(2015年7月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
効率的市場を信じる理論家のうち、時代錯誤な人たちにとっては、バブルは存在しない。半ば新しい考え方をする人たちにとっては、バブルは存在するが、アラン・グリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長が1990年代の終わりに主張したように、バブルは事後にしか認識できない。
バブルを事前に察知するには、何十万人もの情報に通じた投資家がひどい思い違いをしているとの判断が必要だ――。同議長はこう断言した。
多くの人がドットコムバブルを事前に察知し、2007年の信用収縮の前に不動産バブルを特定していたことを考えると、半ば頭を切り替えた人たちの見方も徹底した効率的市場の立場とほとんど同じくらいエキセントリックに思える。
この奇妙さは、2015年が史上最も容易に察知できる2つのバブルを目撃したという事実によって、さらに鮮明に浮き彫りになっている。
明らかにバブルだった中国株
まずは中国だ。上海総合指数は最高値をつけた6月12日までの1年間に130%以上上昇した。この株価急騰が起きたのは、国内総生産(GDP)成長率の予想が下方修正され、企業部門が圧迫されている時のことだった。これは部分的には、不動産と過剰生産設備が蔓延している産業に対する過剰投資の問題だった。
中国企業は、債務負担の増大に対処する必要があるだけでなく、生産者価格の急激なデフレにも見舞われた。このことは、当局がちょうど無秩序な信用拡大を制御しなければならなかった時に、実質金利の上昇が金融状況を引き締めたことを意味する。
膨れ上がった不動産セクターと余剰生産設備に苦しむ産業に対する銀行――株価指数の大きな構成要素――のエクスポージャー(投融資残高)は、各行の支払い能力にとって脅威となる。さらに、相対的な生産者価格によって測られる為替レートは次第に割高になっている。