遠藤五輪相、新国立「安かろう悪かろうは困る」…インタビュー
2020年東京五輪開幕まで24日であと5年となった。6月25日に五輪相に就任した遠藤利明衆院議員(65)がスポーツ報知のインタビューに応じ、整備計画が白紙撤回されたメイン会場の新国立競技場について「丁寧に議論を進めていく」との姿勢を示し、施設の持つ価値を再考すべきと語った。また、東京五輪での金メダルを17個以上、総メダル数を39個以上といずれも最多記録更新となる目標を掲げた。(久保 阿礼)
―メイン会場となる新国立の整備計画が白紙撤回されました。巨額の総工費には大きな批判がありましたが?
「コストの抑制も大事ですが、一方で、安かろう悪かろう、では困るとも思います」
―国立競技場の価値を再考する、と。
「そうです。競技場としての機能性はもちろん、日本の技術、文化、芸術的要素をどれだけ加えられるかが重要。防災拠点としての役割もあります。こうした価値観は、建設費とは別に考慮しても良いのではないでしょうか」
―「負の遺産」としないため、五輪後の活用方法も重要です。陸上兼サッカーではなく、高い収益の見込める「球技専用にすべき」との声がありますが?
「後利用を考えると、球技専用がベストでしょう。ですが、陸上トラックを残したいとの意見もあります。日本には『ナショナル・スタジアムは必要ない』という意見がありますが、野球なら『甲子園』、ラグビーなら『秩父宮』とそれぞれ『聖地』があります。さまざまな役割を踏まえ、総工費がいくらになるのかを整理して議論します」
―19年秋のラグビーW杯での新国立開催を断念しました。ラグビーへの思い入れが強い組織委の森喜朗会長にはどのように?
「大臣として覚悟を決め、新国立開催を断念すると伝えました。森会長はラグビーW杯にかける思いは相当あった。悔しい思いをされたと思う」
―五輪相も大学、社会人とラガーマンですね。
「ラグビーでは、プロップ(フォワード)でした。五輪相は調整役ですので、フルバックかもしれませんが、先頭で突っ込みます。国民、政府、東京都とのスクラムを組んで前に進みます」
―1964年以来、56年ぶり2回目の開催はアジアで初です。
「ブエノスアイレスで迎えた招致決定の瞬間、『万歳』と叫びました。隣にいた田中理恵さん(体操)、小谷実可子さん(シンクロナイズド・スイミング)と喜び合い、一瞬逡巡(しゅんじゅん)したけど、山下泰裕さん(柔道)ともハグをした(笑い)。帰国した時、『日本が元気になった』『夢ができた』と言われました。改めて五輪の持つ力を実感したし、だからこそ、大成功させたい。東京五輪を次の時代を作るきっかけにしたいと思います」
―あと5年か、まだ5年。どちらですか?
「あと5年、ですね。大臣に就任してみて、準備状況を聞くと、時間がないという印象。特にセキュリティー関係の整備は、技術的に高度なものですから」
―インフラ整備はもちろん、主役となる選手の支援も必要です。
「日本人選手にメダルがないとなると、寂しいもの。ハード面とソフト面、両輪で考えます」
―メダルの期待は?
「ロンドン五輪の金メダルは英国が29個で、米国(46個)、中国(38個)に次いで3位。人口規模からみても金メダル17個、総メダル39個以上で最多記録を更新したい」
―具体的には?
「サッカー、バレーボールなど団体競技でメダルを取るとインパクトは大きい。個人種目では柔道、水泳、レスリングのほか射撃やセーリングなどを集中的に強化すると良い結果が出るかもしれません」
―前回の東京五輪では、聖火ランナーの伴走者に選ばれたそうですね。中学校で足の速い順に選ばれた。五輪とは縁がありますね。
「2~3週間前に盲腸の手術を受けることになり、断念しました。(地元の山形県上山市の国道を走る予定だったが)悔しかったね。5年後も五輪相でいられるかは分かりませんが、何らかの形で携わりたいな、と思っています」
◆遠藤 利明(えんどう・としあき)1950年1月17日、山形県上山市生まれ。65歳。中大卒。上山市長を務めた叔父の影響を受け、政界を志す。山形県議2期、93年衆院選で初当選。文科副大臣などを経て6月25日に五輪相就任。五輪相は64年東京、72年札幌冬季両五輪で置かれており、前回の東京では、五輪後に首相となった佐藤栄作氏らが就任した。