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【社説】

中ロ新枠組み 冷戦の再来はごめんだ

 中国とロシアが新興五カ国(BRICS)と上海協力機構の首脳会議などで先進七カ国(G7)に対抗する国際秩序づくりをアピールしている。多様な枠組みは尊重したいが冷戦の再来はごめんだ。

 BRICSは中ロと、インド、ブラジル、南アフリカ。首脳会議後の宣言は、これら新興五カ国を「世界経済成長の重要なエンジン」と自己評価、加盟国の経済危機に対応するBRICS開発銀行の初会合を開くなど、経済的結束を強めた。

 一方、上海協力機構(SCO)は中ロと、旧ソ連の中央アジア四カ国で構成。ロシアの第二次大戦戦勝七十年に関する声明は「日本軍国主義に抵抗し、大きな犠牲を払った中国人民の勇気と成果を高く評価する」と中ロの連携を強調し、日本をけん制した。

 同機構は十九年前、中国と旧ソ連諸国との国境問題解決を目的に結成された「上海ファイブ」が前身だが、安全保障、経済分野へと連携は広がった。今首脳会議では準加盟国のインド、パキスタンの正式加盟に向けた手続き開始で合意するなど勢力範囲を広げ、存在感を強めている。

 BRICS、SCO構成国の総人口は、推定計約三十億八千七百万人に上る。米国の力が弱まり、G7の影響力にも陰りが見え、旧来の国際秩序は揺らいでいる。経済力を増す新興国が新たな秩序づくりを模索するのは理解できる。

 しかし、ロシアが主要八カ国(G8)から除外されたのはウクライナのクリミア半島併合がきっかけで、その後も同国東部で影響力拡大を図っている。中国も周辺国の懸念にもかかわらず、南シナ海岩礁埋め立てを進めてきた。新たな枠組みを、中ロの強硬姿勢を正当化する具にしてはならない。

 米次期統合参謀本部議長に指名された海兵隊総司令官は上院公聴会でロシアを最大脅威、次ぐ脅威に中国を挙げるなど、米国は中ロへの警戒を強めている。警戒や敵視が続けば、中ロはさらに孤立して溝が深まり、冷戦時代のような緊張状態に逆戻りしかねない。

 米国と中国は六月に戦略・経済対話を開いた。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)には欧州各国が加盟した。ロシアのG8復帰については、ドイツなど一部の国から支持の声も出ているという。多様な国際社会のつながりを通じ、日本を含めたG7と中ロが対立を深めるのではなく、協調の道を探っていきたい。

 

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