感電事故の「電気柵」年1万キロ、爆発的に普及…届け出不要、実態つかみ切れず
産経新聞 7月23日(木)9時0分配信
7人もの死傷者を出した静岡県西伊豆町の感電事故で、にわかに危険性がクローズアップされた獣害対策用の電気柵。全国の山間部でシカやイノシシが急増していることを受け、電気柵を含む侵入防止柵は年に延長約1万キロという、すさまじいペースで普及している。市販の柵は安全第一の設計となっているが、今回のように家庭用電源を不適切に使えば、感電のリスクは大きい。設置にあたって届け出がいらないため、各自治体も使用状況をつかみ切れていないのが実情だ。
■農作物守るため
「毎晩のようにイノシシが5、6匹の群れで現れる。電気柵がなければ成り立たない」
奈良市郊外の田原地区の農家、岡井稲郎さん(79)はこう話す。10年ほど前からイノシシやイノブタの食害に悩まされ、今では地区内約200の田畑のほぼすべてに、電気柵がはりめぐらされている。
兵庫県川西市の山間部で農業を営む三宅保夫さん(72)は約500平方メートルの野菜畑に、近くのホームセンターで購入した電気柵をつけた。乾電池のバッテリーから断続的に電流が流れるタイプ。「昔に比べて山林は荒れ、獣が食べ物を求めて里に下りてくる。農作物を守るには、対策が欠かせない」と必要性を強調した。
■日本の“野生化”
環境省の推計によると、農作物を荒らすニホンジカは平成24年度までの10年間で100万頭以上、イノシシも20万頭以上増えた。全国の中山間地域が過疎化し、耕作放棄地が多くなったことが背景にある。
このため、農林水産省は被害防止のための交付金制度を20年度からスタート。毎年度100億円近い予算を各都道府県に分配している。交付金をもとに設けられた防止柵の総延長は全国で4万〜5万キロに達し、最近は年に1万キロのペースで延びている。
加えて自治体ごとの助成制度もある。神戸市は補助金を出して電気柵の設置を奨励。市によると、電気柵の設置費用は1メートルあたり124円で、金網の1150円に比べてはるかに安い。1人で取り付けられる手軽さも普及を後押ししているという。
このほかホームセンターやネットでも100メートル数万円程度で販売されており、個人で購入するのに届け出や登録は不要。農水省の担当者は「電気柵がどこで使われているか、市町村でも把握できていないはずだ」と話す。
■各地で緊急点検
今回の事故を受けて、各自治体は電気柵の緊急点検に乗り出した。滋賀県22日、大津市北部の水田に設置された電気柵の電流量や漏電遮断器の有無を確認した。地元管理組合の石田功一組合長(77)は「通常は柵に触れてもピリっと感じる程度の電流しか流れていない。どんな状況であれだけの電流が流れたのか」と静岡の事故に首をかしげた。
大阪府、和歌山県、京都府もそれぞれ、各市町村や農協などに安全対策の徹底を呼びかけた。
このうち京都府は府の補助事業として設置した900カ所(総延長955キロ)の電気柵について、今月28日までに安全対策の調査を完了させる予定だ。府森林保全課の川戸修一課長は「夏休みで田舎に里帰りする家族も増える。点検を徹底し、注意喚起を行っていきたい」とした。
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