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第6話:調理と調薬
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ログイン11回目。
今日は狩りに行かず、生産系スキルを使おうと決めた。
薬草がかなり集まったのと、そろそろ料理もしたいと思ったからだ。
狩りで得たアイテム、毛皮や牙、肉は、そのまま狩猟ギルドへ売り、生け捕りにしたウサギはペットショップに売り払っている。それで現金収入を得ていた。
薬草類は売ろうかと思っていたが、自分で作るのも面白そうだと判断し、残しておいたのだ。その結果、リュックサックから溢れ、別に購入した麻袋に詰め直したものの、そちらも一杯になってしまった。これ以上麻袋を増やすと持ち歩くのは無理なので、ここで消費しようというわけだ。
スキルを修得するにはスキルポイントを消費しなきゃならない。これはスキルレベルが10を越えると1ポイント入手できる。次は20に到達するとまたもらえる。つまり10レベルごとに1ポイントずつ加算されていく。今の俺は【手技】がレベル10を越えているので未消費のSPが1。本当なら【気配察知】を修得しようと思ってたが、予定を変更して【調薬】を修得することにした。ポーション等の薬を作るスキルだ。
調理セットは持っているので、まずは調薬用の道具を買う。
次に市場へと行き、調味料も含めて料理用の材料の調達。狩った肉を残しておけばよかったのかもしれないが、放っておけば腐るので全て売り払っていたのだ。
あと食器も買った。割れると困るので木製の物を選んだ。
それら準備を済ませて適当な宿屋へ入り、部屋を借りる。外でやってもよかったのかもしれないが、人の目もある。変なのに絡まれてはかなわないので安全策を採った。
では、まず料理から始めよう。
調理セットを取り出してテーブルの上に置く。携帯コンロに火を入れて、フライパンを火にかけた。油を少しだけ落として広げ、熱くなるのを待つ。
その間に市場で買ってきた卵を3つ取り出して、2つはボウル代わりのスープ木皿に割って落とした。
フライパンが熱くなったので、残った1個を割ってフライパンに落とす。白身が固まってきたら周囲にちょっとだけ水袋から水を注ぎ、蓋をする。少しして蓋を取り、完成した半熟目玉焼きを木皿へと移した。
うん、一応うまくできた。何の変哲もない半熟目玉焼きの完成だ。
するとウィンドウメッセージが浮き上がった。
『この料理をレシピ登録しますか?』
迷わず『はい』を選択すると、メニューが開いてレシピの項目が新たに生まれた。それを確認してみると、目玉焼きのレシピが確かにある。
これが、このゲームでの【調理】スキルだ。まずは自力で料理を作る。すると、できた料理をレシピ登録できるようになる。これで次からは直接調理しなくても、メニューを操作するだけで料理を作ることが可能になる。
あと、単にレシピを入手して登録し、自動で作る簡易調理という方法もある。こっちの方が手間は掛からない。ただし、料理に掛かる時間は実際に作るのと変わらず、当然材料を全て準備しておかないと作成は不可能。
更に、料理には1から10までの星評価がつくのだが、簡易調理をすると、どれだけスキルが高くても評価の上限が5になってしまうそうだ。それに簡易調理は実際に調理するより成長率がかなり落ちるらしい。検証によると、簡易調理によるスキル成長率は実際の調理によるそれの10分の1だとか。スキルを上げるなら実際に調理した方が格段に効率がいいのだ。時間的な意味もそうだが、食材の調達にかかる費用についても。
それに簡易調理の場合、レシピの星評価も関係してくる。例えば3つ星のレシピがあったとする。これを簡易調理すると上限は3つ星のままなのだとか。レシピ準拠なのである。これは【調理】スキルに関係なくそうなるらしい。ただ、そのレシピのとおりに実際に調理すれば、スキルレベルに応じて出来もよくなる。だから、レシピを入手した人は、まずは自分で作るそうだ。そしてその結果がレシピよりも高評価になれば上書きしてしまうのである。こうすれば上書き後の評価に合わせた簡易調理ができるようになる。上限は変わらないけど。
