安保関連法案:首相が使ったイラストパネルに問題あり?
毎日新聞 2015年07月03日 23時07分(最終更新 07月04日 06時43分)
「昨年7月の記者会見のパネルは間違いだったのではないか」。民主党の後藤祐一氏は3日の衆院平和安全法制特別委員会で、安倍晋三首相が集団的自衛権の行使を容認した閣議決定後の記者会見で使った「赤ちゃんを抱いた母親」のイラスト入りパネルを取り上げ、そう指摘した。
パネルは集団的自衛権の必要性を訴えるため、首相の肝いりでつくられた。日本周辺で武力衝突が起き▽避難のため女性や乳児が米輸送艦に乗艦▽輸送艦への攻撃の恐れがある▽米国が日本に輸送艦の防護を要請−−との様子が描かれており、首相は「(輸送艦への攻撃は)わが国自身への攻撃ではないが、日本人の命を守るため自衛隊が米国の船を守る。それをできるようにするのが今回の閣議決定だ」と力説した。
ところが、政府は特別委で、輸送艦への攻撃の恐れがあるだけでは日本は集団的自衛権を行使できないと説明している。
横畠裕介内閣法制局長官は3日の委員会で、パネルについて「攻撃国の言動により、わが国にも武力攻撃が行われかねない状況だということが前提の事例だ」と述べ、集団的自衛権行使の条件となる新3要件が満たされていることが前提の事例だとした。
こうした前提がパネルに明示されていなかった点を批判する後藤氏に対し、首相は「パネルに全部書き込んだら(絵が)見えなくなってしまう」「ミスリードでも何でもない」などと反論。そのうえで、攻撃国が▽ミサイル▽工作員を運ぶ潜水艇▽特殊作戦部隊−−などを保有し、「わが国に武力攻撃が行われかねない」と認定でき、新3要件に合致すれば、日本人を輸送中の米艦防護は可能になるとの考えを示した。【青木純】