(2015年7月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
7月15日、衆議院平和安全法制特別委員会で、自民党の浜田靖一委員長(右から2人目)を取り囲んで安全保障関連法案の採決に抗議する野党議員ら〔AFPBB News〕
1960年、当時首相だった岸信介は日米軍事同盟を強化する法案を強行採決し、成立させた。多くの有権者が強く反対し、法案に抗議して何十万人もの人が街頭に繰り出したにもかかわらず、これをやった。それから半世紀以上経った今、岸の孫である安倍晋三がまた同じことをやっている。
安倍首相は先週、日本の部隊が同盟相手の米軍とともに戦うことを若干容易にする11本の法案について、衆院の承認を得た。
現状では、日本の軍隊――平和憲法によって課された制約のために、正式にはまだ自衛隊と呼ばれている――は直接攻撃を受けた場合のみ、日本を防衛することができる。
祖父の時代と同じように、国会の外で騒々しいデモが行われ、国会の中でも騒動があった。法案が可決されたのは、野党が議場から退席した後のことだ。次は参院で法案を批准せねばならず、このプロセスには2カ月の時間と論争を要する見込みだ。
たとえ参院が否決したとしても、安倍氏の連立与党が圧倒的過半数を謳歌している衆院が、法案を再可決・成立させるのはほぼ確実だ。
国民への説明不足で支持率低下、「国益のため」に強行突破
7月14日、安倍晋三首相が成立を目指す安全保障関連法案に抗議する都内のデモ〔AFPBB News〕
安倍氏は、憲法を完全に修正するだけの票も国民の支持も持たない。
1947年に米軍占領下で制定された憲法は、国民投票を経た後でしか変更することができない。このため安倍氏は憲法を再解釈することで、次善の結果を目指した。
憲法の専門家に嫌われている新解釈の下では、日本は「集団的自衛」に関与することが許される。そうなると、日本の安全保障に差し迫った影響を与えかねない衝突が生じた場合、日本は同盟国――つまり、米国ということ――の援護に駆けつけることができるようになる。