ここから本文です

新渡戸家が十和田市を提訴 記念館廃館撤回求め

デーリー東北新聞社 7月1日(水)11時52分配信

 耐震性が不十分であることを理由に十和田市が廃館を決めた市立新渡戸記念館をめぐり、館内の主な展示物と土地を所有する新渡戸明さん(73)が30日、建物を所有する市を相手取り、廃館の撤回を求める行政訴訟を青森地裁へ起こした。新渡戸家側は「記念館は構造上、耐震性が強く、補強も可能なため、早急に廃館にしなければならない理由はない」と主張。小山田久市長は「訴状が届いておらず現時点で何も申し上げることはできない。もし提訴に至ったのであれば、大変残念に思います」とのコメントを出した。

 30日午後、新渡戸家の明さん、常憲さん(47)親子が松澤陽明弁護士と共に青森地裁を訪れ、訴訟と文化財の保存管理のため記念館の電気や水道を止めないよう求める執行停止申し立ての手続きを行い、青森県庁で会見した。

 訴状によると、新渡戸家はコンクリート強度試験の結果が正確か確認できない上、独自に入手した建設当時の設計図や構造計算書から見ると、耐震性は十分あると思われる、と指摘。耐震性の再調査を求めたのに市側が応じないのは、最少の経費で最大の効果を挙げる地方自治法や地方財政法の規定に違反しているとしている。

 松澤弁護士は「建築の専門家ではないが、耐震診断は設計図を見ておらず、しっかりした基礎と柱の地下構造が理解されないまま行われた」と再調査の必要性を訴えた。

 明さんは「争いたくて訴訟したわけではない。廃館が決議され、貴重な文化財を守らなければならない気持ちからだ」と説明。検査費用は新渡戸家や協力者によって負担する考えがあるとし、「市は再検査の了承だけでよい」とした。常憲さんは「私たちが寄贈した後に『代替施設を考える』では、文化財の理解そして扱い、博物館活動に対してあまりにも疎いと思う」と批判した。

 記念館は26日の市議会定例会で廃止の条例が賛成多数で可決され、30日をもって廃館となった。

デーリー東北新聞社

最終更新:7月1日(水)11時52分

デーリー東北新聞社

誤算の連鎖 新国立建設のゆくえ