夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

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制作 : 福島 正実 
  • ¥ 799
  • 早川書房 (2010年01月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150117429

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)の感想・レビュー・書評

  • SFストーリーとしてテンポも良く面白かった。
    猫は思ったより重要ではない。笑

  • 主人公のダンの相棒、猫のピートは冬になるといつも家の全てのドアを開けるようにダンにせがむ。
    ドアのうちのどれかが、暖かい夏へ通じているとかたくなに信じているからだ。

    そんな猫のピートの愛らしい姿から始まるこの作品は、1970年代に発表されたにも関わらず、いまだSF界で熱烈に支持されている作品である。

    冷凍睡眠、タイムマシン、家庭用ロボットといった、SF小道具の典型をすべて網羅した上で、ただその技術のお披露目だけにとどまっていないあたりが素晴らしい。というよりは、冷凍睡眠やタイムマシンが、ストーリーの中にすんなりと収まり息づいていることが、「物語」としてのこの作品のレベルの高さを物語っていると思う。
    成功者だったはずのダン=ダニイが、なぜ猫のピートとともに夏への扉を切望したのか。いつ、どの時代でもどこの世界でもありがちなお話が、SF作品として見事に描かれている。

    そしてピートが可愛いのだ!

  • 友人とかつての婚約者に騙され全てを奪い取られてしまい、愛猫・ピート、唯一の理解者である少女・リッキィとも離れることになってしまった発明家の主人公ダン。無理やり冷凍睡眠に送り込まれ、目覚めたのは2000年と言う未来。しかしその未来には、かつてダンが考えていた発明品とそっくりなものが普及していた。謎を解いていく中で、ダンは時間跳躍の禁忌を犯すこととなってしまうのだが――彼自身の夏への扉を開きに、彼は時空を超える。古典SFの不朽の名作。

    扉を上手く開ける猫のニュースがあってそれをNHKのアナウンサーさんが夏の扉も開けて欲しいですねってコメントしてるのが古典SFの名作と絡めていてうまい、と言う記事をついったで見かけて、夏への扉を知らなかったのになんかイイナーと思ってRTしたのだけど俄然興味が湧いてきて、ちょうど夏もくるし、夏の読書にいいかな。とか思って購入。季節は思い切り冬ですけどね、うん。
    ちょろっと概要をニコニコ大百科とかでざっと見てはいたのだけど、お話はそんな概要じゃ収まらない長さであって、予想以上のストーリーに楽しめました。そして確かに猫好きにはたまらないですな。ピートかわいい! 猫…飼いたいなあ… リッキィとの恋物語(物語と言えるほどしてなかったけど)も確かにこの作品の魅力の一つである「ロマンチック」を表しててああ~いいなあ。年の差カップル可愛いかわいい。
    読んでいく内に「あ、もしかしたら」と思ってどんどんその予想通りに話が進んでいくのが面白かったです。やっぱそうなるよね、タイムパラドクスだね、ふふ~! SFは好きなのですがこういった古典名作はタイトルは知ってても読んだことないなあってものが大量にあるので、いい機会でした。夏への扉、きっと見つかる。

  • 1 中央 1116620335 L933/5450N/ハイ 貸出可 1階小説室 図書 一般図書 貸出中

  • 婚約者と親友に裏切られた男が、復讐の為に冷凍睡眠(コールドスリープ)に入り、30年後の世界で目覚める話。

    主人公ダニエル・ブーン・デイヴィスは発明家で、数々の家事が行える機械を作成してきた。
    お掃除ロボ「ルンバ」などいない時代に、すでに小説によってそれが書かれていたのだ。
    私も様々な家事を代行してくれる機械が欲しい。

    過去と未来に行ったり来たりするので、過去にあった謎が後で回収されるように仕組まれている。
    例えば最初に車が消えるという謎があったのだが、未来から過去へ戻ってきた主人公が動かしたものだとわかって、すっきりするのだ。

    特別感動する話というわけではないが、主人公の知恵と努力によって過去や未来を冒険していき、最後にはハッピーエンドを迎える清々しさ。

  • 父と弟から勧められて読んでみた本作。個人的には、巷で言われているほどの傑作とは感じませんでしたが、読み始めると中々止められない面白さではありました。
    特に後半、それまでの伏線が流れるように解消されていく様は快感すら覚えます。

    ただ、ご都合主義的な展開が多いように感じたこと、主人公にあまり感情移入できなかったのは残念な点です。

  • 1950年代に書かれたSF作品。タイムトラベルや冷凍睡眠を主人公が体験する話。古典的な部分もあり、普遍的な部分もあり、意外と新鮮に読めた。会話の内容や言葉づかいなどに昔くささを感じた。
    主人公の猫に対する愛情が伝わる。

  • タイムトラベルとコールドスリープを上手く組み合わせていてそうきたか!と。
    今で言うルンバやSiriのようなものが出てくるが、これがおよそ60年前に書かれたっていうのだから驚きである。
    久しぶりに読後がハッピーで爽やかな気持ちになれた。

