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2015年7月22日(水) NEW

IT技術者不足 ベトナムに活路

阿部
「人材不足解消の切り札となるのでしょうか。」

今月(7月)、都内で開かれた転職イベントです。
100社近い企業が参加。
求めていたのは「IT技術者」です。
この分野の有効求人倍率がおよそ2倍となる中、激しい人材獲得競争が繰り広げられています。
背景にあるのは、スマートフォンやネット通販の普及など、IT関連産業の急速な拡大です。

IT企業 採用担当者
「年々(人材が)集まりにくくなっている。」




さらに人材不足に拍車をかけているのが、国民1人1人に番号を割りふるマイナンバー制度です。
来年(2016年)の運用開始を前に、全国の自治体では今、一斉にシステムの改修が進められています。



こうした中、注目されているのがベトナムです。

「ねえ、パクさんどうしたの?」

国を挙げて、IT技術者の育成と日本語教育に熱心に取り組んでいます。



IT企業社長
「真面目に仕事をするし、即戦力になりやすい。」




深刻化するIT技術者不足。
その解消に向けた最新の動きに迫ります。

阿部
「深刻なIT技術者不足に直面する日本。
こちらをご覧ください。
IT企業およそ900社を対象に行ったアンケートの結果です。
技術者が『大幅に不足している』『やや不足している』を合わせると、実に87%となっていて、ほとんどの企業が人材不足に直面していることが分かります。」

和久田
「こうした中で、今、広がりを見せているのが海外の人材の活用です。
中でも、ここ数年急増しているのがベトナム人技術者。
ここ2年で、2倍に増えています。
なぜ今、ベトナムに注目が集まっているのか、取材しました。」

IT技術者不足 ベトナムに活路

都内にある社員50人のITベンチャー企業です。
この会社は、ネットで買い物をした際につくポイントを交換できるサイトを運営。
ネット通販が普及する中で、年々IT技術者の仕事量も増えています。

社長の畑野仁一(はたの・じんいち)さんです。
去年(2014年)、国内の大学から4人の技術者を採用しようとしましたが、1人しかとれませんでした。




ネットマイル 畑野仁一社長
「我々のようなベンチャーは大企業の下にある。
大企業の志望者がいて、そのあとにベンチャーという構図もある。
技術者をとるというのはだんだん難しくなるというのが現状。」


そこで、この会社が注目したのがベトナムの人材。

ネットマイル 畑野仁一社長
「彼が昨年入社したサック君です。」

去年、2人を採用しました。

グェン・バオ・サックさんは、ベトナムの大学でITと日本語を学んだ24才。
入社して1年目ですが、ホームページに載せる広告のプログラミングを任されています。




会社は生活面も全面的にサポート。
家賃の半分を会社が補助し、給料も日本人と同じ水準です。
同じベトナム人社員と共同で生活してもらうことで、ホームシックにならないよう配慮しています。



グェン・バオ・サックさん
「すごく満足。
一生懸命、会社に貢献したいと思う。」



今、注目を集めるベトナム。
その理由は、国を挙げたIT技術者の育成にあります。
大学には、実践的なコンピューターのプログラミングを学ぶコースが設けられ、即戦力となる人材を数多く輩出しています。
国の支援を受け、IT企業も急成長しています。


木庭記者
「こちらはベトナムの大手ソフトウェア開発会社です。
ここでは日本の大手企業向けのシステム開発が行われています。」



この会社の社員数は7,500人。
優秀な技術者を数多く抱え、現在、日本企業の取引先は200社を超えています。

人材が不足する日本市場を見据え、社員の日本語教育にも力を入れています。

「ねぇ、パクさんどうしたの?
元気ないね。」

2018年までに日本語が話せる技術者を1万人養成し、日本にも派遣する計画です。

FPTコーポレーション チュオン・ザービン会長
「日本は我が社にとって最も重要な市場。
2年後には、日本での売上げを2億ドルにするのが目標。」




ベトナムから技術者を採用した畑野社長です。
今年(2015年)もベトナムの人材を獲得しようと、現地で大学生に向けた会社説明会を開きました。
集まったのは、ベトナムの大学でITと日本語を学ぶ学生たちです。
その日のうちに面接を行い、技術のレベルや人柄を見極めます。


学生
「現在ビッグデータについて研究しています。
できればビッグデータの仕事で働きたい。」



この日は、大学の成績がトップクラスで、確かな技術が期待できる学生に出会うことができました。

ネットマイル 畑野仁一社長
「日本に呼んじゃおうよ。
めっちゃできるぞ、仕事。
めっちゃめちゃいいじゃん、いないよなかなか。
秘密兵器隠していましたね。」

ネットマイル 畑野仁一社長
「日本で働いてもらうために、内定を出したいのがバオ君。」




その場で内定を決断。
ベトナムでも人材の獲得競争が始まっているため、迷っていると優秀な人材は他社にとられてしまうのです。

内定したバオさん
「とてもうれしかった。
信じられない。
日本語ができて、IT技術もできるエンジニアになりたい。」


ネットマイル 畑野仁一社長
「すばらしい出会いがあったので、また来年もここに来て採用したい。
東南アジアの他の国にも事務所を持ちたいと思っているので、そこをつなぐこともやってほしいし、こっち(ベトナム)に帰ってきてプロジェクトマネージャーをやってもらう、そういう人材になってほしい。」

IT技術者不足 ベトナムに活路

阿部
「スタジオには取材にあたった、経済部の木庭記者です。
ベトナムでこんなにIT分野の人材育成が進んでいることに驚いたんですが、取材してみてどうでしたか?」

木庭記者
「私もベトナムに行って、大学の授業や企業の人材育成の現場を見てきました。
そこではビジネスに実践的に使えるようなメニューが展開されていました。
また、参加している若い人たちはいずれも真剣で、こつこつと仕事をするんだろうなという印象を受けました。
実際にベトナムの技術者を採用している企業の担当者の方に話を聞きますと、勤勉で協調性に富む性格の方が多いことから、日本の企業風土によく合って、一緒に仕事がしやすいという声が聞かれました。
日本で人材が足りなくなっている今、ベトナムの技術者というのは日本のパートナーとして存在感を高めていると言えます。」

世界で激化 IT技術者 争奪戦

和久田
「こうしたIT技術者が不足しているというのは日本だけなんでしょうか?」

木庭記者
「今、世界的な状況と言っていいと思います。
例えばインターネット通販で欲しい商品をすぐに検索したり、スマートフォンでさまざまな便利なアプリが使えるようになっている。
そういったことの背景には、多くのIT技術者が裏でプログラミングをやったりソフトウエアの開発をやったりしています。
そのために、世界中のIT企業が世界中で優秀な人材を獲得しようと動き始めているんです。

実際に私が取材に行ったベトナムの大学の中には、アメリカのマイクロソフトや韓国のサムスンといった企業が研究室を持っていました。
いわば、そういった企業が優秀な人材を学生のうちから囲い込んでおこうという戦略をとっているんです。
中には、優秀な人材であれば新卒であっても年収で1,000万円を超える給料を払って獲得しようという企業も出てきているんです。
ITが今、私たちの生活にとってなくてはならない存在になっている以上、人材が足りないのであれば海外から連れてくることはもちろん必要ですし、また、国内でいかに人材を育成していくかということも大切になってくると思います。
例えば子どものころから、コンピューターやプログラミングなどITの仕組みを学ぶ機会をつくるなど、中長期的な視点に立った国の戦略というのも大事になると思います。」