第二回 “経済書の古典” カール・マルクスの「資本論」
ジャーナリストというだけでなく大学教授の顔も併せ持つ池上彰さん。BSジャパンでは名古屋の名城大学で行った池上さんの講義の様子を特別に公開!池上さんとともに今を生きるための知性を磨く“書籍”を読み解いてみませんか。
第2弾となる今回は、世界を変えた本として1867年に刊行された経済書の古典、カール・マルクスの「資本論」を解説します。一見難解で、敬遠してしまいがちな経済学の本ですが、池上流に読み解けば、今の世界経済、さらには日本経済を読み解くヒントが満載です。
マルクスは「資本論」の中で、社会はたくさんのお金、つまり資本を持つ“資本家”と、労働力以外の生産手段を持たない“労働者”に分かれているとし、資本家が主導して資本主義が発展してきたと分析。いずれ、疲弊した労働者による抵抗・革命により資本主義は覆されると説きました。歴史的にはこの1冊の本が、労働者の間で平等に恩恵を分け合う「社会主義」を理想とする思想の流れを作り、ソビエト連邦や中国など社会主義国を次々に誕生させ、世界を大きく動かすことになったと池上は分析します。150年近く前の本ですが、まるでリーマンショック後に日本で起きた「派遣切り」などの労働者問題も、まさにこの「資本論」が予言していた展開だといいます。
次々に誕生した社会主義国は結局失敗に終わり、ソビエト連邦の崩壊、中国の事実上の“資本主義国化”とひとつの歴史が幕を下ろす形となります。社会主義は追いやられ、資本主義が覇権をとった現代。それでも、2008年のアメリカのリーマンショックという、資本主義を揺るがす危機時には再びマルクスの資本論が評価され、注目を集めるようになりました。
池上流に「資本論」を読み解き、資本主義とは何か、その欠陥は何なのかを把握すれば、今後の経済を見通すカギとなり得るのです。
池上彰、森田京之介(テレビ東京アナウンサー)