  • SF小説の入門書としては鉄板の1冊と思っています。猫が好きなのもあって、お気に入りなのです。

  • 海外SFのランキングなどでよく目にしていた一冊。
    猫が中心なのかと思ったらそうでもなかった。笑

    「時間」がキーワードになるのかな。
    過去や未来を巡って最終的にハッピーエンドに落ち着くお話。

    とは言っても、単純にタイムマシンに乗って行き来しちゃうような話ではなく、その辺りは上手いこと捻りが加えてあって面白いと思いました。

    序盤はわりと緩やかですが、終盤からクライマックスに向けて一気に加速して次々と謎が解けていくのが気持ちいい。

    他の方もレビューで書いていらっしゃるけど、やはり特筆すべきは、実際にこの作品が執筆された年代と、作品の中で描き出される当時の未来かな、と思います。

    おおよそ60年前に描かれた未来をとうに越えた現在も、今なお読み継がれているなんてゾクゾクするじゃないか。

    SF古典なんてタグがついてしまうような古い作品なのかもしれませんが、楽しませていただきました。
    ずっと気になっていた一冊だったので、ようやく読めてスッキリです。

  • 小説を読み始めようと決めた1年前、本屋さんで見つけ最初に読んだ本。猫がメインのほんわかストーリーと思ってたらがっつりタイムスリップもののSFだった。慣れてない読者で、3週間くらいかけたのかな。ゆっくり読むといつまでも覚えてるから、逆に良かった。この小説大好きです。

  • 某ラジオのプレゼントに当選し、読みました。

    1950年代に書かれたとは思えない、先端的な技術の描写。
    中盤から終盤にかけて、過去と未来がつながっていくスピード感。非常に面白かったです。

    この本の中で未来として描かれている2000年が、もう15年前・・。

    個人的に、こういった技術・夢を追った男が報われるストーリーは大好きです。

  • この作品が1956年に書かれたことを考えると、奇跡的なSF名作だといえる。
    第二次世界大戦後たった10年で、自動掃除機やCADのような製図機、外部メモリの登場を予見している。ダンが図書館で捲る新聞は、画面の右下を押すとページがロールするという。現代の電子書籍そのものにしか思えない。Kindle版の本書を読みながら、奇妙な感慨に耽ってしまった。
    ここで描かれる「現在」である1970年(実際には作者から見て15年以上も未来)や「未来」である2000年は、現実では我々は経験しているわけだけれど、現実とハインラインの未来予想図の違いを比べながら読むのは相当楽しい。ハイヤードガールはいなかったが、AIBOはいた。ピートの喧嘩相手くらいにはなれたんじゃないか、とか。
    そういえば、ダンと同じように、自分が設計したコンピュータと会社を乗っ取られながらも返り咲き、さらにそれを凌駕する製品を作り出した人物を我々は知っている。スティーヴ・ジョブズだ。ジョブズには、コールドスリープもタイムマシンも必要なかったのだ。彼の物語を知っている我々にとってみれば、ダンの物語はやや非現実的だと言わざるを得ない。
    確かにご都合主義的な面はある。核戦争でアメリカの東海岸が壊滅したりする時代に、冷凍睡眠で30年も同じ場所に眠り続けるなんて、無防備すぎて正気の沙汰とは思えない。タイムパラドックスを避けるように描かれているし、その理由は「たまたま」だったりする。だが、タイムパラドックスを突き詰めていくとエンターテインメントとしての小説としては面白みに欠けるかもしれない。
    それよりも、この作品のようにロマンスに傾くというのはいい決断だったと言える。
    中盤にいきなりトウィッチェル博士が登場してからは、そうなるんだろうなぁという予定調和に向けての風呂敷畳みが展開するのだが、それはまぁ仕方ない。大切なのは、猫のピートが「夏への扉」が必ずあるはずだと試さずにはいられないという行動そのものであり、それは誰しもできるのだとダンが「肩を持つ」ことにあるのである。夏への扉が何であるかは人それぞれだが、その扉はその人自身が開けてみなければわからないのだ。
    そういう情緒的な感覚がこの作品には満ちあふれている。
    そして、幼い頃夢見た「未来」に実際に立っている我々は、「夏への扉」を探し当てられたのかどうか。いや、そもそもちゃんと探そうとしたのか? そう問いかけているように思わせる力が、この作品にはこもっている。

  • 猫ものかと思ったらSFだった。途中まで主人公が精神共にぼろぼろでおまけに愛猫ピートなしに30年先未来に飛ばされてしまってとっても可哀想。はやくそこから脱したくて私も焦って読んでました。そこからの展開は怒涛。別に大きなどんでん返しがあるとか、目新しい、やられた、みたいなのはないんだけど、すっきりとした読後感。この世界観もとてもしっかりしていて読んでいてこんな未来があってもいいな、と思いました。訳がとても読みやすかった。面白かった。

