去年12月。
東京大学である開校式が行われた。
大人顔負けの3D動画を制作する中学生や小説家を夢みる小学生。
でも実は彼ら不登校になったり集団行動が苦手な学校のはみ出し者たち。
発達障害と診断を受けている子もいる。
そんな彼らの中に埋もれた光る能力を伸ばそうという目的で始まったのが…そのちょちょっと書き換えられるのがすごい。
おおなるほど。
さすが君はよく分かってるね。
ちょっと不器用だけど可能性がいっぱいの子どもたち。
その半年を追った。
東京・駒場にある…この古びた校舎でROCKETの授業が始まった。
今日はこれです。
見た事ある?コウイカ!よ〜く知ってるね!コウイカっていいます。
初めての授業の日。
子どもたちの前に突然示されたのはイカ。
うわ〜!彼らに与えられたのはイカスミを取り出しパエリヤを作るというゴールだけ。
タブレット端末や持ち寄った本を使い自分で調べ自分で考えていく。
また破けた〜!あ〜もう〜!あ〜もう〜!宏太郎は小学生の時に自閉症スペクトラム障害いわゆるアスペルガー症候群と診断された。
だって先生何これもう全然違うじゃん構造!体の構造が違い過ぎる〜!宏太郎は予想外の事に遭遇すると感情をコントロールする事ができなくなる。
でもここではパニックを起こしてもとがめられる事はない。
しかもここ見ましたか?「イカ」って書いてある。
本当だ。
3時間後15人のメンバーが全く違うパエリヤを完成させた。
パニックを起こした宏太郎も最後までやり遂げる事ができた。
小学生の頃から専門家を驚かせるほどの知識を詰め込んできた宏太郎。
宗教や心理学経済学。
そして今はまっているのが物理学だ。
(宏太郎)興味のある事グルーオンや原子などの物質を構成しているものや物性まあ物性物理学ですね。
ダークマターとダークエネルギー。
「宇宙は無からか有からかどちらから生まれたか」。
これは最終目標ですよね。
何もないところって何が起こるんでしょう。
でも何かが起こんなかったらここは生まれない訳ですよね宇宙は。
…って事はそれ何か面白くないですか?何もないのに何か生まれるって。
しかし宏太郎学校では自分の気持ちをうまく言葉で表現できず同級生たちと衝突を繰り返してきた。
その少し変わった言動を周囲から理解してもらう事は難しいという。
学校になじめなくても才能にあふれた子どもたちをどう社会で支えていくか。
中邑賢龍先生はその実現に向け異才発掘プロジェクトROCKETを立ち上げた。
学校の中で突き抜けた子どもたちあるいはユニークな子どもといわれる子どもたちっていうのはやはり除外されていきますよね。
ねえ。
その排除されていく。
その中で自信を失っていく。
その中で将来に対する不安を抱いていくっていう。
いやそうじゃなくてもいい不安を抱かなくてもいいという道筋を僕たちが見せる必要があると思うんですよね。
だからそういう子どもたちを社会で抱え学校で抱えられる仕組みを考えていくっていうのがこの異才発掘プロジェクトになる訳です。
ROCKETで新たな授業が始まった。
グループに分かれてちょっとユニークな課題を成し遂げるという取り組みだ。
1番目。
「北海道の山で鹿の角をゲットして自分のフォークとナイフを作りなさい」。
考えよう。
はい2番目。
「プロジェクト茶」。
はい!行きたい?これは四国の山の中に幻の半発酵茶というのがある。
行ってみたい人?おお〜すごいねこれ。
よ〜し。
鹿プロジェクトの課題は「グループで協力し鹿の角でナイフとフォークを作る」という事。
鹿の角をどうやって入手するかそれをどう加工するかは全てメンバーが共同で調べ実行していく。
はい。
ふだんは共同作業が苦手な子どもたち。
でも個性豊かなメンバーが顔をそろえたこのプロジェクトでは何だか生き生き作業を進めている。
宏太郎率先して鹿の角を加工する業者へ電話を始めた。
あのあと〜加工の当日の時なんですけれどもえっと教えに来て頂けないでしょうか?おう行くよ。
分かりました。
ありがとうございます。
一方こちらは…ちょっと気になるメンバーがいた。
はい。
メンバーの中で一番年上なのにほとんど言葉を発していない…陸玖が暮らすのは…人口1万5,000人ほどのこの町にある中学校に通っている。
登校をするのは月に数日ほど。
この日は1か月ぶりに授業に参加した。
入学して以来友達を作ろうと必死に努力をしてきた。
しかし共通の話題を持てる仲間には出会えなかった。
