訪日外国人が一段と増えている。日本政府観光局が22日発表した1~6月の訪日客数は過去最高の913万人となり、前年同期比46%増加した。訪問先は富士山や京都など日本観光の「定番」にとどまらず、アニメの舞台や地場産業の体験施設など多岐にわたる。東南アジアからの訪問客にイスラム教の戒律に沿った日本食が売れるなど需要の裾野が広がっている。
■アニメの舞台巡る
1~6月は中国からの訪日客が前年同期比ほぼ倍増の217万人。韓国は43%増、台湾も29%増だった。観光庁の久保成人長官は同日の記者会見で「通年では1800万人前後を見込める」と2014年の1341万人からの大幅増に期待を示した。SMBC日興証券は今年6月の実績を季節調整して年率換算すると1944万人と試算。足元では年間2千万人ペースの来日がある状態だ。
日本を訪れる観光客には「ゴールデンルート」と呼ばれる東京、京都、大阪を巡るコースや富士山が人気だった。しかし最近は日本を再訪するリピーターが増え、訪問先も多様化してきた。
鳥取県境港市の境港には22日、中国人約3200人を乗せた大型クルーズ船が寄港した。上陸後はバス90台に分乗。大山や出雲大社など山陰の観光地へ向かった。西安から家族5人で来日した申娘宏さん(38)は「松江城を訪問した後、港近くのドラッグストアや免税品店を回る」と話した。
岐阜県郡上市では伝統産業の食品サンプルの体験施設が人気を集めている。岩崎模型製造には外国人のツアーバスが連日乗りつける。溶けたロウを水に垂らして天ぷらや野菜のサンプルを作るたびに歓声が上がる。
神奈川県鎌倉市の江ノ島電鉄の無人駅「鎌倉高校前駅」近くの踏切には、アジアからの観光客が目立つ。海外でも人気のアニメ「スラムダンク」の場面にそっくりだと話題になったためだ。
■ハラル対応食品人気
インドネシアやマレーシアなどイスラム教徒の訪日客の需要も増えている。東急百貨店は渋谷本店(東京)でイスラム教の戒律に沿う「ハラル」対応の食品を売る催事を16~22日に開いた。「日本の味覚を安心して楽しみたいという需要が高く、ラーメンやカレーが好評」(小松重之バイヤー)。売り上げは計画を2割ほど上回ったという。
上海株の乱高下で中国人訪日客の消費に響くとの指摘もあったが、高島屋では7月1~10日の訪日客関連の売上高は前年同期比3倍と好調。「高級ブランドのバッグなど、高単価商品の売り上げも変化はない」という。
免税店運営大手のラオックスは「客数などの増加ペースに大きな影響はなく、トレンドは変わらない」と分析する。
需要を取り込むための投資も活発だ。大丸心斎橋店(大阪市)は改装のため本店は年内で営業を一旦終えるが、南館に外国人観光客の好むブランドを集め、免税品販売の拠点とする。
第一生命経済研究所の永浜利広・主席エコノミストは、今年通年の訪日客が1800万人だった場合、関連投資も含めて国内総生産(GDP)を4兆円程度押し上げる効果を見込んでいる。
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