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【おくやみ】

鶴見俊輔さん死去 平和憲法、民主主義が見えてくる国家に

鶴見俊輔さん

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 戦後日本を代表する思想家の鶴見俊輔(つるみしゅんすけ)さんの訃報が伝えられた二十四日、護憲を訴える「九条の会」で行動を共にした作家の大江健三郎さん(80)らが、その遺志を受け継ぐ決意を表明した。

 大江さんは東京都内の自宅で取材に応じた。安全保障関連法案が衆院を通過したことに「民主主義の大きな危機に直面している」と危惧。「この危機に当たって鶴見さんを失うことは大きな痛手。しかし今こそ、平和憲法と民主主義がきちんと見えてくる国家にしなければいけない」と力説した。

 九条の会は二〇〇四年、鶴見さん、大江さんらが呼び掛け人となって設立された。平和運動に尽力した鶴見さんの行動が首尾一貫していたことを振り返った大江さんは「九条の会をつくる上で、最も中心的な働きをした人。それをよく記憶し、守り抜かないといけない」と話した。

 東大大学院教授で九条の会事務局長の小森陽一さん(62)によると、鶴見さんは運動の折々に、病床から代筆によるメッセージを寄せていた。「今年初めの呼び掛け人会議には『出席できないけれど、同じ運動の隊列にいます』と書かれたファクスをもらった。遺志をしっかりと受け継ぎ、戦争法案の廃案に向けた取り組みを強めたい」

 ◇ 

 鶴見俊輔さんは、二十日午後十時五十六分、肺炎のため京都市左京区の病院で死去した。九十三歳。東京都出身。京都市在住。遺族によると、葬儀は行わない。

 米ハーバード大卒。雑誌「思想の科学」を創刊し「言葉のお守り的使用法について」で論壇デビュー。京都大助教授を経て東京工業大助教授に。思想の科学研究会での「転向」研究で知られる。

 六〇年の日米新安保条約採決に抗議して東京工業大を辞め、市民グループ「声なき声の会」を組織。「ベトナムに平和を! 市民連合」にも参加した。七〇年、警官隊の学内導入に反対して同志社大教授を辞めてからは市井の哲学者に徹した。

 

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