なぜ無能な後継者が選ばれたのか
「粗にして野だが卑ではない」。東芝の粉飾決算を見ていて思い出した言葉だ。言葉の主は元国鉄総裁の石田礼助氏。三井物産社長を経て国鉄総裁に転じ、国会に初登庁した際に言ったとされる。城山三郎氏の小説のタイトルにもなっている。その意味するところは、身なりや言葉遣いは粗削りだが、志は高く、言動は明快で出処進退も潔いということであろう。
東芝の粉飾決算の責任を取って、田中久雄社長、佐々木則夫副会長(前社長)、西田厚聡相談役(前々社長)が7月21日付で辞任した。この三人に共通する特徴は、「粗にして野だが卑ではない」の真逆で、外見や言葉遣いは洗練されているが、「卑しい」ということである。嘘でもいいから好業績を上げ、社長としての名誉にこだわった結果、投資家、社員らあらゆるステークホルダーに迷惑をかけた。
さらに、佐々木氏と西田氏の間には確執があるとされる。佐々木氏にはメンツにかけて「西田時代」に負けたくないという思いも働いたのであろう。この二人の確執が尾を引き、後継社長には無能で害がない田中氏が選ばれたのは衆目の一致するところだ。この三人、記者に対する受け答えなどを見ていると丁寧だ。でもやってきたことは、大変卑しいと言わざるを得ない。
筆者は企業経営の取材を長らくしてきた。インタビューなどをしていて最近よく「言葉遣いや身なりは洗練されているが、本質を分かりやすく、ずばっと語る経営者が減った」と感じる。だからインタビューしていても面白くないし、言語明瞭意味不明瞭のことも多々ある。
その要因は2つあると思う。ひとつは、多くの経営者が「メディアトレーニング」を受けていることだ。専門のコンサルタントに発言内容などを事前にチェックしてもらい、決して本音を漏らして失言につながらないようにする訓練のことだ。カメラ写りのよい姿勢などまでアドバイスを受ける。1時間くらいの訓練を受けて大企業のトップだと100万円程度支払うそうだ。このトレーニングで一応、中身はなくても外見だけは洗練される。
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