[東京 22日 ロイター] - 東芝(6502.T)の不適切会計問題は歴代3社長が辞任する前代未聞の事態となったが、株式市場の参加者はまだ「幕引き」とは見ていないようだ。
国内のコーポレートガバナンス(企業統治)強化の動きに対する期待に水を差したばかりでなく、今回の調査自体が十分に実施されたのかどうかを懸念する声も聞かれる。「第2の東芝」が現れた場合には、国内市場へのダメージが避けられないとの警戒感も強い。
<現時点では、個社の問題>
22日の東京株式市場で、東芝株は前日終値比6.8円(1.7%)安の393.1円で引けた。序盤は買いが先行したものの「短期筋による売買が中心。リバウンド狙いの買いが続かず、下げに転じた」(国内証券)という。21日の会見自体は「特段サプライズはない」(銀行系証券)との見方が優勢。株価は16日に年初来安値を更新してからはやや戻り歩調にあるとはいえ、問題発覚前となる5月8日終値483.3円に遠く及ばない水準だ。
日経平均株価.N225は22日、一時260円超の下落となったが、6連騰後の利益確定売りが主体とみられており、東芝の問題が相場全体に及ぼす影響は限定的との受け止めが広がっている。「(粉飾決算の)エンロン事件の時、米国企業がみな不適切な会計をしていたかというと、そういう訳ではなかった。東芝以外の日本企業がみな利益を操作しているとはとても思えない」(日本アジア証券グローバル・マーケティング部次長の清水三津雄氏)との声も聞かれる。
もっとも、国内ではコーポレートガバナンス強化の機運が高まっていただけに、日本株への中長期的な影響を懸念する声は少なくない。メリルリンチ日本証券チーフ日本株ストラテジストの阿部健児氏は「海外投資家の話を聞いている限り、東芝の問題はあくまで個社の問題との意見が多い」とする半面、「ガバナンスについて先進的だと捉えられていた東芝ですら、うまく機能していないことが明らかとなり、投資家のガバナンス改革への期待を少し下げる可能性はある」と指摘している。
<減損対象・調査範囲で懸念>
第三者委員会の報告によると、東芝の過年度の利益の過大計上額は、2009年3月期から2014年4─12月期までの累計で、総額1562億円に上るという。東芝は過年度決算の修正に伴い、一部事業において減損処理の実施などを検討する。ただ「減損の対象に原発関連事業が明記されていない。そこに手を付けていないこと自体が理解に苦しむ話であり、さらなる問題が出る懸念も残る」(中堅証券)との見方も出ている。
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