2015.07.23 08:30
今回は、これまでもSENSORSで追いかけてきたロボットクリエイター「きゅんくん」のマネジャーを務める女性に注目する。彼女の名前は大﨑祐子。なんと熊本在住の21歳、現役の女子大生。東京から約1300キロ離れた場所から「リモートワーク」という働き方で彼女は様々な活動を展開していた。クリエイターのマネジメントのみならず、企画・広報・秘書業務、そして営業までを、あくまで「熊本」を拠点に、東京の顧客へ向けて行っているという。コミュニケーションツールを自在に駆使しながら、彼女が実践する「リモートワーク」という地理を越境した新しい働き方は、地方で働く女性にとって新しい可能性を呈示するかもしれない。
大﨑祐子(おおさきゆうこ):
1993年生まれ、21歳。熊本にいながら東京や海外の人と「リモートワーク」で仕事をこなす"リモートワークを頑張る女子大生"。 ITベンチャーや若手起業家コミュニティの営業や企画を経験後、現在は若手クリエイター「きゅんくん」のマネージャー、 (株)QREATOR AGENT代表取締役秘書、(株)Caster広報・ブログ編集長など、「企画・営業・広報」を大学在学中からリモートワークで実践。
第一回「SENSORS CAFE」(若き女性クリエイター・きゅんくんと近藤那央がロボットに見いだす新世代の感性)、この対談のセッティングを通じて知り合ったのが、きゅんくんのマネジャーで、現役女子大生でもある大﨑祐子だ。
この対談のセッティングを通じて知り合ったのが、きゅんくんのマネジャーで、現役女子大生でもある大﨑祐子だ。当初海野は対談取材の準備になんの違和感もなく彼女と連絡を重ねていた...ヤリトリを加速させるためにFacebookメッセージを用いる段階になって初めて気づく。「このマネジャー、熊本在住で仕事しているのか!」さらに聞くところによると、クライアントであるきゅんくんとリアルでは一度しか会っていなかった!しかしきゅんくんと彼女の連携は完璧。熊本と東京という距離を越えた鮮やかなリレーションシップに、海野は強く惹きつけられた。そこで、たまたま上京するという彼女の時間を確保してインタビューを申し込んだのだった。
現在はQREATOR AGENT代表・佐藤詳悟氏の秘書、株式会社Casterの広報・ブログ編集長を務めながら、企画や宣伝・広報、さらには営業までもこなす。コミュニケーションツールを活用しながら、地理を越境した働き方"リモートワーク"を実践・発信する自身のブログ「リモートワークを頑張る女子大生のブログ。」は地方の学生を中心に支持を集め、livedoorブログのキャリアカテゴリで1位になった。
地理的障害を軽やかに越えて幅広い業務を自由にこなしながら、新しい働き方の発信にも余念がない彼女。苦労や工夫も含めた「リモートワークとは何か?」にはじまり、自身のキャリア観と今後の展望についてSENSORSクリエイティブディレクター海野が話を伺った。ツールをつかいこなすテクニック論に終始せず、"地方の女性が活躍するための新しい働き方を創る"という志高き彼女の仕事観に迫る。
熊本でインターンを始めた彼女だが、東京で参加したイベントをキッカケに「一般社団法人festivo」という若手起業家コミュニティのアンバサダーになった。Facebookメッセンジャーを使いながら、代表とやりとりをし、熊本から仕事をこなすなかでスピード感や交渉のノウハウを蓄積していったという。
"クラウドソーシング"や"ノマドワーク"など、オフィスに常駐することなく、場所を選ばず業務を遂行するワークスタイルを表す言葉は多い。しかしその多くは記事の執筆や翻訳、プログラム開発、アニメの作画など、どちらかといえばコミュニケーションをそれほど要さない職人仕事というイメージがある。しかし、彼女は一風変わったスタイルを持つ。
取材の合間にも、次々と来る仕事の連絡に「秒」で対応していた。
アイデアのブレストはチャットで行い、企画書への落とし込みは同時編集が可能なGoogleDriveを使って共同編集。必要があれば適宜スカイプでミーティングを行うのが基本スタイルとのこと。新しいコミュニケーションツールをフルに活用して、地理的な不利を完全に克服している。
月に一度、熊本の新聞社でアルバイトを行っているという彼女。最新のコミュニケーションツールではなくFAX、電話、メールを業務手段として使っている現状にやはり違和感があるんだとか。
普段から新しいコミュニケーションツールはまめにチェックし、大企業だろうと、個人クリエイターだろうと、相手が最も快適に連絡できる手段に合わせることを意識しているという。これからのマネジャーに必要なのは、アンテナを張り巡らせ、数あるコミュニケーションツールに通暁し、どれもそつなく使いこなせることなのかもしれない。
母校・熊本大学にて撮影。PCとスマートフォンは常に持ち歩く生活。
7月からCasterの広報・ブログ編集長でもある彼女。自身でもブログを開設し積極的に情報発信を行っている。これが彼女の活動領域をさらに広げている。
自己プロモーションを戦略的に行いつつ、ブログを流入窓口にマッチング案件を成立させていく彼女のスタイルはまさしくオウンドメディアのお手本と言える。
リンダ・グラットンの『ワークシフト』やDeNA創業者・南場智子氏『不恰好経営』に影響を受けたという彼女。ビジネスの領域で突出した強い女性像に憧れるという。キャリアビジョンの中で、目指すロールモデルはいるのだろうか。
熊本市街にて撮影。育ちは長崎〜大学から熊本。朗らかながら芯の強い九州女性という印象。
現在大学4年生である彼女は、来年、東京の企業に就職するとのこと。しかし、キャリアを長い目で見たときに、必ずしも東京という土地にこだわっていくつもりではない。
コミュニケーションツールを駆使しながら、地理を越境した「リモートワーク」で今日も熊本を奔走する大﨑祐子。女性が歩む結婚・出産・子育てといったライフステージと職業の関係、そして、東京と地方の経済的結びつきについて、この「リモートワーク」を通じて独特のビジョンを抱いていることが今回の取材で分かった。東京に一度は出るも、故郷で暮らす可能性を見据えてキャリアを伸ばそうとする志の高さ、そして"故郷への愛情"に、頼もしさを感じる。
なにより一つ一つの行動が手段なのか、目的なのか自分の中で意識的に峻別され、最終的なゴールの青写真にマッピングされているのが伝わってきた。
今後の彼女の挑戦、そして活躍をSENSORSは暖かく見守っていきたい。
日本テレビインターネット事業部「SENSORS」クリエイティブディレクター。バブル崩壊世代1973年生まれ41歳。下北沢在住でサブカルチャーと音楽をこよなく愛する。「ズームイン!!SUPER」などの番組制作に携わり、2012年から現職。テレビ番組のデジタル連動企画の立案運営などを担当。
1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。東京大学大学院学際情報学府在籍。@_ryh