勉強はクラスでいつもトップクラスだった陸玖。
しかし運動が苦手だったり手先が不器用だったりして同級生たちにからかわれる事が多かった。
自信を失い次第に言葉を発する事が恐怖になっていった。
どうしたら同級生たちの興味を引ける存在になれるだろう。
そう思い始めたのが3D動画の制作だった。
映像を加工する技術はインターネットの情報を頼りに一から自力で習得した。
陸玖が所属する1か月後のお茶プロジェクト。
四国の山中にある幻の碁石茶をチームで協力して作るのが課題だ。
すごくいいものはハチミツのような甘い匂いがするんだって。
(一同)へえ〜!まずいものはそんな味がしない。
あとそれから碁石茶にもちゃんとした見分け方っつうのもあるんだよ。
分かった。
分かったからその集めた情報を教えてくれよ。
だからその情報を今から…。
このプロジェクトの真のねらいはそれぞれの才能を社会に発揮していくために最低限の交渉力や相手を説得する力を身につける事。
でも陸玖は相変わらず言葉を発する事ができない。
しかも…。
うちだってちゃんと調べたんだ!そう甘く見んな!もともとね碁石茶っつうのはね飲むためじゃなくて茶がゆにするために…。
今は。
(スタッフ)そうだね。
必要な情報だけ。
個性の強い子どもたち。
グループでの取り組みは大きな試練となっていた。
それぞれのプロジェクトの進捗状況を見つめていた中邑先生。
この日グループで活動をしていくために大切な人との向き合い方について話を始めた。
ちょっと聞いて下さい。
でプロジェクトを進めていく上においてやっぱりこれある程度グループでやらなきゃいけない部分もあると思うんだよね。
うん。
でみんないつも友達と常に一緒に仲よくやる必要はないと思うんだけど人に嫌な気持ちをさせる事は絶対やめてほしいと思う。
いいですね?基本的に…分かります!
(中邑)はい。
あ〜何かちょっとむかついた時とかに…。
(中邑)勝手に言わないで下さい。
例えばある人はさこの壁にガンガンガンッてぶつけていつも血を流してるんだよね。
でもう人前ですぐ裸になる人もいる。
どこにでもうんちをする。
うんちをこうやって手でこねる。
でそれを食べる。
そしてそのうんちのついた手でこうしてあ〜ってこうやって来る。
でも認知症ではありますよね?
(中邑)あるね。
うん。
で今日はこの人おとなしいなと思ったら突然ボンッて殴る。
でけがをする。
いいところがあるかな?ある!
(中邑)どこが?知らないけどきっとある!
(中邑)うん。
みんなあると思って関わっていくんだよ。
僕のところの学生を連れてそこで実習をしていました。
ね。
学生はそこに行くとみんな怖くて震えるんだよ。
「ハッ!」て。
1週間後そう言った学生さんが涙を流してこう言いました。
「先生あの人生きてた」って。
分かる?ね。
「何でそう思ったの?」って言ったら食事の時に…。
(手をたたく音)手をたたいた。
その瞬間にね「あっこの人生きてるんだって思った」って。
手をたたいたのが「頂きます」かどうか分からないけどそう彼女は感じたんだよね。
そう。
うん。
つまり…
(中邑)いいところが絶対あるって関わっていく。
でもですよあの〜…人ではないのかもしれない。
人じゃないっつうか…
(中邑)人じゃないのか?そうか。
みんなこの中でもさタイプの子とタイプじゃない子とかね仲よくできそうな子となかなかどうも相性合わないなっていう子がいるかもしれない。
うん。
だけど別にその子と仲よく無理にしようとする必要はない。
いい?だけどその子を否定したりその子を追い出すような事はやらないでほしい。
それはとても大事な事。
それが唯一のルールかもしれないねここの。
好き嫌いを超えて人の存在を認める事の大切さ。
そのメッセージはまだ宏太郎には届いていなかった。
ROCKETの授業から2週間後。
宏太郎の心を変化させる出来事が起こった。
(鈴の音)一緒に暮らしていたおじいさんが持病の心臓を悪化させ突然亡くなった。
宏太郎に…。
(宏太郎)これあれじゃん。
(美保)そう。
いろんな自然を体験させたいって言って…。
(宏太郎)懐かしいな。
おじいさんはいつも突拍子もない言動をとる宏太郎に厳しく接していた。
あの年齢の方が…あの年齢の人がね宏太郎みたいな子を理解するのはなかなか難しい事でもあると思うんですけど。
あの〜でもこの3年…ここ数年は何か宏太郎がやっぱり言葉を発するようになって理解してくれるようになったっていう事でしょうかね。