今、俺が作った目玉焼きは4つ星。つまりは普通よりちょっとだけマシなレベル。それをレシピ登録したので、いつでも評価4の目玉焼きが作れることになったわけだ。今の俺の技量では簡易調理による料理の出来のデメリットは関係ないが、成長率のことを考えると実際に作るのがよさそうだ。
そして、まだ俺には縁のない話になるが、星が7つ以上になるとステータス一時上昇の効果がつくようになる。しかし簡易調理では上限が5となるため、追加効果は得られない。付加効果を狙うなら手作りするしかないのだ。
そういうわけで追加効果付の料理の大量生産はなかなかに難しいようだ。そういえば俺が贔屓にしているティオクリ鶏の屋台は6つ星だ。あれが7つ星になったらおやっさん大繁盛するだろうなぁ……あ、今日は食ってなかった。後で食いに行こう。
作った目玉焼きに胡椒を軽く振る。目玉焼きには胡椒と醤油がマイジャスティスなのだが、今のところこの世界には醤油はないはずだ。市場には売っていなかった。なのでいずれ【食材加工】で作ってみようとは思っている。
目玉焼きをひとまず脇によけて、次の料理に取りかかることにする。
タマネギの皮を剥いて半分に切り、それをみじん切りに。もう半分は千切りにする。フライパンにまた少し油を落として馴染ませ、ボウルに落としておいた卵へみじん切りのタマネギを投入し、塩を少々加えてよくかき混ぜる。
それをフライパンへと少しずつ流し込む。フライパン一杯に広がったら入れるのを止めて、淵から少しずつ固まった卵を手前に丸めていく。全て丸め終えたら残りの溶き卵も投入し、同じ作業を繰り返す。
「完成~」
タマネギ入りの卵焼きの完成だ。評価は4つ星。これもレシピに落とし込んだ。
さて、次の料理を……
手の込んだものを作るのは次にしようということで、今回作ったのは、
・目玉焼き
・タマネギ入り卵焼き
・ウルフ肉の野菜炒め
・ウサギ肉の胡椒焼き
の4品。ウルフについてはwiki先生が食用犬について触れていたのでそこを参考にした。スープ、姿焼き、シチュー等あるようだったが、その中に肉炒めがあったので、勝手にイメージを膨らませて野菜と一緒に炒めた。
しかしこの世界に存在するレシピってどのくらいあるんだろうか。また大書庫に行ってみるかな。料理本とか普通にありそうだし。
さて、一通り食べ終えたので、次はポーションを作ってみることにする。
こちらは料理と違い、レシピを入手してもいきなり簡易作成することは不可能で、まずは一度きっちり手順を踏んで作る必要がある。とは言え、作り方は難しくない。単純なポーションならば傷癒草を煮詰めるだけでいいらしい。
調薬の初心者セットから乳鉢、乳棒、鍋を取り出し、鍋には水を入れて火にかける。
麻袋から適当に傷癒草を出して、小さくちぎって乳鉢に入れ、乳棒で潰していく。葉のまま煮詰めてもいいらしいが、こうした方がよくダシが出る――じゃない、薬効成分が出るような気がするので手間を掛けてみる。ちなみに根拠は全くない。
潰した傷癒草を逐次、煮立った鍋に入れていく。傷癒草の葉は緑色だが、煮詰めると青色になった。これは市販のポーションと同じ色だ。
水に対してどの程度の傷癒草を入れればいいのかは分からないので、市販品と同じ色に近づくように傷癒草を追加していく。
やがて同じくらいの濃さになったので投入を止めて、火も止めた。
指をちょっとだけつけて舐めてみる。味は市販のポーションと同じだ。薬なので味は期待してはいけない。多分うまくいっているとは思うのだが……
冷めるのを待つ間に器の準備をしよう。使うのはポーションの空き瓶だ。
ちなみに、ポーション用の瓶は店で売っている。俺が使うのは『使用済のポーションの瓶』だが。
GAOにおけるポーションの使用法は、飲むかぶっ掛けるかのどちらかだ。飲むのが一般的であるが、対象に飲ませる余裕がない緊急時は直接ポーションを浴びせる。当然、飲む方が効果は高いというか、浴びると効果が落ちてしまう。
そしてポーションを使用すると、瓶が残る。普通のプレイヤーはこれをその場に捨てていく。空き瓶1つとっても、バッグやアイテムボックスの容量を削るためだ。使い道がないと判断して捨てている人もいるだろう。
しかし、これは再利用可能であったりする。なにせ売っている瓶と物は同じなのだから。綺麗に洗ってやれば何ら問題ないのである。資源の無駄遣いは勿体ない。リサイクル万歳だ。
