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 東京電力福島第一原発事故による風評被害などで堆肥(たいひ)が売れなくなり、処分費がかかるようになったとして、福島県郡山市の畜産農家が東電と国を相手取り、5億円の損害賠償を求める訴えを福島地裁郡山支部に起こした。JA福島中央会によると、こうした提訴は初めてという。

 提訴は16日付。訴えたのは、郡山市と同県田村市の牧場で肉牛を飼育する上野牧場。約2900頭の飼育数は県内最大規模という。

 訴状などによると、上野牧場は事故前、自らの牧場で出た堆肥を農家に売るなどしていた。しかし、事故で農家らが県内の堆肥を避けるようになって売れなくなり、現在は計約1万7千トンを牧場や周辺の借地で保管しているという。

 堆肥の処分費は約20億円に上り、昨年度の営業損害約2億円が支払われていないと主張。5億円の賠償を求めている。上野牧場は、東電に対策をとるよう指示しなかった国にも過失があるとしている。

 東電は「訴訟で請求内容や主張を詳しくうかがったうえで、真摯(しんし)に対応します」、国は「訴状が届いていないので、コメントする立場にない」としている。(小島泰生)