タイムスクープハンター セレクション「石つぶて 紛争調停人」 2015.07.22


アブソリュートポジションN52W718E560S245。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB2754805年25時75分96秒。
西暦変換しますと1410年11月5日8時28分。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー245638これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
コードナンバー245638。
1410年若狭国。
投石を繰り返す男たち。
その日ふだんは静かな町が騒乱状態に陥っていた。
きっかけは朝方に起きたほんのささいなけんかであった。
当事者同士に仲間が加わっていきいつの間にか小さなけんかが町全体や隣村をも巻き込む大乱闘に発展していた
現在私は時空を超えて1410年室町時代の若狭国のとある町に来ております。
本来の目的では当時の人々がかぶっていた烏帽子について取材をする予定でした。
しかしその取材中にとある事件が起きてしまいました。
今回は本部と協議した結果予定を大幅に変更してその事件の一部始終をドキュメントとしてお送りしたいと思います。
危ない…。
こっちだこっち!この野郎!
飛び交う石をかいくぐり必死に騒ぎを静めようとしている男がいる。
中人。
今回の取材対象である。
けんかや事件の仲裁に入り速やかに解決に導くいわば紛争調停人だ
名前は弥三郎。
世話好きで人望があつい
(弥三郎)そなたも下がれ!そちらへ下がれ。
大丈夫か?はい大丈夫です。
やめろ!やめるんじゃ!ただいまたくさんの石が私の上空を飛び交っています。
ちょうど今から5時間前一人の町民と一人の農民のささいないざこざからこのように石つぶてによる乱闘にまで発展しました。
なぜこのような騒乱に発展してしまったのか。
始まりは小さなトラブルだった。
私は偶然その場に居合わせ一部始終をカメラに収める事ができた
私は室町時代の人々がかぶっていた烏帽子を取材するべく一人の町人を取材していた
こちらの烏帽子ですがほとんどの男性の方がかぶっていますが…。
まあ外すとしたら寝る時くらいだな。
いやいや。
駄目ですか。
烏帽子はステータスを意味しており成年男子の証しとなっていたのだ
だがこのあとインタビューは中断された
で何だっけ?おい。
えっ?いや笑ったろうお前。
だから?「だから」じゃねえよお前。
おい!おい!いや無礼って。
そっちでしょ。
立ち小便を笑われた事に腹を立てている。
男は近くの村に住む農民であった
笑っただろ。
謝れっつうんだよ。
そちらがおかしいからだろう!何なんだよお前よ。
おい。
何なんだ!?ちゃんと謝れよ。
そして…
おい!待て!
烏帽子を落とされた八幡屋が逆上する
何だコラ!
けんかを止めに入ったのが八幡屋の知り合いでそこにたまたま通りかかった弥三郎であった
八幡屋殿!
八幡屋が怒りを爆発させたのには訳がある。
当時頭をじかにさらす事は屈辱との認識があった。
烏帽子を取られる事は裸にされるのと同じぐらい恥ずべき事だったのだ
ここは帰ってくれ。
な?覚えとけよお前。
八幡屋殿。
中人の弥三郎の仲裁でけんかは何とか収まったかに見えた。
だがこれで解決したわけではなかった。
事件の発端から22分後の10時39分
先ほどのけんかが一旦収まったかに見えましたが仲間なんですかね村人と思われる人たちが加勢して再び騒ぎが起きてます。
一旦は引き下がった惣吉郎が村の仲間を引き連れ戻ってきた
(八幡屋)何だ?やるのか!?逃げよう逃げよう。
逃げるのかコラ!何が起きたんだ。
わしの烏帽子を…それは許し難いな。
どこのやつらだ?おいちょっと待て。
烏帽子だぞ烏帽子!とにかく気を静めて。
どこ行くんだ?・弥三郎!待っておれ。
ああひどいのう。
笑ったの笑われたの…僅かでも縁があればまるで待っておったかのように…つぶて合戦じゃ。
そうなるともう収拾がつかなくなる。
さような騒ぎになる前にともかく一刻も早う手を打たんとな。
何だよお前?落ち着きなされ。
な?この度のいさかいの件…中人だと?お主あやつの知り合いだろう。
室町時代の社会ではけんかや刃傷沙汰が日常茶飯事であった。
庶民や武士を問わずささいな事から大きなトラブルに発展。
死傷者を出す事件が絶えなかった。
そうした争いの仲裁に入り解決に導く役目を負っていたのが中人であった。
中人となった者たちはその役目を大概ボランティアで行っていた。
法整備が十分ではなく慣習の一つとして生まれた
仲を取り持つ立場として働かせてもらいたい。
中人はとても重要な役割を担った。
社会のさまざまな階層に存在し大名の合戦から庶民のもめ事まで紛争の調停人として活躍する
笑われては誰でも怒るぞえ。
わしとても同じじゃ。
無論腹立ちもする。
分かるんじゃがのう。
人というのはそういうものであろう。
お主たちもそこのところを気を回して分かってやってくれぬかのう。
おお!そうして下されや。
弥三郎の説得が功を奏し惣吉郎が落ち着きを取り戻していた
頼むでな。
落ち着いて。
ところが…
待て!やめるんじゃ!
