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【社会】

朗読会で平和の俳句 今の世問う 僕たちは危機を告げるカナリア

「詩のコンサアト」のけいこをする出演者たち。後列中央が山本健翔さん、前列中央は川辺久造さん=東京・両国で

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 本紙朝刊一面で連載されている「平和の俳句」が二十五、二十六の両日、東京都内で開かれる朗読会「詩のコンサアト カナリアナイタ」で紹介される。安全保障関連法案の審議が参院に移る中、主催する劇団「劇舎カナリア」は「炭坑で作業員に危険を知らせるカナリアのように、戦後七十年の今、『このままでいいのか』と問い掛けたい」と話す。 (五十住和樹)

 同劇団は東京の「演劇集団円」会員で大阪芸術大教授の演出家、山本健翔(けんしょう)さん(57)が昨年、旗揚げした。同時に、知人の俳優や元教師らが舞台に上がり、持ち寄った詩を読む「詩のコンサアト」も始めた。

 山本さんは、平和への思いを込めた作品を多く残した劇作家で詩人、加藤道夫の「詩情があふれる舞台でなければならない」という理想に感銘を受け、劇団旗揚げ前の二〇〇八年から毎年、加藤の戯曲上演や詩の朗読会を開いてきた。

 今回の「詩のコンサアト」では、第一部で加藤の作品「挿話(エピソオド)」を上演。第二部で、加藤を知る文学座の俳優川辺久造さん(82)ら十一人が約二十の詩を次々に朗読。本紙掲載の「平和の俳句」十二句も一気に読み上げる。

 十二句は、山本さんと出演者がそれぞれ、共感できるものを選んだ。山本さんは「われわれの思いと、平和の俳句に込められたものは通じている」と語る。

 披露される俳句の一つで、五月十四日に本紙に掲載された「初蝶(ちょう)や笑い声する方に行く」は、群馬県安中市の主婦美斉津(みさいづ)真弓さん(61)の作品。「暖かくなって飛ぶチョウも、笑い声のする方に飛んでいく。そんな穏やかで楽しい日々こそが平和だ」という思いを込めた。

 自作が舞台で朗読されることに、美斉津さんは「平和の俳句が、(新聞掲載とは)別の形で広がっていくのはうれしい」と、楽しみにしている。

 「詩のコンサアト カナリアナイタ」は東京・両国のギャラリーX(カイ)(シアターXの二階)で、二十五日は午後二時、二十六日は同一時と五時から開演。問い合わせは劇舎カナリア=電03(5875)3906=へ。

 <加藤道夫(かとう・みちお)> 1918年生まれ。慶応大在学中から俳優の芥川比呂志らと演劇活動を始め、最初の戯曲「なよたけ」を書いた後に旧陸軍省通訳官としてニューギニアに赴任。マラリアにかかって死線をさまよった。女優加藤治子さんと結婚し、「麦の会」として演劇活動を続けるが、その後文学座に合流。53年に死去。

 

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