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日本人ジャーナリストら4人が不明 シリアで誘拐か、と米有力紙
ニューヨークタイムズに安田純平さんの名前が・・・

佐々木伸 (ささき・しん)  星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

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不気味なISの新戦術

 こうした中で、ISの攻勢が各地で激化してきたのも懸念の的だ。特にISがイラクとシリアの戦闘で化学兵器を使用した疑いが濃厚となり、米国などはこのISの“新兵器”の登場に苦慮している。

 ISが化学兵器を使用したと見られるのは、イラク北部のモスル・ダム近くのクルド人陣地への攻撃(6月21日から22日)とシリア北部のクルド人武装勢力への2回の攻撃(同28日)。イラク北部の攻撃では、化学兵器が爆発せず、塩素ガスの臭気を発する液体の詰まった弾頭が回収された。

 シリアの攻撃では、砲弾が爆発した後、黄色いガスが発生し、十数人が吐き気などを訴えた。この砲弾の残がいから塩素系の化学兵器だったことが明らかになっている。ISが化学兵器を使用したのは初めてで、ISの武器・弾薬工場で製造された初期型の化学兵器と見られているが、精度が上がっていけば、大きな脅威となるのは必至だ。

 ISはまた、テロ攻撃も活発化。ラマダン(断食月)が明けた17日、バグダッド北東30キロのハンバニサドの市場で爆弾車が自爆。店舗50軒など市場をほぼ吹っ飛ばし、130人以上が犠牲になった。その後、トルコでもISの自爆テロで20人が死亡している。

 ISの分派の活動も活発化し、エジプトの「シナイ州」は自称“誘導ミサイル”でエジプト海軍のフリーゲート艦を攻撃、炎上させる映像を公開したが、スエズ運河を航行する外国船舶が標的になる懸念も浮上している。こうしたISの攻勢はイラク政府と米国が最近、イラクの主要都市ラマディの奪回作戦を開始したことに対する陽動作戦という見方が強い。

  
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佐々木伸(ささき・しん)

星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

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