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 波穏やかな瀬戸内海に浮かぶ山口県周南市の大津島(おおづしま)。山陽新幹線徳山駅近くの港から船で最速18分のこの島には、人間魚雷「回天」の訓練基地跡が残る。

 回天は魚雷を改造した旧日本海軍の特攻兵器。全長約15メートル、直径約1メートルの狭い艦内に約1・5トンの爆薬を積んでいた。潜水艦を発進すると搭乗員が操縦し、敵艦に体当たりで攻撃する。

 搭乗員は10代の飛行予科練出身者も多かった。訓練では桟橋の先の建物から海面に降ろされ、島を周回するコースで技術を磨いた。

 同市回天記念館によると、特攻や訓練などで亡くなった搭乗員と整備員は145人。1945年1月に21歳で戦死した塚本太郎さんは出撃前、両親に手紙を書いていた。「御両親の幸福の条件の中から、太郎を早く除いて下さい」

 訓練は終戦を告げる玉音放送が流れた8月15日も続いたという。(写真・文 嶋田達也)