時代の正体〈143〉採択の夏(上)教科書はいま 首相ブレーンの自信

  • 0001
    記事保存
    保存する
 2016年度から公立中学校で使われる教科書の採択が22日から、県内市町村教育委員会で始まる。焦点は、歴史認識や国家観をめぐって論議を呼んでいる育鵬社の歴史・公民教科書が採択されるかどうかだ。安倍晋三政権の影がちらつく教科書の現状を追った。


■激変
 「中国、韓国側から批判の声が、今回は聞こえてこない」。育鵬社教科書作成を支援する日本教育再生機構理事長の八木秀次・麗澤大教授(53)=憲法学=は両国の反応の変化を肌で感じている。

 「竹島(島根県)は日本固有の領土で、韓国側が不法占拠している」-。前回採択があった4年前、同社公民教科書に政府見解を記し、韓国側から抗議を受けた。全国でも「日韓の友好関係を壊していいものか」という理由で、採択を見送った教育委員会があったという。

 4年前との違いは何なのか。八木教授は、各社教科書の劇的な変化を挙げる。「すべての教科書に領土問題が記述されるようになった。韓国側も全教科書を採択するなとはいえないのだろう」

 発端は、領土教育を重視する安倍政権による教科書ルールの変更だった。14年1月、教科書作成の指針となる学習指導要領解説書(社会科地理・歴史・公民)を改定し、沖縄県・尖閣諸島と竹島を地理・公民で「固有の領土」と明記。竹島は韓国に不法占拠され(地理)、尖閣には領土問題が存在しない(地理・公民)との政府見解が盛り込まれた。15年4月、改定を反映した教科書検定で社会科全教科書に領土問題が記され、前回から一気に増えた。

 八木教授は「自民党への要望が実った」と明かす。「国民教育の一環として日本の領土の範囲や歴史的経緯を教える必要がある」として、ルール変更を促していたという。

COMMENTS

facebook コメントの表示/非表示

PR