく変える出来事が起きます。
原因不明の急性肝炎。
レスリングはもっての外絶対安静を言い渡されました。
3か月間の療養。
タックルのない生活。
高谷選手は失って初めてその存在の大きさを痛感しました。
僕にとって必要不可欠。
もう本当に心臓みたいな。
タックルっていうのが僕にとっては絶対的なものなんだなというのを改めて考える事ができました。
それ以来タックルに対する意識は一変しました。
高谷選手は誰よりも厳しい練習に打ち込むようになったのです。
更に大きな転機となったのが3年前23歳の時に出場したロンドンオリンピックでした。
(実況)さあいけるか!?まだ時間はあります。
(解説)このあとです!
(実況)もう一回。
いった!どうか?入れないか?逆に来た!高谷選手のタックルは世界のパワーに封じ込まれ初戦で敗退しました。
高谷選手は一日の全てをタックルを磨く事に費やすようになりました。
朝は6時に起きてヨガ。
股関節をはじめ全身の柔軟性を高めどんな体勢からでもタックルにいける体を作ります。
ほかの競技の練習でもタックルに役立つと考えれば貪欲に取り入れます。
足腰を鍛える相撲の四股。
瞬発力を養う野球やサッカーのラダー・トレーニング。
試練と挫折を力に変え世界に通用するタックルを作り上げてきました。
目指す場所はやっぱりオリンピックの金メダルなんでそのためにはやっぱり何でも取り入れて強くなるためには何でもするっていう気持ちです。
日本一を決める大会を1か月後に控えたこの日高谷選手は出稽古に向かいました。
新しいクラウチング・タックルが実戦で通用するかどうか確かめるためです。
これから本日の練習を始めます。
敬礼!
(一同)お願いします!直れ。
休め。
休め。
相手は強豪の自衛隊体育学校。
けがないようにやって下さい。
以上。
国内トップクラスの選手を擁しオリンピックや世界選手権のメダリストを数多く生み出してきました。
実戦形式のスパーリング。
新タックルを試みます。
はね返されました。
今度も足をつかむ事さえできません。
この日成功したのは僅か3本。
成功と失敗とを分ける大きな違いがありました。
成功したタックルは相手をとらえた時頭を上げてしっかり胸をぶつけています。
こちらは失敗したタックル。
頭が下がっています。
頭が下がると勢いがなくなり相手を倒すパワーが落ちてしまうのです。
実はタックルにいこうとした瞬間高谷選手の脳裏にある光景がよみがえっていました。
タックルをかわされ返し技で敗れた世界選手権のあの決勝でした。
顔が逃げたりだとか頭が下がったりだっていう状況に陥ってしまう。
この日のノート。
「勢いのあるタックルが出来なかった」。
「タックルを返される恐怖が出る」。
大きな課題が浮かび上がりました。
恐怖心をどう乗り越えるのか。
この日高谷選手は大学の先輩の米満達弘さんに相談を持ち掛けました。
乾杯。
高谷選手と同じくタックルを得意としていた米満さん。
ロンドンオリンピックで金メダルを獲得。
信頼する先輩です。
高谷選手はタックルにいく時の怖さを打ち明けました。
一回潰されたら次ちょっと入るのためらったりとかあるじゃないですか。
でそのやっぱり人間ためらったり入ろうか入るまいか迷った時が一番中途半端なタックルになるじゃないですか。
ああいうのなくすためにどうしたらいいかなって思って。
まあ俺もやっぱり経験そういうのあるけど。
失敗の事考えたらねいろいろとマイナスな方向にしか行かないけど足の方にめがけていってしまったから次は脇をくぐってタックル入ろうかなとかいろんな事考えて意外とその技が効いたりとかして「この技効くじゃん」って。
それが効く時もあるから。
試合で。
自分のタックルで最後まで攻め抜く。
高谷選手はタックルの原点を思い出していました。
夜8時。
高谷選手は部員たちの帰った道場で一人練習を続けていました。
恐怖に打ち勝つには練習しかない。
速く強く。
頭を上げて攻め続ける。
完璧な新タックルを目指します。
いよいよクラウチング・タックルを使う日がやって来ました。
おはようございます。
晴れましたね。
トップクラスの選手が集まる日本最高峰の大会。
新タックルは通用するのか。
第1シードの高谷選手は2回戦から出場です。
試合開始。
相手はアジア選手権3位の実績を持つ若手です。
低い姿勢から新タックル。
決まりません。
勝たなければならないという重圧。
両足をとらえきれません。
(終了の合図)勝ったものの新タックルを完璧に決める事はできませんでした。
(開始の合図)そして準決勝開始早々。
いきなり場外に押し出されポイントを奪われます。
その時…。
後半の第2ピリオドでした。
速く強く。
新タックルが完璧に決まりました。
そのまま連続攻撃。
大量点をあげ決勝進出を決めました。
これで高谷選手の優勝は確実と思われました。
ところが思わぬ試練が待ち構えていました。
(場内アナウンス)「フリースタイル74kg級決勝戦を行います」。
決勝の相手は国内ナンバーツーの実力者嶋田大育選手。
アジア選手権の銀メダリストです。
(開始の合図)序盤から積極的に攻撃。
新タックルを次々と決めます。
大きくリードしました。
しかし第2ピリオド嶋田選手の反撃を許します。
張り手。
高谷選手の動きが止まりました。
構えてる最中に…そのあとは防戦一方。
タックルを全く出せなくなりました。
湧き起こった恐怖心。
1ポイント差まで追い上げられます。
一瞬このまま逃げきる事も考えました。
しかし…。
戦いながら…残りは5秒。
(ホイッスル)限界まで体を低くして新タックル。
自分のタックルで最後まで攻め抜きました。
(終了の合図)優勝。
試練を力に変えました。
大会3連覇。
9月の世界選手権代表に選ばれた高谷選手。
来年のリオへ大きな一歩を踏み出しました。
3日後高谷選手は練習を再開しました。
リオデジャネイロ・オリンピックまでに新タックルの更なる進化を目指します。
大会後のノート。
「世界選手権で金メダル」。
それをリオにつなげていく事を誓いました。
やっぱり僕が僕であるため。
あの〜本当に大きく言うと生きてる証しだっていうのがやっぱりその…僕の中のタックルなんで…。
高谷惣亮っていうのを世界に見せるためにはやっぱりタックルだと思うんでそのオリンピックっていう舞台でタックルで金メダルを取りたいです。
高谷惣亮選手26歳。
どんなに厳しくても己を信じてタックルで攻め抜く覚悟です。
諸君…狂いたまえ!2015/07/23(木) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「己をかけたタックル レスリング 高谷惣亮」[字]

リオ五輪でメダルを期待されるレスリング・高谷惣亮選手。今、取り組んでいるのが、攻守が一体となった“究極”のタックル。新しいタックルにすべてをかける日々に密着する

詳細情報
番組内容
小学生の頃から大きな相手を倒しタックルのとりこになった高谷選手。高校、大学で日本一になり「タックル王子」と呼ばれた。しかしその直後、重い肝炎で選手生命を絶たれる寸前まで追い込まれ、タックルこそ「生きる証」と考えるように。“究極”のタックル習得には瞬発力、筋力、関節の可動域と、レスリングに必要な能力を極限まで強化することが不可欠。新技を試す舞台は6月の全日本選抜選手権。タックルへのあくなき挑戦を追う
出演者
【語り】杉本哲太

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – 相撲・格闘技

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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