八幡屋が襲われたとのうわさを聞きつけた町人の仲間たちがいつの間にか彼の所に駆けつけこのいさかいに参戦し始めたのだ
こちらに向かって投石を始めている。
ついにつぶて合戦に発展してしまった
現在午後4時を回ったところです。
依然騒ぎは収まりません。
すいません。
依然騒ぎが収まる気配はなかった。
このような石つぶてによる合戦は印地と呼ばれ古代より行われてきた。
石を投げ合う印地は邪気をはらうための意味合いもありそれ自体が祭りとして行われていた。
祭りとはいえ一度石が飛び交うと参加者は集団的な興奮状態に陥る。
そのため祭りから合戦に発展。
死傷者を出す惨事も多かったという。
無数の石が飛び交いけが人が出始めている。
危険な状態が続いていた
…とその時だった
あいたっ!
つぶてが私の頭に当たった
あ〜痛っ…。
駄目じゃ駄目じゃ!
ついに八幡屋の町人側にも犠牲者が出る
運べ運べ!近くに!大丈夫か?平気か?大丈夫か?石もっこを?卑怯者じゃ。
印地となれば何でもありじゃろう。
見た目以上に威力があり小動物の狩りや戦争に用いられ危険な武器であった
みるみる数が集まってるらしい。
待て!お主は出しゃばるな。
やめろ!もともとの非は向こうでござろうに!あやつらをぶちのめしてやる。
ならぬ!何度言うたら分かるのじゃ。
きりがないだろもう。
衝突はもはや収拾がつかない状態となっていた。
事態はむしろ大きくなるばかりであった。
そんな中八幡屋の表情が僅かに変化した
事の重大さに気付き始めている。
そう察した弥三郎が必死に説得に入る
(善六)いやいやそれはなりませぬって。
やるぞ八幡屋殿!黙っとれ!八幡屋殿!八幡屋殿!それじゃどうじゃろう?
解死人制。
当時紛争の解決方法の一つである
では同士を寄せるか?ああ。
行くぞ!待て。
待てって!聞かん聞かん!わしの話を…。
一度火がついた争いはそう簡単に消せるものではない。
最初は小さな火種がいつの間にか大きくなり合戦に変貌していく。
いさかいが進んだ段階ではきっかけはどうでもよくなりただ争いに参加する事に意味を見いだしていく。
それゆえに恐ろしいのだ
現在午後7時を回ったところです。
辺りはすっかり暗くなっています。
ご覧のように夜になっても騒ぎはまだ収まりません。
双方に多数の犠牲者が出ているもようです。
このまま暴動が続けば更にけが人が増えるものと思われます。
今回のようにささいなきっかけから大事件に発展した記録が多く残っている
痛むか?多少…うっ!痛みを覚えて初めて知る事もあるものじゃ。
お主も知ったであろう?身を張ったいさかいとはいつもそうなんじゃ。
意義のないもんじゃったとその時に悟るんじゃ。
あの者どもは何も知ろうとせんのじゃ!されど…だからそこよ!
当時人々の名誉意識は身分を問わず非常に高かった。
双方が引き下がらないのはその気位の高さに原因があると弥三郎は理解していた
そして弥三郎は最後の賭けに出た
それがしが?解死人でござるか?さよう。
やるなら今じゃろう。
まだ深みにはまらぬうちにやれば向こうとて手荒なまねはせんじゃろう。
いやこの中人のわしがそんな事はさせんし。
な?向こうの陣へ…
解死人は事件の当事者でなくてもよい
弥三郎はこの慣習を利用し八幡屋には内密に彼を解死人として差し出そうとした
それゆえどちらも意地を通す。
そうやもしれぬが…。
今のままなら…しかし…。
「しかし」ではのうて!な?
