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 ヒトのiPS細胞から作った腎臓の元になる細胞の移植が急性腎障害に効果があることを、京都大などのグループがマウスで確かめた。移植細胞が分泌する栄養で障害が和らぐとみられ、腎臓病の新たな治療法につながる可能性がある。

 米科学誌電子版に21日発表した。急性腎障害は脱水や手術による出血などが原因で、入院患者でよくみられる。腎臓の働きが数時間から数日で急速に悪化し、死亡したり、慢性的な腎不全になったりする危険があるが、対症療法しかない。完全に回復する人は15%ほどとされる。

 京大iPS細胞研究所の長船健二教授らは、ヒトiPS細胞から腎臓の元になる「腎前駆細胞」を作り、腎臓の血流が一時的に止まって急性腎障害になったマウスの、腎臓を覆う膜の下に移植した。

 移植しなかったマウスと比べ、腎機能の下がり方が軽く、腎臓の細胞が死んで線維化する障害も抑えられた。移植した細胞はマウスの腎臓と一体化しておらず、細胞が放出する栄養物質が影響したとみられる。長船教授は「どの物質が効いているかまだ分かっていないが、ヒトでも有効か研究を進めたい」という。(阿部彰芳)