(美保)やっと最近いい祖父だった?ですけどね。
(美保)随分怒られたけどね。
うん。
苦手だった祖父の死に直面し心にある変化が生まれていた。
その事を宏太郎は中邑先生へメールしていた。
(宏太郎)「こんにちは野中です。
祖父のいる集中治療室に入れてもらった時、なんとも言えない涙がこみ上げてきました。
こちらの声掛けに反応せず、たくさんの器具をつけてほとんど動かない祖父はモニターの数字上は生きているのに死んでいるような感じがしました。
祖父のおでこを触ったら暖かかったです。
僕は祖父が『生きている』と感じました」。
え〜っと「『何もいいところがないけれど、生きているだけで価値がある』という状態を実感しました」。
祖父の死から感じた人が存在するという意味。
中邑先生のメッセージが少しずつ響き始めていた。
ああ人は生きてるだけで価値がある事が分かったっていう。
すごいですよね。
だけど彼がそのあとに書いた文章が「だけどやっぱり意思を伝えられないっていう事は駄目だと思う」って僕にメールを送ってきたんですよ。
僕何て書こうかと思ったんだよね。
でまあひと言返事を返したんですけど「おじいちゃんはものは言わないけど君の心を動かした」って。
「ものを言えなくても人を動かす事はできる」っていう事を僕は伝えたんですけどね。
この春中学を卒業した永冨士陸玖。
小樽市内の進学校へ通い始めた。
新しい場所で大好きな映像制作について話せる仲間ができないか期待に胸を膨らませていた。
登校して間もなく…。
陸玖が学校から出てきた。
(取材者)陸玖君話しかけてもいいですか?どうされました?入学して1か月の陸玖。
いまだに同級生と会話をする事ができないという。
ここ数日教室にいると気分が悪くなるようになっていた。
(取材者)どこですか?駐車場でしゃがみ込む陸玖から母はメールを受け取っていた。
「行きたくない。
でも行かなきゃいけない」。
陸玖は自分を必死に変えようとしていた。
(スタッフ)各自高知まで行く方法と…。
グループでプロジェクトを進める活動は2か月後の合宿に向け動き出していた。
あっ本当ですか?すげえ!教えてほしいです。
グループでの活動が始まって以来陸玖が初めて自分から提案をした。
すごい!ちょっと見せて。
わお!ここちょっと見せてもらってもいいですか?あっ僕のまで〜!青木君の。
わあ!陸玖はメンバーそれぞれの合宿地への交通経路や宿泊先の情報を事前に調べてきていた。
いいかもね〜。
いいかも。
いろんなルートがあった。
すげえ!人が存在するという意味について考えを深めてきたROCKETのメンバーたち。
「誰かいますか?」。
はいいますよ。
こんばんは〜。
宏太郎はこの数か月ROCKETの仲間と対話を重ねる中で自分の事を以前よりも前向きに受け止めるようになっていた。
でも…東京大学で始まった異才発掘プロジェクトROCKET。
子どもたちに与えられた期間は5年。
まだほんの入り口に立ったばかり。
不器用だけど無限の可能性を秘めた彼らの挑戦は続いていく。
(マイケル)
これは極東の国日本を訪れた2015/07/23(木) 00:10〜00:40
NHK総合1・神戸
NEXT 未来のために「不器用な、ぼくらの教室〜東大・異才発掘プロジェクト」[字]
東大先端科学研究所が去年始めた異才発掘プロジェクト。学校に適応できない子供たちを支え、新しい学びの場を提供する取り組みだ。子供たちはどう変わっていくのか追った。
詳細情報
番組内容
去年12月に始まった異才発掘プロジェクトROCKET。参加したのは発達障害などで学校に適応できず、不登校になったりいじめにあったりした子どもたちだ。しかし彼らはみな、大学レベルの数学や物理学をこなしたり、絵や小説、3D映像などの創作に秀でたりと、特異な才能を内に秘めている。中邑賢龍教授は「人間みんな違っていいんだ」と励ますところから始めた。居場所を得て生き生きと輝きだす子どもたち。その姿を追った。
出演者
【語り】坂本慶介
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – 教育問題
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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