いったん予算を絞ったように見せても、様々な「抜け道」を通じて結局は膨らみ、財政を悪化させていく。

 国の予算編成は、その繰り返しだったと言っても過言ではない。これを断ち切らなければ、財政再建など不可能だ。

 まずは、来年度予算である。

 各省庁が要求を出す際の基準がきのうの閣議で了解された。デフレ脱却と経済再生を目指す安倍政権は今回も、あらかじめ歳出に上限を設けることを見送った。

 重視するのは「特別枠」だ。

 公共事業や教育など、政策判断で増減させやすい「裁量的経費」について、まず今年度の予算から1割減らすことを関係省庁に求める。省庁は9割相当額の3割、つまり今年度実績の27%まで、特別枠分として要求できる。

 テーマは、地方創生やIT(情報技術)・ロボットの開発と活用など、政権が重視する課題の推進だ。役所間で知恵を競い、縦割りを超えて配分のメリハリをつけるのが狙いで、各省庁がめいっぱい要求を出せば4兆円近くになる。

 特別枠という手法は、かれこれ10年以上続いている。一定の効果が認められる一方で、通常の予算が特別枠に看板を掛けかえて復活した例も数多い。

 有効な要求を見極め、総額も絞って財政再建につなげることが「霞が関内」、つまり要求する役所と査定する財務省の作業だけでやれるだろうか。このところ税収が上向きなのを受けて、来年の参院選をにらむ与党には、さっそく予算増を求める動きが目立ってきている。

 特別枠を生かすなら、役所からのすべての要求をわかりやすく一覧にまとめ、国民に示してはどうだろう。

 新国立競技場の建設問題では、国民の怒りが計画を白紙に戻した。負担を強いられる納税者の「常識感覚」を生かさない手はない。

 忘れてならないのが、今年度の補正予算の問題である。

 中国など海外経済の元気のなさを受けて、国内景気もいま一つ力強さを欠く。安全保障法制への対応などから安倍政権の支持率が下がっているだけに、与党から「このままでは参院選を戦えない」と補正を求める声が高まりはしないか、心配だ。

 景気が上向いて税収が増えると、年度予算で気前よく配る。景気が悪くなり始めたら補正予算を組んでてこ入れする。

 そんな繰り返しで、国の借金は1千兆円を超えた。もう、打ち止めにする時だ。