「FT買収競争」に敗れた会社の次の一手とは?

独アクセル・シュプリンガーの戦略を読む

アクセル・シュプリンガー社の本社ビル(同社ウェブサイトより)

日本時間の7月23日深夜に発表された、日本経済新聞社による英フィナンシャル・タイムズ(FT)の買収話は、世界のメディア関係者の度肝を抜いた。

最も驚いたのは、日経よりはるかに先にFT獲得に動き、交渉最終局面まで有力視されていたドイツの新聞最大手アクセル・シュプリンガー社だったかもしれない。日本では知名度が低いが、欧州、特にドイツでは知らない人はいない。一体、どんな企業で、なぜFTに目を向けたのか。

「最後の10分」で勝負が決まった

マティアス・デップナーCEO(同社ウェブサイトより)

FTの報道によれば、勝負が決まったのは「最後の10分間」だった。アクセル・シュプリンガー社はカリスマトップとして知られるマティアス・デップナーCEOの下、昨年からFT取得に向けて動いていた。当初はFTグループの少数株主になるつもりだったが、ここ数週間はグループ全体の買収話に発展。最近では、買収に食指を動かしていることを認めていた。

最後の10分でFTをモノにした日本経済新聞社の喜多恒雄会長(撮影:今井康一)

23日の午前中(英国時間)の時点でも、同社は交渉をまとめるつもりでFTグループ側と話を進めていたが、日経側が「すべてを現金払い」というオファーを提案。アクセル・シュプリンガー社には対応できない条件となったことで、同社は諦めざるを得なくなった。

FTグループの親会社である英教育出版社ピアソンと日経が買収の合意に達したのはその日の午後。15時13分、ピアソンは買収を発表した。

次ページドイツ新聞市場の「巨人」
関連記事
ディスカッション
コメント
Topic Board トピックボード
Trend Library トレンドライブラリー
Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • いいね!
トレンドウォッチ
陳謝の戦略

トヨタ自動車、東芝…相次ぐ不祥事で企業の陳謝会見が続いたのは偶然ではない。江上剛氏ほか危機管理のプロがその戦略を説く。

Video時速1200キロ「ハイパー・ループ」実験線の衝
ページトップへ