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【社会】会社員が世直し小話 内閣「下克上」講談で斬る
自衛隊の海外活動を進める政府と、特定秘密保護法の問題点を分かりやすく伝えたいと、講談教室に通う東京都台東区の会社員、田中伸(しん)さん(48)が小話をつくった。国民と内閣の関係を殿様と旗本にたとえた講談は、主権者たる殿様が、旗本らに愚弄(ぐろう)される物語。さて、その内容とは!? (森川清志) 「昔々、ある所に殿様がいました。心優しく戦嫌いなのはよいのですが…」。和服姿の田中さんが張り扇(おうぎ)で机をパンとたたき、調子良く語り始める。殿様(国民)はよく考えず、他人の言う通りにする癖があると紹介される。 安全保障関連法案が衆院特別委員会で強行採決された十五日、文京区の集会所であった市民の憲法学習会。この日は田中さんがメディア論をテーマに考えを述べた後、約二十人の前で講談を披露した。 殿様は、家老(国会議員)と旗本(内閣)から「ますます厳しくなる国際環境」を訴えられ「必要最小限度の実力を持たなければ」と提案される。 「絶対に他国へ攻め入らないのだな」と誓わせて剣士の座頭市(自衛隊)を選ぶ。座頭市は目が見えず、敵が一メートル内に来た時だけ刀を抜くからだ。 ところが殿様は、座頭市が目を開けて馬で遠出し、他国で狼藉(ろうぜき)を働いているとの噂(うわさ)を聞く。 旗本らに報告させると、内容が書かれた巻紙は墨塗りばかりでよく分からない。忍者(メディア)に調べさせると、旗本らが捕まえてしまう。 殿様は怒ったが、旗本らは「特定秘密探知罪の未遂に当たります」。さらに、忍者をそそのかしたとして殿様も牢(ろう)に。 参加者からは、座頭市の登場にクスッと笑いが漏れ、「皮肉が効いて面白かった」「座頭市は今、米軍と訓練しているよね」などの感想が出た。 田中さんは熊本県出身で、東京大法学部を卒業して会社勤めをしている。五年前、口下手を直したいと講談師の神田香織さんの教室に入った。社会問題や戦争を扱う神田さんの姿勢や、場面が見えるような話し方に魅せられ、練習にのめり込んだ。講談師としてはまだ見習い中だ。 披露は今回で二回目。殿様を皮肉たっぷりに描いたのは、刺激的な内容で興味を引きたいという狙いだけでなく、こんなメッセージを込めたからだ。 「こんな将来は杞憂(きゆう)に終わってほしい。ぼさっとしていたら下克上されちゃうよ」 <講談> 張り扇(おうぎ)で机の釈台(しゃくだい)をパンとたたき、調子良く物語を語る芸。荒唐無稽な話を本当の出来事のように語る巧みさから、「見てきたようなうそをつき」「扇でうそをたたきだし」との言葉もある。 PR情報
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