  • フレッシュ!フレッシュ!フレッシュ!ってタイトルから松田聖子の「夏の扉」を思い出す。
    でもこの小説ぜんぜんフレッシュでない。なんせアメリカの1956年発表SF小説だから。
    訳文がなんかしっくりこないしなあ。内容も今読むと斬新ではない。しかしこれが59年前に書かれた小説で舞台が1970年と2000年。そう思うとかなり発表当時は斬新だったのかな?当時ではなかったものを描くということは想像力がすごい。

  • 最初はとっつきにくかったが、読んでいくうちに夢中になった。SFだな〜と思いながら読んだ。

  • 不幸な目にあった主人公が冷凍睡眠やタイムトラベルをしてハッピーになる話。猫に対する愛情がよく伝わってきた。

  • ハインライン"夏への扉"を読む。

    よくブックオフの100円コーナーに並んでいたり、猫好き小説にあげられてたりするので舐めてましたが正統派SFです。

    結婚直前に全てを失ったダンは愛猫「護民官ペトロニウス」通称ピートとともにコールドスリープに入り全てを忘れることに。

    背景がややこしいのですが、本作は1957年に1970年を舞台にして書かれており、さらにその未来に向けてコールドスリープ、つまり一方通行のタイムワープをするお話。

    あまりややこしくないので、SF好き、設定モノ好きなら一気読みできます。

  • ある種運命づけられた不断の努力が報われるハッピーストーリー。読後の爽やかさが心地よかった。

  • 現実は今や2015年。

  • オススメされて読みました。
    序盤の展開がややのんびりしすぎていて退屈な感じがしましたが中盤から終盤にかけてはとても面白かったです。

    1950年代に執筆された作品だというのに、リアリティのある未来像が描かれていてビックリしました。「ゾンビードラッグ」とかね。。。
    物語としてはタイムスリップを扱う作品の先駆けということで目新しさは感じませんでしたが、王道の展開に安心して読むことができました。

  • うーむ、タイムトラベルものの名作と聞いていたので、期待して読んだのだが・・・

    過去わくわくしながら読んだタイムトラベル小説はいっぱいあるが、この作品に関しては正直あまり乗れなかった。理由は3つあり、作中の1970年と2000年の描写と実際の世界のギャップがありすぎてリアリティが殺がれたことと、主人公以外の人物の描き方にあまり深みを感じなかったことと、タイムマシンや万能ロボットの説明にあまり説得力がなかったことがある。ただし猫のピートの造詣は面白かった。どうせなら全編通してピートと一緒に旅をさせて、猫小説にすればよかったのに。

    全く面白くないかといわれるとそうでもないのだが、永遠の名作というのは誇大広告だと思う。

  • 冷凍睡眠により過去から未来へ,時間転位により未来から過去へ。タイムトラベルを題材としたSFの古典。
    冒頭の「彼は,その人間用のドアの,少なくともどれかひとつが,夏に通じているという固い信念を持っていたのである」という言葉がこの物語の内容を端的に表している。
    主人公ダンは優秀な技術者でありながら,わがままで,偏屈で,不遜で,融通がきかず,思慮分別に欠け,世間知らず。あまり魅力的な主人公とはいえない。
    ただ妙に前向きな性格であり,どれほど騙され,打ちのめされても,自分の信念を貫き,絶対にあきらめない。
    ダンはその前向きな性格をもって次々に行動を起こしていくため,物語がテンポよく進み,読んでいて飽きない。
    扱っているテーマや物語のプロット自体に目新しさはないが,きれいにまとまった名作。

  • 古典SFの名作と聞いて、ずっと読んでみたかった作品。

    トリック――というか話の根幹部分は、
    後世の作品でSF慣れしているせいか目新しさはなく、
    読みながらタネがわかっていた。
    しかし、描写が巧みでとても主人公に感情移入ができる為、
    それが見通せて尚、早く先が読みたくてしかたなくなる。

    コールドスリープとタイムスリップとの併用で互いの弱点を補うというアイディアも面白かった。

    以前、「ネコ好きは読むべき」という感想を見かけたが、確かに……。

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反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)

森本 あんり

「反知性主義」が流行語大賞をとる前に読んでおきたい本

昨年来日本でも「反知性主義」という言葉が喧しく扱われておりますが、本書ではアメリカでのプロテスタント宗教史上のその実態たる「リバイバル」ムーブメントからこの本来の「反知性主義」に関して詳らかに解説されています。
日本では「反知性」という言葉のせいか、郊外ヤンキー論を含むポピュリズムの脅威として捉えられがちでありますが、本書を読むとそれは言葉に引っ張られた錯覚であることがわかり、あくまで「反インテリ主義」としての「知性」への対抗姿勢として、その特権的「知性」の暴走を許さないという確固とした態度こそアメリカという国家を形成したこともよくわかります。今年流行語にもなりかねない「反知性主義」でありますが、今一度この本で言葉と概念の整理すると今の「人文知」議論の本質と、その語り手のポジショントークぶりが透けてみえるかと思うのでお勧めです。

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