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【社説】

冥王星探査 星のパズル、解こうよ

 宇宙の話は楽しい。冥王星が白いハートの模様で、長旅の米探査機「ニューホライズンズ」を歓迎してくれた。今後、多くの写真が公開されるはずだ。科学に親しむきっかけにしたい。

 米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ニューホライズンズ」が十四日夜、地球から約四十八億キロ離れた冥王星に最接近した。九年半かけて旅した。あまりに遠いので、地球と探査機の間での通信は片道約四時間半かかる。貴重な観測データ全てが地球に届くまで十六カ月かかるという。

 太陽から遠く離れた惑星の探査は一九七七年に打ち上げられた米国のボイジャー1号、2号がなじみ深い。両機は土星だけではなく、木星や天王星、海王星にも環(わ)があることを発見した。やり残したのが冥王星だった。

 月よりも小さい天体で、宇宙望遠鏡ハッブルを使っても鮮明な画像を撮影することができなかった。今回の探査で、正確な直径が分かったほど、謎に包まれている。冥王星は岩石ででき、地表には氷があると推定されている。データの解析が進むと、ボイジャーの時と同じように、驚くような事実が明らかになるだろう。

 ハートの模様にロマンを感じるのもよいが、私たちも写真から科学を楽しむことができる。

 すでに、クレーターとみられる地形が確認されている。鮮明な写真が公表されたら、クレーターの丸い輪郭を目立つ色でなぞってほしい。

 クレーターの集まっている場所もあれば、ほとんどない場所もある、と分かるかもしれない。二つのクレーターが重なっていたら発見だ。クレーターの円形がはっきりしているのが新しいクレーターで、壊れているのが古いクレーターだ。これを応用すると、谷地形とクレーターのどちらが先にできたかも分かる。クレーターを壊して谷があれば、小天体が衝突した後、水のような液体が流れて谷をつくったことになる。影の長さから高さを比べることも可能だ。

 NASAはインターネットを通じて、今後、多くの画像を公開する予定だ。パズルのように楽しんではどうだろう。冥王星だけでなく、火星などでも楽しめる。

 天文学のおかげで、私たちは地球が宇宙の闇に浮かぶ、ちっぽけな青白い星だと知っている。それをいとおしく思うから、環境問題に取り組む機運が生まれる。科学は知性と心を育てる。

 

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