中国の製造業購買担当者指数の数字が過去15か月の最低を記録しました。

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これを受けて中国政府は人民元の一日の変動幅の拡大を発表しました。これは人民元切下げの予兆です。

およそ景気テコ入れ策で、通貨安ほど即効性のある方策は他にありません。

一例として2009年にギリシャ危機が発覚した際、EUはドイツを中心にスクラムを組み、まず為替を思いっきりユーロ安へもってゆくことでドイツの輸出にオーバードライブをかけ、苦境を中央突破しました。

同じことは日本にも言えます。アベノミクスとは、突き詰めて言えば、極端な円安の演出により景気を浮揚し、デフレから脱却する方策に他なりません。

このように、通貨安に導くことは、あたかも戦場で負傷した兵士にモルヒネ注射するように、一番早く、ラクになれる方法なのです。

中国の場合、これまで人民元を米ドルに緩くリンクしてきました。このところのドル高は、したがって人民元高を意味しました。

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中国人民銀行がいくら利下げしたって、肝心の人民元がこれから利上げを控えた米ドルにリンクされているのでは、いつまでたっても景気浮揚効果は出ないのです。

今日、このニュースを受けてインドネシア・ルピア、韓国ウォン、タイ・バーツ、オーストラリア・ドルなどが下落しました。その理由は「アジア通貨危機の亡霊」に市場関係者がおののいたためです。

中国は過去に何度も人民元の大幅切下げを行っており、1990年代に入ってからの切下げは、それまでブームに沸いていたタイ経済の活力を殺ぎました。これが遠因となってタイのバーツ危機が起き、それはアジア全域を包む通貨危機へと発展したのです。

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今日、アジア通貨市場で起こったことは、喩えて言えばホラー映画の予告編を見てオシッコちびってしまったような状態です。本当の恐怖は、これからです。