発売日未定の参考展示だったCP+2015から約5か月、東芝はTransferJet対応SDHCカードを7月31日に発売します。
近距離無線技術 TransferJet を内蔵したSDメモリカードは世界初。iOS、Android、Windows PC向けのTransferJetアダプタに近づけるだけで、中身の写真や動画データなどを高速に転送できます。
TransferJet対応SDメモリーカードの主な仕様は、
規格
- SDインターフェース規格準拠(High Speed)
- SDスピードクラス10
- SDメモリカード規格準拠、TransferJet規格準拠
- SD Specifications Part E7 iSDIO TransferJet Addendum規格
- TransferJet v1.0(PHY/CNL v1.2)、 ISO/IEC17568
- 変調方式 DS-SS+π/2-shift BPSK
- 周波数 4.48GHz
- 電波法対応地域 日本、米国、カナダ、 EU、中国
- 大きさ 32.0 × 24.0 × 2.1mm
- 重さ 約2g
TransferJetについて改めておさらいすると、数cmまで近づけないと通信できないかわりに、高いセキュリティと高速転送を実現した近接無線転送技術の1つです。
2008年にTransferJetの規格を策定し、2009年にTransferJet対応のチップを初めて開発したのはソニーでした。その後2010年頃には、ソニーはTransferJetに対応したPC、デジカメ、メモリースティック、USBクレードルなどの製品を続々と発表もしくは発売します。
しかし新規の規格として送信側と受信側双方の対応機器が必要だったこと、搭載モデルの種類が少なく価格も高めだったことなどから、ソニーの期待ほどに普及することはありませんでした。その後2012年頃にはTransferJet対応の新製品はほぼなくなり、現在は対応製品のほとんどが生産終了しています。
当時、ソニー・エリクソンが販売していたスマートフォンのXperiaにも将来的にTransferJetが内蔵されるかもという話がありましたが、ソニーの他製品への搭載が終息していたこともあってか、TransferJet搭載Xperiaは実現しないまま現在に至ります。
一方、東芝はTransferJetコンソーシアムのPromoterとして参加し、2011年から自社でTransferJetのチップの開発や製造販売を開始。2012年にはTransferJet対応のAndroid用mmicroUSBアダプタを発売しています。
最近ではNTTドコモの2015年夏モデル ARROWS NX F-04Gが、Android端末としては珍しくTransferJetを本体に搭載していますが、こちらが採用するチップは東芝製です。
今回TransferJet対応のSDカードが発売されたことで、SDカードスロットしか備えないデジタルカメラなどから、TransferJet対応のアダプタを装着したPCやスマホ、タブレットといった機器へのデータ転送が可能になりました。
東芝は自社の従来製品をTransferJet対応にするかわりに、専用アダプタ、専用SDカード、チップを供給した他社製品の組み合わせで、様々な機器間で1対1の高速データ転送ができる環境を揃えたことになります。PCもカメラも自社製品で揃えることの付加価値としてTransferJet内蔵機器を販売したソニーとは異なるアプローチでありながら、地道にTransferJetの普及を進めています。東芝といえば無線LANでデータ転送できるSDカードFlashAir も販売してきました。
なお、世に広く普及した近接無線転送技術のNFCでも近距離データ転送は可能ですが、最大で848kbpsまでしか速度がでないため、転送速度としてはTransferJet の実効最大約375Mbpsに大きなアドバンテージがあります。(NFCでも、認証やペアリングにのみNFCタッチを使い、データ転送には高速なWiFi等を使う仕組みはあります)。
2017年に策定完了予定の次世代TranferJetでは、60GHz帯で10Gbpsの転送速度に対応する見込み。4Kや8Kの動画を手軽にシェアするための手段として、TranferJetが再び注目されることがないとはいえません。