彼が必死に争いを止めようとするのには訳があった。
弥三郎は4年前息子を亡くしていた。
村で起きたつぶて合戦の犠牲となったのだ。
「これ以上無益な争いで犠牲者を出したくない」。
彼の強い願いには特別なものがあった
惣吉郎殿!惣吉郎殿!そこにおったか。
帰れ帰れ!聞いてくれ!こちらへ来い。
何するんじゃ!お前は。
ちょっとこちらへ…。
こっちだって出てらあ!ああそうじゃろう。
何をほうけた事を!向こうにしてみたら相手がつぶてを打ってよこすからわしらもじゃって事なんじゃ。
な?いやだからあっちが…。
だからどちらか一方が一旦手を引かん事には…。
うそだろ!うそでないって。
解死人を?さようじゃ。
内々じゃがな。
どこにいるんだよ。
ならばじゃ!さもなくば話にならんであろう!分かった。
承知した。
くれぐれも手は出さぬよう頼むぞ。
一般的には解死人の顔を見た被害者側が納得し事が丸く収まるという習わしとなっていた。
だが相手側の興奮が収まっていない場合解死人は殺されてしまう事もあった。
町人側の八幡屋の所に向かう弥三郎。
だが突如彼は角を曲がり別の方向に走りだす
えっ「ちょっと」って…弥三郎さん?
10分後暗闇の中から弥三郎が戻ってきた。
手に大きな器のようなものを持っている
近隣の知り合いの家から酒を手に入れたらしい
必死に八幡屋を探す
危ないですよ!おおおったおった。
八幡屋殿こちらへ。
弥三郎はうそをついた。
「酒は農民側の惣吉郎からのものだ」と
「これを八幡屋殿の所へ」と。
和平のためなら手段は問わない。
できるだけ早く最小限に争いを食い止める。
弥三郎の目的はただそれだけだった
この事はお主とここにおる者だけとの内義という事にしてもらえぬか。
な?
酒を受け取る八幡屋。
その和平工作がついに実を結ぼうとしていた。
…がその時だった!飛んできた石が弥三郎の頭を直撃した
弥三郎殿しっかりなされ!手を貸せ。
おいやめやめ!大丈夫ですか?
弥三郎は額から出血し脳震とうを起こしながらも幸い大事には至らなかった。
つぶてをやめた八幡屋に応じて惣吉郎側も引き下がった。
弥三郎は流血しながらも双方を行き来し停戦調停のために奔走。
20時間続いた騒乱はついに収束した
ただいまから仲直りの調停が行われるところです。
良かった良かった。
戦国時代近江国の僧侶が書き残した一文である。
人のもめ事を仲裁しようと思ったら仲直りの宴のため酒三升分の出費は覚悟しろという意味である
中人にはなにがしかの役得があったわけではない。
むしろ出費や危険をはらむ事が多かった。
にもかかわらず社会の秩序を保つために目の前にある紛争を解決しようと行動を起こした
それではお気をつけて。
中人制が当時の社会で紛争解決に果たした役割は大きかった。
もし彼らがいなければ歴史が変わったかもしれない。
だがその中人について多くは語られてはいない。
今回偶然に巻き込まれた事件であったがタイムスクープハンターとして価値ある記録になった
以上コードナンバー245638アウトします。
今夜の舞台は目くるめく大人の世界。
2015/07/22(水) 01:30〜02:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「石つぶて 紛争調停人」[字]

「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は室町時代、けんかやトラブルの仲裁役の中人(ちゅうにん)に密着取材をする。

詳細情報
番組内容
今回の取材対象者は中人(ちゅうにん)。室町時代の町なかでは、人々が衝突し、けんかが日常茶飯事であった。「石つぶて」を投げあい、死傷者をだす事件となることが多かった。足利幕府は、こうした事態を解決するために中人制を導入。紛争の仲裁に入り、対立する相手、集団同士を説得し、速やかに解決に導く役目を負っていた。壮絶な石つぶて合戦、果たして中人はどのようにして仲裁していくのか?その一部始終をドキュメント。
出演者
【出演】要潤

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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