これが工房を構えている調薬師達なら纏まった量の瓶を注文して揃えるのだろうが、金銭的余裕の少ない初心者や片手間でやっている人には、こちらの方が便利なこともあるのだ。他人が一度口をつけた物なんて綺麗に洗っていても嫌だ、という意識さえなければ、だが。あとこのリサイクルは特に俺が考えたわけではなく、β時代からの伝統らしいので念のため。
さて、そろそろいいか。空き瓶を直接鍋に沈めて中身を瓶に移し、これまたフィールドでリサイクルしたコルクで栓をする。これで1本完成だ。
出来としては星3つ。市販のポーションと全く同じ出来となった。レシピ登録を済ませ、残ったものを瓶に詰めていく……詰めるの、これだと効率悪いな。手も汚れるし。今度、漏斗みたいなのを探してみよう。
これで自分が使うには十分なポーションが確保できそうだ。残りの傷癒草もポーションにしてしまおうか……あ、瓶が足りない。空き瓶全部使っても、薬草はかなりの数が余るな……まぁ、作れるだけ作っておこう。無駄に作らないように注意しながら。
調薬は料理と違い、レシピ化後の簡易作成でも評価上限はなかったりする。その代わり、品質保証はされずに酷い出来になることがあるそうな。成長率についても【調理】と一緒で、簡易作成だと著しく低下する。
調理にしても調薬にしても、手作業が一番確実ということなのかもしれない。
トリカブトは現在の自分の手に余るので保留。毒消草の方はというと、解毒ポーションが該当する毒ごとに作られるものであるため、現状では手を出せない。毒を持った動物やモンスターを見つけたら、素材が出るかどうか狩ってみよう。
あとポーションのレシピも図書館にある気がするな。これも後で探してみよう。
一通り作業を終えたので、大書庫へ足を運ぶことにした。料理と薬のレシピを探してみるためだ。全部をいきなり作れるようになるとは思っていないが、知識として知っておくだけでも今後の参考にはなるだろう。
賑やかな通りを抜けて、昨日訪れた大書庫へ足を踏み入れる。
「ん……?」
異変に気付いたのはすぐだった。明らかに昨日とは違う。何が違うのかというと、冒険者風――つまり、プレイヤー達の数だ。昨日は俺とルークしかいなかったというのに、10人以上がテーブル付近に固まっている。位置的に、法律関係の本があった場所だ。
どうしてこうなったのかは見当がついた。
「今日はお客さんが多いね?」
料金を払いながら司書のお姉さんに言うと、
「ええ、ああやって皆さん、法律の本を読んでいるみたいなんですが、何があったんでしょうね? こんなこと初めてです。お客様、何かなさいましたか?」
どうも困惑気味だ。
原因は多分、ルークがスレを立てたからだと思う。他にプレイヤーが法律に興味を持つ切っ掛けがあるとは思えない。いや、何かイベントでもあったって可能性はあるけど。
心当たりはない、と誤魔化して、料理と薬物関係の資料の場所を聞く。
そちらに向かいながら、法律本を読んでる連中の方に聞き耳を立てると、法律があることに驚きを隠せないようだった。刑法だけじゃなく、別の法律本の内容らしき言葉も聞こえる。
ルークの迅速な行動によって、うまく情報が広まっているようだ。さすが有名人は違う。ルークのギルドを検索してみたが、古参の中ではかなり有名な存在であるらしかった。名前の威力は大きいのだなと強く感じる。俺がスレ立てをしていたとしても、ここまで広がっていたかは正直疑問だ。
誰がやってもいいのだが、より効果の高い方がいいに決まっている。ルークとの出会いがいい方向に働いたようだ。とは言え、彼なら俺と出会っていなくても、いずれはここに来たかもしれないが。
まあそれは置いておこう。当分は推移を見守るしかないのだから。
意識を自身の目的に切り替える。辿り着いた本棚には料理のレシピ本がたくさん納められていた。1冊を手にとってページをめくると、この世界の家庭料理らしいもののレシピが並んでいる。リアルに通じる料理も結構あるな。
いきなり異世界料理に挑戦するのも何なので、まずはリアルのレシピを持ち込んでスキルを磨こう。それからこちらの料理にチャレンジしてみることにする。
そうなると、やることは1つだ。
俺は受付まで戻って、ペンとインク、それから無地の本を3冊ほど購入し、本棚へ戻る。
それからレシピ本を持ってテーブルに着き、写本の製作を始めた。
+注意+
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