国立中央医療院は20日、これまで中東呼吸器症候群(MERS)感染拡大の影響で中断していた外来診療と入院治療を再開した。サムスン・ソウル病院も最後のMERS患者発生から潜伏期間の14日が過ぎたことを受け、20日付で部分閉鎖を解除した。新たな感染者も今月4日以降、15日連続で確認されていない。国による正式な終息宣言まではまだ数日を要する見通しだが、現状では感染が一段落したとみてほぼ間違いないだろう。ただし国と全国の医療機関は緊張を緩めず、感染拡大阻止と完全終息に向け最後まで全力を尽くさねばならない。
MERSの沈静化を受け、国会や医療関係者などの間では保健福祉部(省に相当)に保健や医療に関する政策を専門に担当する新たな次官の設置、あるいは疾病管理本部トップの次官級格上げなどを求める声が今後の対策として上がり始めている。保健福祉部でも新たな総合対策の取りまとめ作業が進められているようだ。この総合対策には例えば感染病患者と一般患者の分離治療のために大部屋の入院室を減らすことのほか、救急病棟の構造の見直し、感染病治療に専門に取り組む人材の育成や能力の向上などが含まれているという。
ただし今後のMERS対策について言えば、政府の組織拡大や責任者の格上げだけで終わらせるのではなく、まずは国民の健康を守るための実質的な対策の強化に力を入れるべきだろう。それにはまず今回のMERSへの対応において具体的にどのようなミスがあり、またそれは誰の責任なのかといった点を明確にする作業が必要だ。国が犯した決定的なミスとして最初に考えられることは、平沢聖母病院で最初の患者が発生した際、病院内はもちろん、病院の外にある小さな店舗まで随時確認に回ったにもかかわらず、その一方で隔離の範囲を「患者が発生した病室」に限定してしまったことにある。そのためまずはこのような判断ミスが起こった原因を特定しなければならない。その原因は例えば本当に疾病管理本部責任者の地位が低かったことにあったのか、あるいは幹部の多くが医師免許を持つにもかかわらず、疾病管理本部の能力そのものが欠如していたからなのか、そうでなければ普段から疾病管理本部における組織そのものの管理がずさんだったからなのかなど、考えられる要因は全てしっかりと検討しておかねばならない。またそれ以外にもMERS患者が発生し、あるいは診療を受けた病院のリストを公表しなかったのは誰が決めたことなのか、あるいはその決定に当たり保健福祉部は総合病院に対して無用な配慮をしていなかったかなど、解明すべき問題は山ほど残っている。さらに国はサムスン・ソウル病院に対してしばらくは何の措置も取らなかったが、これについても病院から国に対して何らかのロビー活動がなかったか確認することも必要だろう。