職員の自殺まで引き起こした国家情報院(国情院)のハッキングプログラム購入および違法盗聴疑惑が始まったのは、今月初めにイタリアのIT企業「ハッキングチーム」のメーンコンピューターが不正アクセスに遭ってからだった。ひそかにコンピューターやスマートフォンにアクセスできるプログラムを同社から購入した各国の政府や情報・捜査機関のリストが、一部暴露された。韓国・米国・ドイツ・ロシア・スイス・イスラエル・シンガポール・チェコ・チリ・エジプト・スーダンなどおよそ30カ国、約90の機関が同社の顧客リストに載っていることが判明した。
しかし、この問題が大きな政治スキャンダルに飛び火して政争の種になっている国は、この約30カ国の中では韓国だけだった。米国やドイツなどでもメディアなどを通した疑惑の提起は続いているが、これに対する他国政府や機関の対応は「国家安全保障のため新たなプログラムを検討する必要がある」という程度の、極めて原則論的なレベルにとどまっている。政界やメディアも、必要以上に国民を不安にさせかねない無分別な暴露や政治攻勢は慎んでいる。民間調査疑惑を裏付ける具体的な証拠がまだ出てきていないからだ。
韓国も、2012年に問題のイタリア企業から20本の回線を購入したというほかに、明らかになった事実はない。国情院は、20本の回線のうち18本は対北朝鮮用に使い、2本は内部の研究用として使用したことを明らかにした。国情院のこの釈明が事実かどうかは、今後国会の調査などを通して明らかにされなければならない。
しかし、既にインターネットなどでは、ありとあらゆるデマや陰謀論が飛び交っている。一方では国情院職員の自殺までも「他殺」と言い立て、かと思えば他方では、ハッキングやセキュリティーの専門家を自称する人物の怪しげな主張であふれかえっている。08年のBSE(牛海綿状脳症)デモから旅客船セウォル号の惨事、MERS(マーズ。中東呼吸器症候群)問題に至るまで、大きな懸案が発生しさえすれば、待っていたかのようにありとあらゆる陰謀論がはびこる。ここまで来ると、「韓国病」と呼んでも間違いではないくらいだ。