貞国聖子
2015年7月23日05時06分
中学2年の和佳夏(わかな)さん(13)は2年半前、幼なじみで親友の沙清(さきよ)ちゃんを亡くした。
ロングヘアの前髪をピンで留めた、ちゃめっ気のある優しい女の子。沙清ちゃんが描いた絵を見せてもらうのが楽しみだった。いつも笑わせてくれ、けんかをしたことは一度もない。3人きょうだいの末っ子同士、気が合った。
別れは、2012年12月20日。東京都調布市にある市立小学校の5年生だった。
沙清ちゃんは乳製品に重いアレルギーがあり、給食は用意されたアレルギー対応食を食べる。対応食がない日は、母(53)が同じメニューを作ってくれた。グラタンやシチュー、パン……。帰宅した沙清ちゃんは「友達においしそうって言われたよ」とうれしそうに言った。
あの日の給食には、チーズ入りのチヂミがあった。沙清ちゃんの分は、食べられないチーズが除かれた。みんなと違う黄色のトレーに置かれたのは、間違いを防ぐためだ。
子どもたちには「不思議な味がする」と人気がなかった。和佳夏さんは4分の1を食べ、残りは友達に食べてもらった。
チヂミが残ったので、担任がおかわりを募った。だが誰も手をあげない。しばらくして、沙清ちゃんが言った。
「ほしいです」
めったにおかわりをしないのに、何で? 和佳夏さんは不思議に思って尋ねた。
すると、「完食記録に貢献したかったから」。さらりと返ってきた。「完食連続1カ月」「2カ月」。クラスで給食を残さないという目標を掲げ、カウントしていた。
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