あなたの聴力を守るために知っておこう!「突発性難聴」の症状の怖さと治療法
こんにちは!
ユリカモメ病院の新人ナース、山下リコです。
あなたは最近、自分の耳が聞こえにくいかも・・・と感じていませんか?
もしくは、あなたの周りで「最近、耳が聞こえにくくて・・・」と言っている人はいませんか?
もし、耳が聞こえにくい状態がずっと続いているのであれば、それは「突発性難聴」かもしれません!
突発性難聴とは突然片耳が聞こえにくくなる耳の病気のことです。
実は突発性難聴の患者数は、2014年時点で年間4万人くらいいるといわれています。
それだけの数の人が、なんの前触れもなく、耳が聞こえにくくなっているんです!
そして、その数は年々増えていて、ここ10年で1.5倍に急増しているそうです・・・。
さらには、この突発性難聴、発症する原因が明らかになっていません。
なんらかのウイルスや血流の悪化が原因という説がありますが、発症原因はいまだに不明なんです・・・。
つまり、突発性難聴は“いつ、誰がなってもおかしくない病気”だといえます。
でも、原因がわからないと予防ができなくて不安ですよね。
そこで私があなたにお願いしたいのは「耳の異常を感じたらすぐに病院に行ってください!」ということです。
突発性難聴は治療の開始が遅いほど聴力が戻りにくくなってしまう病気です。
そのため、耳の異常を感じたら、2日以内、できれば1週間以内、遅くとも2週間以内には必ず耳鼻科医に診てもらってください。
ただ、そうはいっても、突発性難聴と耳詰まりの違いは分かりづらく、異常の程度によっては、「いつもの耳詰まりだろうな」と安心しきってしまうこともあります。
だから、あなたが早く病院に行くためには、「もしかしたら、自分は突発性難聴かも・・・」と気づくための知識が必要です。
そこで今回は、突発性難聴の初期症状の話を中心に、突発性難聴になっても慌てないための知識をお教えします。
しっかりメモしておいてくださいね。
まずは、耳の構造を知っておきましょう。
耳はとても精密にできている感覚器官なんです
突発性難聴について理解していただくために、まずは耳の構造について説明しますね。
なぜなら、耳の構造を知っておくことで、耳が聞こえにくくなった際に、それが突発性難聴なのか、もしくは、耳垢が溜まっているだけなのかといった判断をおこなうことができるからです。
耳は大きく分けて三つの働きをおこないます。
- 周囲のさまざまな音を集める
- 集めた音を耳の内部へ伝える
- 耳の内部へ伝えた音を、脳が理解できる“電気信号”に変換する
そして、これらの働きは、それぞれ耳の「外耳(がいじ)」、「中耳(ちゅうじ)」、「内耳(ないじ)」という場所でおこなわれています。
- 1、外耳(がいじ)
- 「耳介(じかい)」「外耳道(がいじどう)」「鼓膜(こまく)」を総称した部分を指します。
私たちの顔の横から張り出している“目に見えている耳”は「耳介(じかい)」といいます。
この耳介が集音器のような役割をして音を集め、耳介から入った音は、鼓膜へ通じる「外耳道」を通り、最終的には「鼓膜」へと伝わります。 - 2、中耳(ちゅうじ)
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鼓膜の奥には「鼓室(こしつ)」と呼ばれる部屋(空間)があり、そこに「耳小骨(じしょうこつ)」と呼ばれる小さな骨があります。
これらのエリアを「中耳(ちゅうじ)」と呼びます。鼓膜から入ってきた音は、中耳の中にある耳小骨に響くことで増幅され、増幅された音は耳のさらに奥にある「内耳(ないじ)」へと伝わっていきます。
- 3、内耳(ないじ)
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内耳には、音を感じとるための「蝸牛(かぎゅう)」という器官と、平衡感覚(バランス感覚)を制御するための「三半規管(さんはんきかん)」などがあります。
この蝸牛の中には「リンパ液」と呼ばれる液体が入っていて、中耳から伝わってきた振動がそのリンパ液を揺らすことで、内耳の中にある「有毛細胞」と呼ばれる感覚細胞が揺れをキャッチして、脳に送るための電気信号に変換します。
そして、その電気信号は、蝸牛の中にある神経を通して大脳に伝わっていき、大脳にある聴覚をつかさどる部分が「音が聞こえた!」と認識するんです。
ちなみに、蝸牛は“かたつむり”に似た巻き貝の形をしていることで、その名前が付けられました。また、内耳の中には、三半規管などの身体のバランスをつかさどる器官があります。
このバランスをつかさどる器官に異常が出ると、目の前がグルングルン回るようなめまいや、吐き気が出てしまうんです・・・!
