日本の大手企業である三菱マテリアルが、第2次世界大戦中に同社の工場で強制的に働かされた中国人労働者とその家族3765人への「謝罪文」を公開し、1人あたり10万元(約200万円)の賠償金支払いで合意したことが報じられた。三菱マテリアルはかつて強制労働に従事させた米軍捕虜にもすでに謝罪しており、また英国、オランダ、豪州など複数の国の戦争捕虜に対しても謝罪を行う予定であることがと伝えられている。
三菱マテリアルによる今回の決定は、中国国内で日本による強制徴用に関する訴訟が相次ぐ中、事前に謝罪して補償を行うことが、中国国内での活動にプラスになると判断したためと考えられる。また中国との正式な首脳会談を模索する安倍内閣とも事前に話し合いを行ったはずだ。
しかし三菱マテリアルは韓国人徴用問題に対しては徹底して交渉にも補償にも応じようとしない。そのため先月の韓日国交正常化50周年の際、韓日両国の外相が2年ぶりに会談するなど、関係改善に向けて少しずつ動きがみられる中で、この問題が両国における新たな対立の火種になりかねないと心配する声が各方面から上がっている。
韓日両国は1965年の国交正常化の際に請求権協定を取り交わし、国家と個人の間における請求権は全て解決したとみなすことで合意した。その後、韓国政府はこの協定について異議を唱えたことはない。しかも韓国政府は1975年と2008年の2回にわたり、被害者たちに補償金を支払っている。ところが韓国の大法院(最高裁に相当)が12年「たとえ請求権協定があったとしても、個人の請求権までなくなったと見なすことはできない」との判決を下したことを受け、状況は完全に変わった。現在、大法院には三菱など日本企業に対して個人的に賠償を求める3つの裁判が進められている。
韓国の裁判所がこれまで下した判決から考えると、これらの裁判で日本企業が敗訴することも十分予想されるが、それでも企業側が原告への補償を拒否した場合、韓国人の原告団が韓国国内にある日本企業の資産を差し押さえるといった強硬手段に乗り出す可能性が高く、そうなれば両国関係が完全に破綻するのは避けられない。このような状況を事前に防ぐには、韓日両国政府はもちろん、双方の財界など民間を含む様々な方面で解決策を模索しなければならない。ちなみにドイツ企業は第2次大戦後、ナチスによる被害者への補償を行う基金を設置し、これに巨額の寄付を行うという形で戦犯企業との批判から逃れるための努力を続けてきた。このようなケースを考えると、厳しい労働を強制的に行わせた日本企業が、50年前の請求権協定を口実に韓国人被害者問題から顔を背けることは、グローバル企業に対して求められる歴史的、道徳的責務を果たしていないと言わざるを得ない。