これまで、公訴時効が成立したとの理由で、社会に衝撃を与えた殺人犯の追跡が中止されるたび、公訴時効の問題が論議を呼んだ。女性たちを狙って10件もの殺人事件を引き起こした「華城連続殺人事件」や、5人の子どもが行方不明になった「カエル少年失踪事件」、イ・ヒョンホ君(当時9歳)が誘拐され遺体となって発見された「イ・ヒョンホ誘拐殺人事件」などが代表的なケースだ。「3大未解決事件」と呼ばれるこれらの事件は、2006年に一斉に公訴時効が成立し、迷宮入りとなった。これらの事件の影響で、07年に刑事訴訟法が改正され、殺人罪の公訴時効は15年から25年に延長された。
殺人罪の公訴時効が廃止されれば、刑事訴訟法改正前の2003年に発生し、18年に公訴時効が成立する「抱川女子中学生殺人事件」の犯人も、逮捕されるかもしれないという不安に一生おびえ続けなければならなくなる。抱川女子中学生殺人事件とは、03年11月に京畿道抱川市で帰宅途中の女子中学生(当時15歳)が行方不明になり、96日後に惨殺死体となって発見された事件で、現在に至るまで犯人は逮捕されていない。
だが最近、「大邱硫酸テロ事件」について、公訴時効成立の3日前に被害者の親が申し立てた裁定申請が大邱高裁で棄却され、大法院(日本の最高裁判所に相当)への再抗告も認められなかったほか、上記の3大未解決事件もすでに公訴時効が成立し、たとえ法律が改正されても適用されない見通しだ。1999年5月、見知らぬ男に硫酸をかけられ、49日後に死亡した「大邱硫酸テロ事件」の被害者キム・テワン君(当時6歳)の母親パク。チョンスクさん(51)は「公訴時効の制度は遺族を2度殺すものだ。公訴時効の成立が近づくにつれ、遺族は気が重くなるばかりだ」と話した。
世界各国ではすでに殺人罪や人倫に反する罪に対する公訴時効制度を廃止している。米国では連邦法の法定刑に死刑が定められている犯罪について公訴時効が廃止された。ドイツでは「人を殺したい欲求」など卑劣な動機で殺人を犯した場合などには公訴時効制度を適用していない。韓国と法体系が似ている日本も2010年、殺人罪や強盗殺人罪など、最高刑が死刑となっている12の罪について、それまで25年となっていた公訴時効を廃止した。