「運動中に水をたくさん飲む」の落とし穴、死亡事例も
低ナトリウム血症で、時には命の危険も

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Simon Schoeters/クリエイティブ・コモンズ表示 2.0 一般)

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Simon Schoeters/クリエイティブ・コモンズ表示 2.0 一般

 水やスポーツドリンクによる水分の過剰摂取によって、「運動関連低ナトリウム血症(EAH)」と呼ばれる状態に陥る可能性があるようだ。

 米国バージニア大学ヘルス・システムのマイケル・ロスナー医師が、カナダ・スポーツ医学会の発行するクリニカル・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン誌の2015年7月号で「運動中の水分の過剰摂取に関わる死亡を防ぐ:2015年合意ガイドライン」のタイトルで報告している。

運動関連低ナトリウム血症の危険性

 脱水症状のリスクについてはよく知られているが、アスリートが運動中に水分を取り過ぎることで、運動関連低ナトリウム血症と呼ばれる状態になるのはあまり知られていないかもしれない。水分が不足するのと、過剰になるのでは正反対となる。

 EAHは、身体の塩分レベルが低くなりすぎて、深刻な神経の問題を引き起こす状態を言う。場合によっては命に関わる。

 かつては、マラソンやトライアスロンといった耐久スポーツの参加者で起きたものであるが、現在はより幅広い種類のスポーツでも起きている。新しいガイドラインが作られるようになった。

 研究グループのところでも1981年以来、少なくとも14件のEAHによる死亡を記録している。2014年の夏にはフットボールをしていた若いアスリートが2人死亡したという。

EAHを防ぐ鍵

 「一般的に水をたくさん飲むとパフォーマンスが向上し、脱水を防ぐことができるという間違った考えによって起こっている」と研究グループは注意を促している。軽いレベルの脱水は、パフォーマンスを損なうことはないと説明。知っておいた方が良いという。

 喉の渇きを目安にして、水分を取るようにすると良い。喉が渇いている時に水を飲む場合は低ナトリウムにはならない。そして深刻な脱水症状を起こすこともない。

スポーツドリンクも同じ

 スポーツドリンクを飲む場合にも、水と同じような注意が必要だ。スポーツドリンクには塩分が含まれているとはいえ、水には違いない。

 EAHの最初の症状は、思考がぼんやりとする、吐き気、頭痛などがある。深刻な場合には、発作、精神錯乱、昏睡状態になることもある。コーチや親は、運動中の子どもがEAHかも知れないと思う場合には、水を飲むのを止めて救急を呼ぶべきである。

文献情報

Experts: Overhydration potentially deadly for athletes

http://newsroom.uvahealth.com/about/news-room/archives/experts-overhydration-potentially-deadly-for-athletes

Rosner MH.Preventing Deaths Due to Exercise-Associated Hyponatremia: The 2015 Consensus Guidelines.Clin J Sport Med. 2015;25:301-2.

http://journals.lww.com/cjsportsmed/Fulltext/2015/07000/Preventing_Deaths_Due_to_Exercise_Associated.1.aspx

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