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 安倍政権が集団的自衛権の行使容認に向けた姿勢を強めるなか、朝日新聞社は憲法に関する全国郵送世論調査を行い、有権者の意識を探った。それによると、集団的自衛権について「行使できない立場を維持する」が昨年の調査の56%から63%に増え、「行使できるようにする」の29%を大きく上回った。憲法9条を「変えない方がよい」も増えるなど、平和志向がのきなみ高まっている。

 安倍内閣支持層や自民支持層でも「行使できない立場を維持する」が5割強で多数を占めている。

 安倍晋三首相は政府による憲法解釈の変更で行使容認に踏み切ろうとしているが、行使容認層でも「憲法を変えなければならない」の56%が「政府の解釈を変更するだけでよい」の40%より多かった。首相に同意する人は回答者全体で12%しかいないことになる。

 また行使容認層に、行使できるようにするためには近隣諸国の理解を得ることが必要かと聞いた質問では、「必要だ」が49%、「必要ではない」が46%と見方が割れた。

 ただ、朝日新聞社が今回、現地の調査会社を通じて中国と韓国でも面接世論調査を実施すると、日本の集団的自衛権について「行使できない立場を維持する方がよい」と答えた人が中国で95%、韓国でも85%と圧倒的だった。安倍政権が行使容認に踏み切る場合、中韓両政府だけでなく、両国民からも大きな反発を受けることが予想される。

 一方、国内では憲法9条を「変えない方がよい」も昨年の52%から64%に増え、「変える方がよい」29%との差を広げた。武器輸出の拡大に反対が71%→77%、非核三原則を「維持すべきだ」も77%→82%。自衛隊の国防軍化に反対も62%→68%と増えた。

 これらの項目は昨年3~4月の調査と方法も質問文も同じだが、有権者が1年足らずの間に軍事力強化に対する不安を強めている様子がうかがえる。

 改憲の是非についても、今の憲法を「変える必要はない」の50%が「変える必要がある」の44%を上回った。質問文や調査方法が異なり単純に比較できないが、朝日新聞社の調査で改憲反対が多数を占めるのは1986年の調査までで、次に改憲是非を聞いた97年以降は賛成が多かった。

 調査は日本と中国で2~3月、韓国で2月に行い、中国調査は主要5都市で実施した。有効回答は日本2045件、中国1千人、韓国1009人。