「目標を達成しようという圧力があった。申し訳ない」
21日午後5時、東芝の田中久雄社長が憔悴(しょうすい)した表情で頭を下げ、内外の記者がカメラのフラッシュをたいた。前社長の佐々木則夫副会長と西田厚聡相談役も辞任した。これにより、過去10年間東芝を率いてきた歴代トップ3人が同時に不名誉な形で退いたことになる。一連の不適切会計問題に関する第三者委員会(委員長・上田広一弁護士=元東京高検検事長)が前日、東芝が8年間で利益1518億円を水増ししたと発表してからわずか1日後のことだった。東芝の自主的な調査結果を含めると、水増し額は税引き前の損益ベースで1562億円に上る。
東芝はパナソニック、シャープ、日立などと並ぶ日本の8大家電メーカーの一角に数えられる。創業以来140年にわたり、日本の電子産業の一翼を担った。日本製初の製品に次々と世に送り出した。白熱灯(1890年)、扇風機(1894年)、冷蔵庫(1930年)、電気炊飯器(1955年)、ノートパソコン(1986年)、DVD(1995年)などだ。世界初の実績も少なくない。二重コイル電球(1921年)、郵便物自動処理装置(1967年)、無線制御ネットワーク家電(2002年)なども東芝ブランドだ。
しかし、今年4月に内部監査で不適切会計が明るみに出た。東芝は1カ月後、不適切会計を理由に決算発表を6月に延期すると発表した。ただ事ではない異変が株価を急落させた。第三者委が設置され、調査の結果、不正が芋づる式に判明した。1カ月の営業利益が売上高を上回っていたケースもあった。
第三者委によると、東芝は年間340億-500億円の利益水増しを行っていた。日本経済新聞は2009年3月期から2015年3月期の第3四半期末までの税引き前利益全体5650億円のうち3割以上が水増し分だったと指摘した。