東芝歴代3社長辞任 水増し額は当初の「新国立」予定費に匹敵
東芝は21日午後5時から会見し、不適切会計問題で、1518億円の利益の水増しを指摘した第三者委員会(委員長・上田広一元東京高検検事長)の調査報告書の提出を受け、田中久雄社長(64)が辞任を表明した。田中社長に加えて、西田厚聡相談役(71)、佐々木則夫副会長(66)の歴代3社長が、今回の問題の責任をとって辞任する。294ページにわたる報告書は歴代のトップの関与のもとで組織的な利益水増しが行われていたことを指摘している。
水増し額は、新国立競技場の当初の建設予定費だった1625億円に匹敵するほどの巨額だ。経営幹部らの責任の明確化や再発防止策の策定を求めた報告書を受け、田中社長は「今回の事態を招いたことを真摯に受け止め、改めて深くお詫び申し上げます。第三者委の指摘を厳粛に受け止め、本日をもって取締役、代表執行役を辞任します。第三者委員会の調査結果及び提言につき十分に分析、検討のうえ、その内容を経営に反映し、再発防止策等を検討してまいります」とした。
後任の社長は、暫定措置として室町正志会長(65)が兼任する。
報告書は、利益の水増しが「組織的に実行され、経営判断して行われた」と認定。歴代の社長は各事業部門に対して「チャレンジ」と称する過剰な業績改善を要求し「上司に逆らえない」とする企業風土のトップからの強い圧力の下で、各事業部門が利益の水増しに走った実態を明らかにしている。経営トップはその事実を認識していながら、中止や是正を指示しなかったことで、水増し額は増えていった。
再発防止策は、直接的な原因の除去として「経営陣の責任の自覚」「関与者の責任の明確化」「経営トップの意識改革」などに加えて実現困難な「チャレンジ」の廃止などを挙げている。また、間接的な原因の除去としては「強力な内部統制部門の新設」「取締役会による内藤製の強化」「社外取締役の増員及び構成員の見直し」「適切な人事ローテーション」などを挙げている。
第三者委は経営陣の責任について「取締役や執行役がそれぞれの関与の程度や、果たした役割に応じた責任を自覚することが求められるとともに、人事上の措置が適切に行われることが必要」などと指摘。幹部職員に対しても、懲戒処分を含む人事上の措置をとるよう要求した。
報告書は、結びで「東芝は、創業140周年の歴史をもち、我が国の誇るリーディングカンパニーのひとつとされた会社である。にもかかわらず、極めて多額に亘る不適切な会計処理の継続的な実行が今般明らかになったことは、誠に驚きであるとともに、誠に残念なことと言わざるを得ない」などとしている。