このように、耳は精密で複雑な動きをしていたんですね。
ただ、複雑な器官だからこそ、その一部に障害がおきると、私たちは音に対して正確に認識できなくなってしまいます。
その状態を「難聴」といいます。
そして、難聴には大きく分けて「伝音難聴」、「感音難聴」というふたつの難聴があるんです。
突発性難聴は「感音難聴」の一種
難聴時には、耳のどの機能に障害が起きたかによって「伝音難聴」と「感音難聴」に区別されます。
このふたつの難聴について解説しますね。
- 1、伝音難聴
- 「外耳」や「中耳」に障害が起きている難聴です。
中耳炎などの炎症が起きたり、耳垢がたまっていることで起きます。 - 2、感音難聴
- 音を電気信号へと変換する「内耳」に障害が起きている難聴です。
内耳の障害は、大きな音を長時間にわたって聴きすぎたり、老化や薬物によって発生することがありますが、原因がはっきりしないケースも多々あります。
伝音難聴の場合は物理的な原因がわかりやすいのですが、感音難聴は原因がはっきりしないことが多く、難聴の中でも予防や完治がむずかしい病気だといわれています。
そして、今回のテーマである突発性難聴は、まさにその感音難聴の一種なんです。
突発性難聴の症状と治療法について
冒頭にも書きましたが、ここ10年で突発性難聴を発症する人は1.5倍に増えていて、その数は今では年間約4万人といわれています。
つまり、突発性難聴は3000人にひとりがかかる病気なんです・・・!
ここからは、突発性難聴の症状と治療法などについて詳しく解説していきます。
突発性難聴の症状の特徴は「片耳だけ」に症状が出ること
突発性難聴になると、ある日突然、“片方”の耳が聞こえにくくなります。
両耳ではなく片耳だけに症状が出ることが、突発性難聴の特徴です。
耳が詰まって音が聞こえにくくなるだけでなく、耳鳴りや目まいがおきることもあります。
また、これは知人のピアノの先生が言っていたことですが、「左右の音程もズレて聞こえて、音が気持ち悪くて演奏ができなくなった・・・」というふうに、人によっては左右の音程がズレる症状も起こるそうです。
もし、その音のズレが今後一生続いていたらと考えると、本当に怖いですね・・・。
そして、突発性難聴は、適切な治療をしても完治する人は全体の約三分の一という、回復がむずかしい病気なんです。
突発性難聴を予防するためには、ストレスをためず、睡眠をきちんととること
そんな怖い突発性難聴ですが、発症原因についてははっきりと解明されていません。
何らかのウイルスへの感染や、免疫細胞の障害、血流の悪化など、いろいろな説はありますが、どれも確証にいたっていません。
ただ、実際に突発性難聴が発症した人の話を聞くと、強いストレスを感じている時期や、睡眠不足などで身体が疲れているときに発症しやすいようです。
そのため、突発性難聴を防ぐためには、普段から強いストレスを感じないように気をつけたり、体に負担をかけすぎないようにすることが大事だと思われます。
突発性難聴の対処法
もし、急に片耳が聞こえにくくなったら、突発性難聴を疑ってください。
そして、すぐに耳鼻科にいきましょう。
突発性難聴の完治のポイントになるのは「発症から治療開始までの時間」です。
目安としては、2日以内、できれば1週間以内、遅くとも2週間以内には必ず診てもらいましょう。
突発性難聴の後遺症を残さないためには、とにかく早く治療を開始するしかありません。
突発性難聴の治療法
突発性難聴を治療する際には、“飲み薬”が処方されることが多いです。
その飲み薬には、副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)、利尿薬、ビタミン薬、血流改善薬などが入っています。
また、症状が重い場合には入院が必要になることもあります。
症状によって治療方針は異なりますので、くわしくは医師に相談してみてください。
突発性難聴って、怖いですね・・・!
