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新・犬沼のブログ

過去のことがどうでもいい歴史オタクのブログ。

合法と違法のあいだ 朝鮮人強制労働とは何か

「世界遺産で勝った」韓国が次に狙うのは……:日経ビジネスオンライン

これが「卑日」だったのか――:日経ビジネスオンライン

 

 日本と韓国が、「強制労働」という言葉を入れるかどうかで平行線をたどった世界遺産登録問題。
 「強制労働と読める英文で、日本はへまをやった」ともいわれるし、強制労働とは言ってないという日本政府の公式説明に、韓国が「強制労働を認めよ」と反発している。「強制労働」という言葉の定義や範囲を決めずに、「~だった」「~ではない」といっても神学論争になるので、そこから考えてみよう。
 新聞を読むと、日本政府の主張は「合法的な徴用」で「ナチスのような違法な強制労働ではない」だが、韓国政府は「併合が違法だから、違法な強制労働」といっている。韓国伝統の、「併合そのものが違法なので、全てが違法」論である。
 ナチスの何が違法だったか、という法的問題は詳しくないが、ナチが侵略戦争によって占領支配した土地は、諸外国から全く承認されていなかった。だからそこの住民を、「徴用」できる法的権限もないはずだ。ナチの労働者徴用はこのように違法性が強く、戦後は強制連行・強制労働として連合国に裁かれた。
 日本では、中国で占領支配した土地から、「募集」に応じた労働者が集められた。募集とは形式的なもので、実態としては強制や、拉致連行も多くあったという(杉原達「中国人強制連行」)。
 これらと違って日本統治下の朝鮮は、諸外国から承認された植民地であり、国内法の延長線上で徴用令を適用することは出来た。二度の世界大戦では、イギリスもフランスも植民地から大規模な徴兵と徴用を行っており、しかもそれはおおむね、「自由と民主主義のための戦いに、植民地住民が貢献してくれた」といういい話になっている(イギリスについては、中尾知代「日本人はなぜ謝り続けるのか」、フランスについては、平野千果子「アフリカを活用する」)。
 たぶん諸外国は、「合法・違法」なんて議論に興味はないだろう。それは我々が、イギリスやフランスの植民地支配の違法性云々に興味がないのと同じである。おそらく諸外国の目に映る日韓の論争は、インドとパキスタンのように「隣り合った国が、どっちが正しいのかどうでもいいことでもめている」というものだ。
 突っ張ってもめるほど、「冷静になれよ」という戸惑いと呆れを呼びそうな気がする。

 

中国人強制連行 (岩波新書)

中国人強制連行 (岩波新書)