そうなの。
突発性難聴を放置しておくと、どんどん症状が進行して、気が付いたときには完治できない状態になっていることも多いのよ・・・。
疑わしきときは、とにかくすぐに医療機関を受診する!
これが一番大事ね。
はい!
・・・ただね、実は最近、「突発性難聴」以外にも若い人にふえている難聴があるのよ。
リコちゃんも知ってるわよね。
はい。
「低音障害型感音難聴」と「ヘッドホン難聴」ですよね。
そうよ。
耳が聞こえづらくなったからといって、「突発性難聴」と決めつけるのはちょっと早いの。
せっかくなので、「低音障害型感音難聴」と「ヘッドホン難聴」についても取り上げておきましょう。
はい!
20~40代の若い女性がかかりやすい「低音障害型感音難聴」
「低音障害型感音難聴」は、突発性難聴とおなじく「感音難聴」の一種です。
症状としては、すこし耳が詰まった感じがしたり、「ワーン」や「ボー」などの低音の耳鳴りがすることもあります。
突発性難聴に比べて症状は軽めで、低音だけに障害が起こることから、低音障害型感音難聴と名付けられました。
以下は、日本橋大河原クリニックさんによる解説の引用です。
「低音障害型感音難聴」は、突発性難聴と同じように急におこる感音難聴で、低音だけに障害がおこります。
実は、難聴とはいっても、「蝸牛型メニエール」とも呼ばれ、めまいを伴わないメニエール病といえます。内耳には内、外の二つのリンパ液があるのですが、低音障害型感音難聴は、蝸牛に内リンパ液がふえすぎておこると考えられています。
メニエール病は平衡感覚と関係する前庭でもリンパ液がふえ、めまいをおこしますが、低音障害型感音難聴では蝸牛だけでふえ、めまい症状はありません。
メニエール病というのは「若い女性がストレスが原因でめまいを起こす病気」で、厚生労働省の「特定疾患」に指定されている難病です。
低音障害型感音難聴が発症する対象は、そのメニエール病と同様に、20~40代の若い女性だといわれています。
そして、実際の症状は、メニエール病からめまいを取り除いた症状が近いとのことです。
先ほども書きましたが、この低音障害型感音難聴は、突発性難聴と比較すると症状が軽いため、聴力を取り戻しやすい病気です。
ただ、完治はむずかしく、発作を何度もくり返す特徴があるので、一度発症してしまったら、その後、病気と上手に付き合っていく必要があります。
低音障害型感音難聴の原因・予防法
低音障害型感音難聴が起こる原因は、疲れやストレス、睡眠不足などが背景にあるといわれていますが、はっきりと解明されていません。
予防としてできることは、規則正しい生活、十分な睡眠、ストレス解消を心がけることです。
低音障害型感音難聴の治療法
低音障害型感音難聴の治療法には、突発性難聴と同じように“飲み薬”を処方されることが多いです。
その飲み薬には神経代謝賦活剤やビタミン剤、精神安定剤などが使われ、状況によってはイソソルビド、副腎皮質ホルモンなども投与されます。
詳しくは医師に相談してみてください。
リコちゃんはまだまだ若いから、低音障害型感音難聴に気をつけなくちゃね。
ストレスためちゃダメよ。
はい!
そういう私も、低音障害型感音難聴には気をつけなくちゃ。
え?
たしか、師長の年齢って・・・。
ん?
何か言ったかしら?
ほ、ほわわわわ!
な、なんでもありません!
あ、つ、次は、「ヘッドホン難聴」の解説にいきましょう!
大音量での音楽の聴きすぎには要注意!
「ヘッドホン難聴」にかかる人が増えています!
ですが、これからご紹介する「ヘッドホン難聴(音響外傷)」は、原因が明確です。
ヘッドホン難聴は、大音量の音や騒音が原因で発生します。
ヘッドホンを使用して音楽を聴いていると、低い音から高い音まで、あらゆる音の周波数帯域を密閉された空間で聴くことになります。
そのため、コンポなどで音楽を聴くよりも、耳にとっては負担が大きい状態が続きます。
そして、その負担が蓄積されると、やがて、内耳にある蝸牛(かぎゅう)の感覚細胞である「有毛細胞」が破壊されてしまいます。
その結果、耳が詰まっている感じや耳鳴りが続いたりと、低音障害型感音難聴と似た症状が発症するんです。
それがヘッドホン難聴の正体です。
ヘッドホン難聴が怖いのは、一度破壊された「有毛細胞」は再生することができないため、耳鳴りなどの後遺症が残りやすいということです。
たとえば、以前、アーティストの氷室京介さんが「両耳の聴力低下」を理由に、ライブを卒業することを発表されました。
あの氷室京介さんのように、日頃からイヤホンやヘッドホンで音楽聴くことが多いミュージシャンの方にとっては、ヘッドホン難聴はとても怖い病気です。
ミュージシャンの方だけでなく、日頃、イヤホンやヘッドホンで音楽を聴くことが多い方は、注意してくださいね。
とくに爆音で音楽を聴いている人ほど耳の負担が大きいので、気をつけていただいた方がいいと思います。
ヘッドホン難聴の予防法
ヘッドホン難聴を予防するためには、とにかく耳への負担を減らし、有毛細胞を破壊しないことです。
つまり、大きな音を長時間聴きすぎないようにしましょう。
具体的には、以下のふたつを心がけてください。
- 音楽を聴くときは、連続1時間以内にし、適度に休憩を挟む。
- 音楽を聴くときのボリュームは、音楽を聴きながら周囲の会話が聞きとれるくらいにする。
たとえば電車の社内などで、シャカシャカと音が漏れるくらいの音量で音楽を聴いている人がたまにいます。
あの人たちはすでに有毛細胞が傷ついている危険性があります・・・。
ヘッドホン難聴の治療法
具体的には、ビタミン剤や神経代謝賦活剤、血管拡張剤、副腎皮質ホルモンなどが入った飲み薬です。
症状によっては、低分子デキストランなどが入った点滴をされることもあります。
詳しくは、医師に相談してみてください。
ただ、何度もいいますが、ヘッドホン難聴は治療をしても完治しない可能性がとても高いです。
そのため、日頃から音楽の聴き方には注意するようにしましょう。
また、ヘッドホンだけでなく、爆音のライブやコンサートに行くときも、スピーカーのすぐ前に立たないように注意してください。
昨夜友達とロックコンサートに行きました。
ステージのすぐそばで良い席だったのですが右前に大きなスピーカがあり、かなりのボリュームでした。
会場にいるときは気づかなかったのですが、家に帰ると右耳のつまった感じがありました。
翌日起きると右耳にキーンという耳鳴りがして、聞こえもやや悪いように思いました。
いかがでしたか?
何度もいうように、難聴は治療を始めるタイミングが大事。
できるだけ早くに治療を始めるに越したことはありません。
ただ、難聴は自分が気づかない間に発症することが多いため、難聴っぽい症状を感じたら、すぐに医療機関を受診するようにしてくださいね。
また、あなたの周りで「耳が聞こえにくい」と言っている人がいましたら、ぜひこの記事を教えてあげてくださいね。
※このサイトで紹介している各種ノウハウの効果には、個人差があります。
あくまでみなさんの判断と責任のもとで参考にしてください。
体調が悪いときや身体に異変を感じているときには、自己判断せず、必ず医療機関を受診してくださいね。